―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

紫煙くゆる薄暗い一室で、強面の男たちが夜な夜な卓を囲む――。そんなイメージも今は昔。
麻雀プロリーグ戦「M.LEAGUE」を入り口に、令和の雀荘は推し活の現場としても盛り上がっている。なかでも女性人気を集めるのが、TEAM RAIDEN/雷電の本田朋広だ。同卓イベントチケットが1分で売り切れる、今、麻雀界一推される男。“北陸の役満プリンス”の二つ名を持つ彼の、素顔に迫った。

令和麻雀界で、最も“推される男”

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 この熱狂を外へ――。一握りのトッププロだけが出場できる麻雀プロリーグ戦(※1)「M.LEAGUE(Mリーグ)」の理念が、麻雀をギャンブルから頭脳スポーツへと昇華させている。認知症予防にもなると、高齢者を中心に健康麻雀ブームが起こり、新しい知育・習い事として子ども麻雀教室も登場。推し活化し、女性プレイヤーも爆増した。特にアイドル的人気を誇る(※2)TEAM RAIDEN/雷電の本田朋広は、なぜこれほど愛されるのか。

――’18年にMリーグが発足して8年で、麻雀プロを取り巻く環境は激変しました。当事者としての実感は。

本田:いちばんわかりやすいのが、麻雀プロ全体の年収が上がってきてること。自分が富山の麻雀店に勤めてた頃は、極貧生活でしたからね。


――良くも悪くも麻雀プロが文春砲の餌食になる時代に……。

本田:それに関してはノーコメントで(笑)。ただ、世間がここまで麻雀プロを気にする時代が来たんだなって驚きはありますよね。

――かつて地元の富山で営んでいた自身の雀荘客と今のファン層に違いはありますか。

本田:僕のお店に来ていたのは、学生からサラリーマンまで幅広かったですね。営業マンが昼間の仕事をサボって来たり、建設業の方が雨で休みになって来たり。ただ、女性のお客さんは月に1人来ればいいほうでした。

――それが今や。

本田:ゲストの仕事で雀荘に行くと7、8割は女性。子どもの麻雀教室も、ほんの数年前までは考えられなかったですよ。

Mリーガーには、そんなになりたくなかった

――本田さん自身の、麻雀との出合いはいつだったんですか。

本田:中学3年生の時に、友達同士で始めました。『少年マガジン』で(※3)『哲也―雀聖と呼ばれた男』という漫画が流行ってて。
まあ、仲間内ではいっつもボコボコにされてました。でも、性格的にこういう勝負って負けたほうが熱くなれるんですよね。佐々木寿人さんの戦術本を読んで勉強して、のめり込みました。

「Mリーグには、そんなに入りたくなかった」かつては極貧生活だった本田朋広が、“令和麻雀界で最も推される男”になるまで
©AbemaTV,Inc.
――高校を中退されたそうですが、麻雀の影響で?

本田:それに近いものはあります(笑)。ただ、直接のきっかけはバスケです。小中と強豪校で全国大会に出場してたんですけど、高校のバスケ部はそんなに強くなくてモチベーションが上がらず、バスケやらないなら高校もやめようって。大検取って、一応大学には行きました。

――大学卒業時には、就職先の欄に雀荘の店名を書いたそうですね。

本田:教授もびっくりして「就職先を紹介するから考え直せ」と言われました。それくらい麻雀が楽しかったんですよ。自分でお店を持てばいくらでも楽しいことができるって。若気の至りですよね(笑)。
でも、卒業して2、3年お金を貯め続けて、25歳でとんとん拍子に自分の店が出せちゃった。

――ご家族の反応は。

本田:面と向かって否定はされなかったですけど、嫌だったみたいです。親戚がたまたま店に来たので、親に連絡したら「そこでアルバイトしてることにして。自分の店だってことは絶対に言わないで」と(笑)。ただ、今では僕の対局を毎日見てくれてるらしく、やっと親孝行できたなと思います。

「Mリーグには、そんなに入りたくなかった」かつては極貧生活だった本田朋広が、“令和麻雀界で最も推される男”になるまで
役満狙いや守備力ゼロのやんちゃな仕掛け“裸単騎”など、エンタメ性に富む本田の戦術はたびたび話題に ©AbemaTV,Inc.
――麻雀店を経営していたら、自然と麻雀プロになる選択肢も生まれてきたのでしょうか?

