今回のテーマは、婚活に関するトラブルで最近目立ってきた「独身偽装」です。
既婚者と知らずに妊娠・出産、損害賠償460万円
これまでも結婚しているのを隠して女遊びをするような男性はいたでしょう。しかし、法律できっちり裁かれるケースは少なく、泣き寝入りしている被害者が多かったと思われます。それが最近、民事訴訟を起こすケースが出てきました。
6月23日、東京地裁で、「独身偽装」していたとされる30代男性に約460万円の損害賠償が命じられました(男性側は控訴)。被害女性(30代)は結婚を前提に、ともに不妊治療まで行い、妊娠・出産しています。
男性は婚姻届けに署名までしながら、妊娠後もあれこれ言い訳して結婚を先延ばしし、被害女性から度々借金もしていました。問い詰められると、妻子がいると自白したのです(離婚したと偽っていました)。
私の感覚では、どう見積もっても460万円では割が合わないと思います。
同じ6月には、世界有数のコンサルティングファームの社員(30代)に対し、元交際女性(23)が慰謝料300万円を求める訴訟を起こしました。男性はマッチングアプリで出会った女性に結婚をちらつかせながら交際し、破局後に妻子がいると発覚したのでした(SmartFLASH、6/30配信より)。
私も過去に、「彼氏が既婚者だった」という相談は受けたことがあります。
部外者は「ダマされるほうが悪い」「見抜けるよね」と思うかもしれないけれど、相談の中には、10年近く交際していたり、同棲までしていたケースもありました。これでは気づかないのが当たり前ではないでしょうか。
「アプリは危ない、リアルな出会いは安心」ではない
この問題に取り組む「独身偽装被害者の会」では、「独身偽装実態調査」を行い、今年6月に中間報告(*)を公式サイトで発表しました。回答した被害者207件のうち、女性が98.6%で、男性は1.4%でした。
*独身偽装実態調査:同会サイトに設置したGoogleフォームを使って実施、匿名回答。中間報告は2026年5月20~6月2日に集まった207件を集計
調査方法による制約はあるとはいえ、私の体感とも合う結果です。同会の許可を得て結果をご紹介します。
・リアル(仕事や友達の紹介など)49.3%
・マッチングアプリ 43%
・その他オンライン(SNSなど)7.2%
・結婚相談所など 0.5%
<リアルの出会いのうちわけ>
・仕事関係者 36%
・知人・友人の紹介 10%
・飲み会・合コン 10%
・趣味などのサークル 13%
独身偽装はマッチングアプリの普及の影響と思ってしまいそうですが、最も多いのは日常生活の延長の出会いなのです。
また「結婚相談所など」が0.5%と少ないですが、同会が継続中の別のアンケートでは一定数が確認されているそうで、完璧に安全だとは思わないほうがよいと同会は指摘しています。
損害賠償460万円の判決が出たケースでも、知人の紹介で出会った男性とのことでした。共通の知り合いもいるであろう出会い方であれば、まさか既婚だとは疑わないでしょう。
私が知っている“彼氏が既婚者だった”ケースも、半分ぐらいは仕事関係で知り合っていたので、体感には合っています。
会社員、公務員、国会議員まで……
加害者の職業は、46.9%が会社員です。真面目な仕事だから安心できると思いがちですが、そんなことはありません。
例えば2015年には、警察官(26)が既婚者であることを隠し、街コンで出会って交際した女性を殺害しています(殺人罪が確定)。被害女性には、警察官であることは明かしていたようです。
2025年11月には、既婚の陸上自衛官が、家庭があることを隠して9年交際していた女性を、路上で刺す事件がありました。
同年12月には、独身偽装で提訴された元検事が、法務省から懲戒処分を受けています。
2025年4月、国民民主党の平岩征樹衆院議員(当時)が、過去に独身と偽りマッチングアプリで知り合った女性と不倫していたことが報道されました。本人も認めて離党。なお、偽名を使って「空港関係者」と偽っていたそうです。
このように、女性からすると「まさかそんな堅い仕事をしている人が…」と疑いを持ちにくいでしょうが、独身偽装と職業は関係ないのです。
結婚を匂わす言動は、よくある手段
私は、“結婚をのらりくらりとかわす彼氏に見切りをつけて、婚活を開始する女性”を何人も見てきました。独身偽装加害者も、結婚するつもりがないのだから、結婚話を避けそうに思えます。
具体的には、「子どもを持つことを前提にした話し合い」が最も多く、次いで「家族・親族との挨拶や顔合せ」。
独身偽装とはやや異なりますが、マッチングアプリの遊び目的の人も「来年も一緒に〇〇を見に来ようね」など結婚を匂わせることを言うようです。性的搾取目的で、相手を信頼させるため結婚を匂わせるのは常套手段なのでしょう。
約半数は、加害者の自宅に招かれている
独身偽装なら、自宅には呼ばないだろうと思いがちです。ところが調査では、単身赴任中の加害者が被害者を自宅に招いたり、同棲していたり、家族がいない時間に被害者を自宅に招いたりしており、約半数の被害者は相手の家に行っているのです。
クリスマスも12月24日には二人でケーキを食べたものの、25日には「おばあちゃん(自分の母親)が夜一人になるから」といって実家に帰ったとか。実際は、25日は奥さんと過ごしていたのでしょう。
被害者の約半数は25~35歳
被害者が相手と交際を始めた年齢は、25~35歳に約50%が集中しており、最も多いのは32歳。加害男性の交際スタート時の年齢は、21歳から56歳と幅広く、最も多いのは30歳です。被害にあう年齢は、結婚や出産を真剣に考えるであろう貴重な時間と重なっているのです。
心身に深いダメージを負うとともに婚期を失う人もいるでしょう。
独身偽装は「性暴力」
今の法律では、独身偽装そのものを犯罪行為として直接処罰することはできません。しかし、既婚である事実を隠して、相手の意思決定を歪めて性的関係や交際を継続させる独身偽装は、「性暴力」だとして、民事訴訟での慰謝料相場の引き上げや法整備を求める声が高まっています。
「独身偽装被害者の会」でも、次の法改正に向けて、独身偽装に対する刑事罰化を含む法整備の必要性を訴えています。
たかが男女トラブルと軽く見られがちな独身偽装。加害者の中には、独身偽装で係争中にもかかわらず、別のマッチングアプリで相手探しを続けている、倫理観がぶっ飛んだ人もいたそうです。まずは「独身偽装=性暴力」という認識を定着させたいものです。
<文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活アドバイザー、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt
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