放送作家の鈴木おさむ氏は、今回の騒動の真偽そのものは軽々に断じられないとしつつも、いまは「黙っていることが一番損をする時代になった」と見る。そのうえで「個人も組織も、否定するなら早く、自分たちの言葉で発信しなければ、最初に広まった印象だけが残ってしまう時代だ」と指摘する(以下、鈴木氏による寄稿)。
双方の主張が食い違う中で問われる「最初の発信」の重み
元AKB48の花田藍衣さんが、ラジオ降板の経緯をめぐって、自身のSNSに「丸刈りを要求された」と投稿した。“事実無根”と否定する所属事務所との間で双方の主張が食い違うなか、この騒動はSNS上でも大きな議論を呼んでいる。このニュースを見ていて思ったことがある。今回の件がどちらの言い分が正しいのか、それは僕にはわからない。当事者しか知らない事実もあるだろうし、第三者が簡単に白黒つけられる話ではない。ただ、一つだけ強く感じたのは「今は、黙っていることが一番損をする時代になった」ということだ。
本人はSNSで、自分の言葉で発信した。昔なら、こういうケースは事務所やテレビ局、週刊誌など、大きな組織を通してしか情報は広がらなかったが、今は違う。一人でも何百万人に届く可能性がある。それほどまでにSNSは個人にとって、とても大きな武器になった。
もちろん言葉一つで一気に状況が変わってしまうこともある。弁護士と相談し、一挙手一投足について慎重に対応することは大事だ。しかし、今の時代はそれだけでは足りない。慎重さだけでカバーしきれるほど世間は待ってはくれないからだ。
慎重さだけでは守れない SNS時代は“速く伝える力”が要る
先週みんなが夢中になっていたニュースは、今週にはもう別の話題に変わっている。それほどまでに世の中のスピードは速くなった。SNSにいたっては数時間で空気が変わることも珍しくない。だから、最初に広まった印象だけが尾を引き、後から反論して事実を正したとしても、多くの人には届かないことがある。これは芸能界だけではない。企業も、スポーツ選手も、政治家も同じだ。否定するなら、早く伝える。
SNSは、時に人を傷つける場所にもなる。でも同時に、自分の正義を、自分の言葉で伝えられる場所でもある。だからこそ、個人も組織である事務所も、その武器を使わない理由はない。今は、慎重さと同じくらい、スピードが求められる時代だ。
自分の正義を信じるなら、熱が冷める前に伝える。その姿勢が、これからはますます大切になっていくのだと思う。
【鈴木おさむ】
すずきおさむ●スタートアップファクトリー代表 1972年、千葉県生まれ。19歳で放送作家となり、その後32年間、さまざまなコンテンツを生み出す。現在はスタートアップ企業の若者たちの応援を始める。コンサル、講演なども行っている
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