本田:当時、(※4)MONDO TVに出ていた寿人さんや滝沢和典さん(KONAMI麻雀格闘倶楽部)に憧れて、同じ日本プロ麻雀連盟のプロテストを受けました。でも、連盟ってスター集団で。当時は、連盟だと埋もれるからってあえて別の団体を選ぶ人も多い時代でした。それこそ、その頃から親交のあった堀慎吾くん(KADOKAWAサクラナイツ)も日本プロ麻雀協会でしたし。でも、僕自身は有名になりたい野心とか一ミリもなかった。

――そこからどんな経緯でMリーガーになったのですか。


本田:予選敗退しちゃったんですけど、’21年にMリーグのチーム(※5)EX風林火山の新メンバーオーディションがあって。その時、「どうして入りたいんですか」って聞かれて「別にMリーグにそんなに入りたくないんですけど、仲のいい滝沢さんや勝又健志さんがいるし、その人たちと同じチームならやりたい」って言ったんですよ。他の人は「どうしてもMリーガーになりたくて」って言うじゃないですか。でも、それを聞いたスポンサーさんが「こいつ面白いな」って、敗者復活枠に選んでいただきました。

――やっぱり強運というか、何か持っていますね。

本田:兄弟がみんな富山を離れていて、僕が地元で雀荘をしながら親の面倒を見る覚悟だったんで、本心でした。ただ、試合としてはもう前に出るしかない状況で、一か八かの麻雀がちょうどハマって勝ち上がり、それを見てた人たちがどんどん応援してくれて。そしたら自分もその気になっちゃうじゃないですか。その直後に、雷電からお声がけいただきました。

「Mリーグには、そんなに入りたくなかった」かつては極貧生活だった本田朋広が、“令和麻雀界で最も推される男”になるまで
しつこくて簡単に諦めないスタイル
――雷電は、“魅せる麻雀”をモットーとしていて、決め台詞も「雷電の麻雀は面白いんです」。本田さんたち世代ドンピシャの人気俳優・萩原聖人さんも所属しているチームです。

本田:もうプレッシャー“しか”なかったっすね。
でも、メンバー3人とも本当にいい人で。萩原さんは、勝った試合はどんなに内容が悪くても褒めてくれるし、負けた試合はどんなに内容が良くても怒ってくる。瀬戸熊さんは逆で、負けた時は励ます言葉しか言わない。「俺が取り返すから気にすんな」って。黒沢さんは常に明るくて、綺麗で、嫌みがない。

――本田さんにとって「面白い麻雀」って、なんですか?

本田:それが、僕もいまいちわかってなくて……(笑)。だから、いつもファンの方に「どこが面白いの?」って聞いてます。僕がしつこくて簡単に諦めないからドキドキするって言ってくれるんで、それが僕の麻雀なんだと思ってます。それに、僕自身もファン目線であることが、麻雀で勝つ一つの方法なんじゃないかと思っていて。例えば、攻めるか守るか絶妙な場面があったら、客観的にファンはどうしてほしいだろうって考えるんです。意外とそれが良いほうにハマったりするんですよね。

いい年してプリンスは、かっこ悪くないですか?

――そもそも“役満プリンス”の名付け親は誰なんですか。

本田:連盟の黒木真生(まさお)さんです。
’19年度と’20年度に麻雀グランプリMAXで連覇した時、役満を2回上がったんで、役満のイメージが強かったんですよね。最初は「富山のプリンス」って言われたんで、「富山はダサくないですか」って返したら「北陸の役満プリンス」になりました。「いい年してプリンスって……」とも言ったんですけど、「恥ずかしいと思うぐらいがちょうどええんや!」って(笑)。

