夏になると増えるのが、お酒を飲んで、道端で寝てしまう「路上寝込み」です。警視庁のまとめでは、都内で去年、路上で寝ている人が車にひかれる事故が45件あり、6人が亡くなったそうです。

ひかれると亡くなる割合は、歩行者の事故全体のおよそ20倍。この寝ている人に、深夜、誰よりも出会っているのが、タクシー乗務員です。

まずは、年間の救助件数を数えている、日本交通の広報、仲尾有史さんに伺いました。

年400件、通報した乗務員にはボーナス支給

日本交通・広報 仲尾有史さん

1年間で見ると400件以上ですね、日本交通全体では救助の実績があります。しかも都心よりも、どちらかというと郊外。本当にもうちょっと行ったら家、みたいなところで、寝込まれている方が多いそうです。車道に出ている方、二次被害を防ぐという目的もございますので、「ご乗車いただいている間でも救助活動しております」と発信をしております。実際に救助できたときにはですね、賞与として乗務員の方にもインセンティブを付与していたりとかですね。一番多い方だと7件以上、されているので2カ月に一回は助けてる方も。積極的に救助活動にあたってる。

日本交通は、会社として路上寝込みの救助にかなり積極的で、救助した乗務員には、賞与、ボーナスまで出しているそうです(金額は非公表)。というのも、発見してから警察に引き渡すまで、30分から1時間。その間、タクシーの営業は止まってしまいます。

そもそも、道で寝込んでいる人を見つけたとしても、歩行者や、事故に関わっていない通りすがりのドライバーに、法律上ただちに救護義務が生じるわけではないようです。ですが、接触して交通事故の当事者になれば別。その場合、運転者には救護や警察への報告の義務が生じますが、それでも日本交通は力を入れています。

「これやばい」、でも揺さぶるのは絶対NG

ピークはまさに今。ある統計では6月から9月の、夜11時から明け方4時に集中するようですが、では、実際に遭遇すると、どうなるのか。救助を経験した、日本交通のタクシー乗務員、小夏涼太さんに、その時の対応を伺いました。

日本交通・タクシー乗務員 小夏涼太さん

「あ、これやばい!」って思いました。路上に足が覆いかぶさるような形で、車から降りてお声がけをした。受け答えができないような状況、名前とかも言えない。触れずに声をかけて、意識が朦朧としていてダメだなって判断したので、すぐに警察に連絡した。実際にタクシーで寝込んだお客さんにも「触れず」に対応するのが決まり。揺さぶるとか絶対にNG。起きてから怪我をしたとか、トラブルになってもおかしくない。

物がなくなったりもあるかもしれないので、リスクを避けるために触れずに。自分は5年やってきて初めての対応、実際に対応するとびっくりでした。

起こして、そのままタクシーで送ってるのはダメなのかと思って聞いてみたら、逆上して暴力を振るわれるおそれもあり、「警察に任せるのが最優先」。声をかけるときも、「触れない」のを徹底しているそうです。

小夏さんが寝ている人に気づけたのは、わずか10メートル手前。ライトはロービームだったそうです。ロービームが照らすのは、40メートル先まで。でも、時速60キロだと、ブレーキを踏んでも止まるまでに40メートルは進みます。つまり、明かりが届いたときには、もう遅い。警察庁は、対向車のいない夜道は、その倍以上遠くまで届く「ハイビームが基本」と呼びかけていますが、小夏さんも路地でスピードを落としていたから、間に合ったそうです。

「ハブと一緒です」 路上寝込みが桁違いに多い沖縄

割を食っているのは、タクシーだけではありません。トラックに宅配、新聞配達。

夜の街を走る人みんなが、寝ている人に出くわしています。なかでも桁違いに多いのが、沖縄。寝ている人がひかれる事故の割合が、全国平均の2.7倍にのぼるそうです。

沖縄タイムス 野嵩普天間店 島袋良人さん

その沖縄で、新聞を配達している方に聞きました。宜野湾市で沖縄タイムスの販売店「野嵩(のだけ)普天間店」を営む、島袋良人さんです。

何回かな、いや分かんないですね、もう数え切れない…。週に1回ぐらいは見てる感じ。塀にもたれて寝てるとか。私が配達してる時間が1時半~3時の間、その時間が多いと思いますよ。二次災害を防ぐために対応しなくちゃいけない、誰かが割を食っちゃう。ハブとかと一緒なんですけど、ハブ見かけても私たち警察に電話するんですけど、ほったらかしにすると、結局逃げちゃう。誰かが噛まれたら死んじゃいますよね、ハブだと猛毒なので。

そんな感じで、誰かが事故を起こさないために警察と連携してって感じですね。最近あったのはカーブ曲がったときに、壁で寝てて引きそうになりましたけど。加害者になりかねない、前方不注意で。怖いですよ、何かがあったときに。

ここまではクルマの、見つける側の話でしたが、実は、寝ているほうも「5万円以下の罰金」を取られることがあります。

それでも沖縄県内では、路上寝込みがあとを絶ちません。そこで、お酒そのものを、なんとかしようという動きも出ていて、飲んだ量を記録するアプリや、宮古島の保健所では勧められたお酒を断るためのカードまで作られています。

病気で倒れている人もいますから、寝ている人を見かけたら、まずは110番。ただ、あれこれ手を打っても、なくならない。結局、そのしわ寄せは、夜、街を走る人たちにいくことになります。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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