夏の終わりから9月にかけて、背中の片側や脇腹を押さえ、じっとしていられないほどの痛みで受診する方が目立ちます。「ぎっくり腰かも!」と思って来られることもありますが、疑わないといけない病気があります。

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そのひとつが、尿管結石です。

腎臓の中でできた石が細い尿管へ落ち、尿の流れを塞ぐことで、尿管が強く収縮して腎臓側の圧も上がって……まあ、とにかく激痛になります。痛みは波のように強くなったり弱くなったりし、吐き気や血尿を伴うこともあるのが特徴でしょうか。

僕は経験がないので、「どれくらい痛いか?」と気になって調べたら、なんと「男性が経験できる出産級の痛み」とのことでした。イギリスでCTにより尿管結石が確認された5⁠9⁠人を調べた研究では、女性がつけた痛みの点数は1⁠0⁠点満点で平均9⁠.⁠8⁠点(ほぼ満点!)。出産と結石の両方を経験した女性1⁠9⁠人のうち、1⁠2⁠人は「結石のほうが痛い」、3⁠人は「同じくらい」との回答。1⁠5⁠人が出産と同じか、それ以上と答えたわけです。おそるべし、尿管結石……。

残暑の数日後に「出産級の激痛」が…9月も要注意の尿管結石、予防のために見直すべき食生活
医師・タレントの岡本宗史
今回は、残暑の時季に油断できない尿管結石について、暑さとの意外な関係や予防法、自然排石にまつわるユニークな研究を紹介します。

暑い日の数日後まで注意!?



暑い日は、汗で失う水分が多くなり、尿が少なく濃くなります。尿が濃くなると、カルシウムやシュウ酸などが結晶になりやすくなります。

このような理屈から猛暑の日に結石ができやすくなるのは分かりますが、実は結石による受診は、猛暑の当日だけでなく数日後にも増えることが分かっています。

アメリカ5都市で腎・尿管結石により受診した約6万⁠人のデータから、平均気温3⁠0⁠℃の日は1⁠0⁠℃の日より、その後2⁠0⁠日間で尿管結石で受診するリスクが約35~40%高くなっていました。
5都市中4都市では3⁠日以内の関連が最も強く、そして4⁠~⁠6⁠日後にももう一度増えています。

サウスカロライナ州の尿路結石による約1⁠3万件の救急受診でも、蒸し暑さの指標である「1⁠日の最高湿球温度」が2⁠7⁠℃の日は、1⁠0⁠℃の日より、その後1⁠0⁠日間で尿管結石での受診リスクが約50⁠%高くなっていました。

増加が目立ったのは当日から翌日で、男性は7⁠3⁠%増、女性は1⁠5⁠%増と男性の方が圧倒的に暑さの影響を強く受けることも分かっています。

ただ、数えているのは、「石ができた日」ではなく「痛くなって病院へ来た日」です。暑さのあと数日で石が完成したのか、以前からあった小さな石が動いて痛みを生じたのかまでは分かりませんが、暑い日の数日後に、いきなり脇腹が痛み出すことはあり得るわけです。

9月も尿管にとっては、まだ夏

9月になって猛暑のピークが過ぎ去っても、尿管結石リスクはまだ夏模様。山形県酒田市の一つの病院で、2⁠0⁠0⁠7⁠~⁠2⁠0⁠1⁠5⁠年に背中や脇腹などの痛みで受診した4⁠9⁠1⁠人を調べたところ、3⁠5⁠8⁠人が尿管結石でした。

8⁠年間の月別件数は7月5⁠4例、8月4⁠6例、9月4⁠0例で、最多は7月ですが、9月もまだ少なくありません。結石以外の患者数に対する結石患者数の比も、8月が5⁠.⁠8、9月が5⁠.⁠7とほぼ同様でした。暦の上では秋でも、突然の背部痛には油断しないほうがよさそうです。

結石が怖くても、カルシウムは減らさないほうがいい?

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牛乳
予防の基本は、もちろん水分をこまめにとること。これは当然。

また時々、「結石=カルシウム」という概念から、「牛乳や豆腐は控えたほうがいいか?」と質問を受けることがありますが、これは間違い。実は減らすべきは、カルシウムではなく「塩」なのです。


尿管結石の既往があり、尿にカルシウムが多く出る男性1⁠2⁠0⁠人を5⁠年間追った試験があります。低カルシウム食では6⁠0⁠人中2⁠3⁠人が再発したのに対して、通常量のカルシウムをとり、塩分と動物性たんぱく質を抑えた食事では6⁠0⁠人中1⁠2⁠人でした。尿管結石にも色んな種類があるのですが、8割を占める代表格が「シュウ酸カルシウム」。

食事のカルシウムは腸の中でシュウ酸をキャッチし便として外に出す役目があります。よって、食事からのカルシウムを減らしすぎるとシュウ酸が吸収されて尿へ出やすくなるという理屈です。

一方、塩分のとりすぎも尿に出るカルシウムを増やすことが知られています。

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外食
当然、結石の種類によって対策は変わりますが、尿管結石の既往がある方は、濃い味や外食続きになっていないかを見直してみては?