――実際、ご自身の容姿についてはどう思ってますか。

本田:さすがに言いすぎです!恥ずかしいっすよ、ほんとに。言われて嫌ではないですけど、調子に乗ることもないです。

「Mリーグには、そんなに入りたくなかった」かつては極貧生活だった本田朋広が、“令和麻雀界で最も推される男”になるまで
エッジな人々
――“アイドル枠”と麻雀をなめられたことは。

本田:それは今でもそうなんじゃないですか。僕、Mリーガーの中で、麻雀プロからフォローされてる数がいちばん少ない自信がありますから。ファンじゃなくて、プロからのフォローの数です。プロ目線では「あいつはまだ認めない」みたいなところがやっぱりあるんじゃないかなと勝手に思ってます(笑)。

――一方で、ファン対応にも定評があって、顔と名前をよく覚えることで知られています。

本田:「よく覚えられますね」って言われるんですけど、会いに来てくれるのは自分のことを好きって言ってくれる人じゃないですか。そんな人のことは気になるし、覚えますよ。記憶力がいいわけじゃないんです。雀荘の経営者だった職業病的な部分もあるかもですが。

完璧になりきれないところが楽しい

――最後に、ルールやMリーグを知らない読者に、麻雀の魅力を伝えるなら?

本田:出た! それ、僕らにはいちばんキツい質問なんですよね……(笑)。しょっちゅう聞かれるんですけど、「麻雀は人生に似てる」とか、みんなと同じことしか言えなくて。

――本田さん自身が感じてる魅力でもいいですよ(笑)。

本田:自分で思うのは、負けた時の「あの時、こうしてたら」が、ほんとにキリがないんですよね。「東1局が悪かったか、いや、東3からおかしかったな」って見直して、結局「これは仕方ないわ」ってわかるのに、それでもまだどこかにダメだったところがあるんじゃないかと探しちゃう。そのキリのない部分に完全に取り憑かれてるというか、迷路から抜けられないのが楽しいんです。完璧を求めるんですけど、完璧になりきれないところが楽しいんですよね。

「Mリーグには、そんなに入りたくなかった」かつては極貧生活だった本田朋広が、“令和麻雀界で最も推される男”になるまで
キリのない部分に取り憑かれてる
【Tomohiro Honda】
1983年、富山県生まれ。25歳で地元に雀荘を開業し、’12年に日本プロ麻雀連盟でプロ入り。麻雀グランプリMAX連覇などを経て、’21年ドラフト1巡目でTEAM RAIDEN/雷電入り。昨季ファイナル3位のチームで、今季は悲願の初優勝を狙う

(※1)M.LEAGUE(Mリーグ)
’18年発足の国内最高峰プロ麻雀リーグ。チェアマンはサイバーエージェント・藤田晋氏。賭博や喫煙のイメージを断ち、麻雀の競技スポーツ化を主導する

(※2)TEAM RAIDEN/雷電
広告会社・電通がオーナーのMリーグ発足時からの参加チーム。萩原聖人、瀬戸熊直樹、黒沢咲の3人だけで3季戦い、’21年、唯一の“後から入った男”として本田が加わった

「Mリーグには、そんなに入りたくなかった」かつては極貧生活だった本田朋広が、“令和麻雀界で最も推される男”になるまで
TEAM RAIDEN/雷電
(※3)『哲也―雀聖と呼ばれた男』
1997~’05年に週刊少年マガジンで連載された麻雀漫画。昭和の“雀聖”阿佐田哲也がモデルで、当時の中高生を大勢麻雀に引き込んだ本田の青春のバイブル

(※4)MONDO TV
麻雀対局を放送する日本のCS放送チャンネル。Mリーグ以前、プロが顔と名前を売れる数少ない舞台で、地方の麻雀ファンにとって貴重な窓口だった

(※5)EX風林火山
テレビ朝日がオーナーのMリーグチーム。’21年の新メンバーオーディションが本田のMリーグ参加の入り口に。昨季は5年ぶり2度目の優勝を飾った強豪

取材・文/桜井カズキ 構成/仲田舞衣 撮影/グレート・ザ・歌舞伎町 取材協力/Nishiazabu RTD

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
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