そう語るのは、故人のスマートフォンやPCの解析、デジタル遺品整理などを手掛ける株式会社GOODREI代表の末吉謙佑氏だ。
いまやスマホには、連絡先や写真だけでなく、LINE、SNS、検索履歴、マッチングアプリ、金融資産、さらには生成AIとの会話まで、その人の生活と本音が蓄積されている。
末吉氏は「99%、その人の情報がスマホやパソコンに入っていると言っても過言ではない。ある意味、裸より恥ずかしい“恥部”ですよね」と話す。
実際、故人の端末を解析したことで、家族が知らなかった異性関係や交友関係が判明することは珍しくないという。
隠し子、犯罪関与疑惑、推し活に数百万円などの秘密
ここから紹介する事例は、関係者の了承を得たもの、または個人が特定されないよう情報を抽象化したものだ。「隠し子の存在が分かったり、依頼された範囲のデータを確認するなかで、犯罪への関与を疑わせるような情報が見つかったこともあります。死後に借金が発覚して、相続放棄の話につながるケースもあります」
なお、同社が依頼範囲を超えて故人の犯罪歴や行動などを独自に調査するわけではない。あくまで依頼されたデータの解析・整理を行う過程で、そうした情報が判明する場合があるという。
もっと身近なところでは、家族が知らなかった推し活やサブスクもある。
「亡くなってから、推し活に数百万円使っていたと分かることはざらにあります。複数のファンクラブに入り、それぞれ違うメールアドレスを登録している方もいる。遺族からすると、そもそも何に入っていたのかを突き止めるだけでも大変です」
端末を開けたい理由は、必ずしも金銭問題だけではない。
葬儀の連絡先を知りたい、遺影に使える写真を探したいなど、そんな依頼も多い。一方で、開けた結果「見なければよかった」となることもある。
「異性とのLINEや写真、奥さんへの悪口などが出てきて、『こんなことを話していたんだ』となるケースはあります。亡くなった本人はもう言い訳できませんから」
だからこそ近年増えているのが、「自分の死後に何を残し、何を消すか」を生前に指定する依頼だ。
特に多いのは40~60代。写真やLINE、SNSのDM、裏アカウント、マッチングアプリの履歴などについて、「家族には見られたくない」と希望するという。
「男性利用者が圧倒的に多いですね。浮気相手との写真やLINEなどを、なぜか男性は残していることが多い。既婚者なのにマッチングアプリを使っていた履歴だったり、厳格なお父さんだと思われていたのに実はアイドルを推していたり。本人が守ってきたイメージと、スマホの中の自分が違うことも多々あります」
死後も、娘や孫に嫌われたくないという本音
では、人はなぜ死んだあとまで秘密を守りたがるのか。末吉氏は、「死後の自分の評価を下げたくないという方は多い」と指摘する。
「人間は多面的な生き物です。家族の前、職場、SNSで全部同じ顔ではない。裏垢で誹謗中傷していたり、人には言えないことをしていたりする場合もあります。
中には、社会的評価が下がり得る秘密を消すためなら、高額でも構わないと考える人もいるという。
一方で、故人が生前に「スマホは絶対に見ないでほしい」と希望していても、死後は遺族側の意向が優先されやすいのが現実だそうだ。ただし、生前に死後事務委任契約を結んでおけば、故人の意思をある程度反映することもできる。
「たとえば銀行の支店名や口座情報など、相続に必要な情報だけをご遺族に伝え、それ以外の私的なデータについては、事前の契約内容や法令、権利関係などを確認したうえで、対応可能な範囲で整理・削除するといったこともできます。『必要なものは家族に残したい。でも、それ以外は見せたくない』という方は多いですね」
つまりデジタル終活とは、単に“全部消す”ことではない。死後に家族へ残す情報と、墓場まで持っていく情報を、生前に切り分けておく作業でもある。
さらに新たな“デジタル遺品”となりつつあるのが、生成AIとの会話履歴だ。同社の調査では、生成AIを1日1時間以上使う人の85%が「家族に見られたくないチャット履歴がある」と回答。AIへの相談内容は、健康や死への不安、家族や人間関係、自身の嗜好や性癖、金銭問題など多岐にわたるという。
「AIには、家族や友人には言えない悩みを打ち明けている方も増えています。ただ、見られたくない情報はAIとの会話だけではありません。
SNS時代以前なら、胸の内だけにしまっておけた感情まで、いまはデータとして残ってしまう。末吉氏はこう話す。
「生きているときはある程度好きに生きる側面は誰しもにあり、それゆえに隠したい秘密も増えます。ですが死んだあとも家族からの評価を損なわず、綺麗に死にたい。そういう方は多いですね。結局、みんな生前の秘密を持て余したまま死にたくないという気持ちが強いのだと思います」
では、最低限何をしておけばいいのか。
“墓場まで持っていきたいもの”を、生前に整理しておく
スマホはもはや単なる通信機器ではない。愛情も、欲望も、愚痴も、秘密も、承認欲求も保存された「もう一人の自分」だ。
死後、そのすべてを家族に見せても構わないのか――。
一度、自分のスマホを他人に見られる前提で開いてみると、“墓場まで持っていきたいもの”が意外とたくさん見つかるかもしれない。
<取材・文/SALLiA>
【SALLiA】
歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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