週3⁠~⁠4⁠回の自慰行為で、石が出やすくなる!?

最後に、尿管結石を自然に排石できるユニークな研究を紹介します。なんと、それは自慰行為です。トルコで、尿管に1cmまでの石がある男性約130人を、①何もしない人、②石を排出しやすくなる薬を使う人、③週に3~4回自慰行為を行なってもらう人に分類して4週間後の排石の成功率を比べました。

その結果、自慰行為群が8⁠1⁠.⁠4⁠%、石を出しやすくする薬(タムスロシン)群が8⁠0⁠.⁠5⁠%、通常治療のみの群が4⁠3⁠.⁠2⁠%と、薬と同等の効果を発揮したのです!ただ、週3⁠~⁠4⁠回以上という指示に対し、実際は平均で週6⁠.⁠2⁠回も自慰行為をしていたことも併せて分かりました(笑)。

射精の勢いで石が飛び出たわけではありません!(そもそも尿管と精液の通り道は別)。性的な刺激で一酸化窒素(NO)という物質が増えるのですが、それが尿管の筋肉をゆるめたのではないか、と考えられています。

ジェットコースターは、後ろの席が効く?

さらに変わった研究もあります。
米国の研究者は、実際の患者のCTから作った腎臓模型に3個の結石を入れ、リュックに詰めて、ディズニーワールドの「ビッグサンダー・マウンテン」に2⁠0⁠回乗って石が遠心力で排出されるか検証しました。延べ6⁠0⁠回の判定では、石が尿管の入り口まで動き排石されたとみなされる割合は、前方座席で1⁠6⁠.⁠7⁠%、後方座席では6⁠3⁠.⁠9⁠%だったとのことです。

尿管結石リスクのある方は、ジェットコースターは後部座席に座った方が遠心力も強くなり、薬を使わずとも自然排出される可能性が高いということですね。まあ、腎臓模型を使った実験なので、人に対する治療効果はわかりませんが(笑)。

ちなみにこの研究は、ユニークな研究を行なった研究者に賞される「イグノーベル賞」を2018年に受賞しています。

とはいえ、もちろん、発熱や尿の出にくさがある人、痛みや嘔吐が続く人は、自宅で粘るべきではありません。残暑の数日後に出産級の痛みが来たら、ジェットコースターを予約する前に、まずは受診です!

<文/岡本宗史>

【参考資料】
Miah S, et al. Renal colic and childbirth pain: female experience versus male perception. J Pain Res. 2017;10:1553-1554.
Tasian GE, et al. Daily Mean Temperature and Clinical Kidney Stone Presentation in Five U.S. Metropolitan Areas: A Time-Series Analysis. Environ Health Perspect. 2014;122(10):1081-1087.
Vicedo-Cabrera AM, et al. Sex Differences in the Temperature-Dependence of Kidney Stone Presentations: a Population-Based Aggregated Case-Crossover Study. Urolithiasis. 2020;48(1):37-46.
Fukuhara H, et al. Clinical relevance of seasonal changes in the prevalence of ureterolithiasis in the diagnosis of renal colic. Urolithiasis. 2016;44:529-537.
Borghi L, et al. Comparison of two diets for the prevention of recurrent stones in idiopathic hypercalciuria. N Engl J Med. 2002;346(2):77-84.
Turgut H, Sarıer M. Evaluation of the efficacy of masturbation on distal ureteral stones: a prospective, randomized, controlled study. Int Urol Nephrol. 2021;53:655-660.
Peng CX, et al. Efficacy of sexual stimulation in the treatment of distal ureteral stones: A meta-analysis. Heliyon. 2024;10:e37309.
Mitchell MA, Wartinger DD. Validation of a Functional Pyelocalyceal Renal Model for the Evaluation of Renal Calculi Passage While Riding a Roller Coaster. J Am Osteopath Assoc. 2016;116(10):647-652.

【岡本宗史】
東京大学大学院医学系研究科を修了後、埼玉県のクリニックにて実臨床に従事。「健康・エイジングケア」に関する知見を、医学的視点から紐解き、メディアやSNSを通じて多角的に発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」評論家 等。
Instagram:@soshi_okamoto
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