今日は、マラリアのワクチンが日本人研究者によって新しく開発された、というお話。

マラリアは世界三大感染症のひとつ。

マラリア原虫という寄生虫を持った蚊が媒介する感染症。人間に感染するのは5種類ですが、致死率の高い熱帯熱マラリアと、三日熱マラリアがほとんどを占めます。

三日熱マラリアは、熱帯熱マラリアに比べると致死率は低いのですが、体内に残ったマラリア原虫が、肝臓に潜み続け、何度も増殖して再発するという、タチの悪いマラリアで、今までワクチンはありませんでした。

感染防御と伝播防止、二つの効果を併せ持つ世界初のマラリアワクチン

この三日熱マラリア開発に成功した、金沢大学医薬保健学域薬学系助教の山本裕太郎さんに、どんなワクチンができたのか伺いました。

金沢大学医薬保健学域薬学系 助教 山本裕太郎さん

「私たちのワクチンは、マラリアから接種者を守る感染防御効果と、マラリアを次の蚊へうつさない伝播阻止効果、この二つ効果を併せ持つ世界初のワクチンになります。

そして、全世界を見ますと、熱帯熱マラリアと三日熱マラリアが、同じ国で共感染してる国がチラホラ見受けられます。このような国では、片方のワクチンでは効果が不十分であり、一つのワクチンで両方のマラリアに効くのがベスト、と私は考え、感染防御効果と伝播阻止効果を、それぞれ、熱帯熱マラリアと三日熱マラリアに対して発揮するという二価ワクチンというものを開発してきました。

そして、実用化、普及の観点から、一生涯においてたった二回のワクチン接種で完結する設計を不可欠に考えております。」

すごいワクチンが出来ました!

蚊の唾液の中にいるマラリア原虫は、蚊が人を刺した時に血管に入って、肝臓に向かうのですが、この肝臓への侵入を防いで感染させないようにする効果が一つ。そして、ワクチンによって作られる抗体が入った血を吸った別の蚊の体の中で、マラリア原虫を殺して、ただの蚊にするという効果、この二つを持つ世界初のワクチンです。

熱帯熱マラリア用のワクチンはすでにありますが、伝播阻止効果のあるものはありません。

アフリカなど途上国では、病院が遠かったり、行く手段が無かったりしますよね。現行ワクチンのように4回接種で完了と言っても、途中で来なくなる人もいて、充分な予防効果が発揮できないのが現状。そこで、2回で接種完了、ということにこだわって開発しました。

国産にすることで、日本人にもマラリアワクチンを打てるように!

しかし、実は、山本さんは国産のワクチンを開発することで、もう一つ大きなことに繋げたいとおっしゃいます。再び山本さんのお話です。

金沢大学医薬保健学域薬学系 助教 山本裕太郎さん

「日本人も打てるようにしたいということです。日本の駐在員とか旅行者、あとは自衛隊の方に打てる。現時点で日本で打てるマラリアのワクチンはございません。治療薬だけもらうことは出来るんですけれども、予防することは出来ないので、この国産マラリアワクチンというものの開発を進めたいと考えています。

そして、私たちのワクチンは、種痘の時に免疫したワクチニアウイルス株っていうのがあるんですけれども、これが、非常に生体内で高い免疫原性、身体が異物として認識して、免疫をつけやすく活性化させるという力に優れておりますので、それを船としまして、マラリア抗原を運んでもらうという設計にしてます。

これって言いますのが、マラリア以外にも応用可能です。ですので、今後、新たな新興再興感染症が流行した際に、迅速にまたワクチン開発につなげることができますので、その第一歩として、マラリアワクチンを世に出したいと考えております。」

日本で作ることで、日本人にも打てるようにしたいんです。

マラリアワクチンは、途上国用のワクチンとして売られているので、なかなか日本には回ってこないもの。しかし、行く人はいますよね。1960年前後に撲滅したとされる日本国内のマラリアですが、持ち帰らないためにもワクチンは必要です。

現在は、マウスの実験が終わり、人に似ているサルでの有効性の確認の最中。

なのですが、日本を始めとする先進国は、先進国に多い病気の薬の開発に資金が多く集まるため、マラリアワクチンの開発には、お金が集まりにくいんです。(やはり先進国では、先進国で流行っている病気のワクチンを作った方が収益性も高いですからね・・・。)今後、実用化に向けては数十億かかるということで、現在はその研究費を集めているところ・・・。

でも、新しい感染症などにも対応できるワクチン、と聞くと、我々のためにもなると、考えられます。ぜひ、実用化まで行き着いて欲しいです。

この気候変動が続くのであれば・・・蚊も変わってくるかも

と思ったら、いやいや直接我々にも必要なものになるかも、というちょっと怖い話が。ヤマザキ動物看護大学動物人間関係学科、学科長の長島孝行教授のお話です。

ヤマザキ動物看護大学動物人間関係学科長 長島孝行教授

「生き物っていうのはものすごくしなやかなんですね。変な言い方しちゃいましたけど、要するに、環境に合わせて色んなことを変化することができるっていうのがあります。そういう意味では、これから色んな環境が変わってくる、それに彼らは上手く合わせてこれからも生き続けるんだろうなと思います。

昔から言われてることを一つ言えば、やぶ蚊、あれって栃木県くらいが北限ですよって言われていた時代があったんです。今は青森まで行ってます。

じゃあそれって北海道に行くんですか?もうそれ時間の問題ですよね。そんな風に気候変動って気温がどんどん高くなってくれば、蚊もどんどん北上していく。

当然、この気候変動がこのままずっと続くんであれば、彼らが生息できる環境が増えてくる。そしたらそういうマラリアを媒介するような蚊が、生息することは当然できるし、今いる蚊がそういう風になるかもしれない。デングの場合もそうだったんですよ。デングウイルスを運ぶのは、日本にはいないだろうと言われていたのが、日本にいるやぶ蚊でも伝染するんだってことはあるんですよね。ですので、これからどういう風になるかそれは分からないですよね。」

だいたいの蚊は、気温が15℃を超えると活動可能。20℃を超えるとかなり活動します。一方35℃超えると、活動できない。そんな気候に合わせて、5月~10月末くらいまでという長い活動期間に、すでに変わってきているんです。(最近、真夏に外にいても蚊に刺されないな、と思ってました?)

こうした気候の変化で、マラリアが身近な病気になる可能性もある、ということ。

ただし、蚊は、溜まった水に卵を産みます。

そうした場所を減らすだけで、減らすことが出来る、コントロールできる虫。ですから、人ができる対策もしっかりやることも大事と、長島先生はおっしゃっていました。

ワクチンの開発を待ちつつ、身の回りの水たまりも、しっかり片付けないとですね。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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