日本女子最多の五輪メダル通算10個を獲得したスピードスケートの高木美帆さん(32)が4日、首相官邸で国民栄誉賞を授与された。2023年の車いすテニス男子の国枝慎吾さん以来で、29例目となり、高市早苗首相から表彰状を受け取った。

「スピードスケートで戦ってきた人たちへの評価」と感想。慣例の100万円相当の記念品は本人の希望で「包丁10本セット」が贈られた。

 午後5時、首相官邸の独特な緊張感の中、授与式が始まった。高木さんは「日本のブランドを身につけたい」と、2010年に日本で誕生した「マメクロゴウチ」のネイビーを基調としたワンピース姿。腕にレースをあしらった。緊張した面持ちで高市首相から表彰状と盾を受け取り、「本当に名誉ある賞をいただけて光栄で、身に余る思い」と背筋を伸ばした。

 記念品は、桐箱に収められた「包丁10本セット」が贈られた。各包丁には自身と高市首相の名前を刻印。引退後は北海道の実家で過ごすことも多く、家族を思っての選択だった。母・美佐子さんが「欲しい」と話していた包丁で「一緒に料理できたらいいな」との願いが込められた。母の好きな料理は「カボチャスープ」だと明かして笑った。両親は魚をさばくことも多く、今回の記念品はぴったり。

高木さんも腕を磨き「料理のバリエーションを増やせたら」と新たな目標を掲げた。

 5歳からスケートを始め、五輪で10個のメダルを獲得。日本勢初の世界選手権オールラウンド部門優勝など、様々な偉業を成し遂げてきた。授与式では高市首相から「国民に広く夢と感動を、社会に明るい希望と勇気を与えられた」と、たたえられた。

 高木さんは国民栄誉賞について、「私自身というより、スピードスケートで戦ってきた人たちへの評価だと受け取っている」と一人の功績ではないと強調した。「(競技が)軌道に乗るまで前を走り続けていた先輩方がいたからこそ、私は世界で戦えるようになった」。スピードスケート界では初の受賞という快挙にも、これまで道を切り開いてきた数多くの選手への感謝を忘れなかった。

 リンクを離れ、約5か月。現在は講演会などを中心に活動し「思考を深めたり、自分の内側に矢印を向ける時間が好き」と再認識。今後の活動は未定だが、名誉ある賞を授かり、新たな航海に出る。(富張 萌黄)

◆美帆さんに聞く

 ―達成感が強いか。

 「達成感は感じていない。

ともに戦ってきたチームメートだったり、みんなでやってきたことを評価してもらえてうれしい。助けてくれた人たちに感謝の気持ちもある」

 ―思い出のメダルは。

 「どのメダルかって言われると北京の1000メートル。心身ともにギリギリなところにいたのを鮮明に覚えている。たくさんのストーリーがあって、コロナ(禍)の制限もある中で背中を押してもらえた感覚があった」

 ―包丁10本は五輪のメダルの数を意識したか。

 「おお!(笑) そこは(意識)してなくて、セットが10本だった」

 ―自身の得意料理は。

 「無水カレーは得意料理というか、好きですね。今は(仕事で)移動が多いので、簡単なものしか作れていない」

 ◆国民栄誉賞 1977年に野球で本塁打の世界記録を打ち立てた王貞治さんの功績をたたえるため、政府が創設。首相が表彰状や記念品を贈る。当初は広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与える顕著な業績を残した個人が対象だった。2011年にサッカー女子W杯で初優勝した日本代表「なでしこジャパン」に贈る際、団体も受賞できるよう規定を変更した。

 ◆高木美帆さんのスピードスケート主な記録

 ▽日本女子最多10個の五輪メダル 18年平昌大会で金1銀1銅1、22年北京大会で金1銀3、26年ミラノ・コルティナ大会銅3で計10個のメダルを手にした

 ▽日本勢初の世界選手権オールラウンド部門制覇 18年大会で優勝。

500メートルと1500メートルで1位に入り総合166・905点で金メダルを手にした。20年にはスプリント部門を制し、日本勢初の2冠も達成

 ▽1500メートル世界記録 19年3月に米ソルトレークシティーで1分49秒83を記録。7年たった現在も破られていない。1000メートルと3000メートルでは日本記録を保持

 ▽W杯個人種目日本最多38勝 1000メートル13勝、1500メートル24勝、3000メートル1勝をマーク

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