令和8年7月28日に発生した熊本地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。


 謹んでお見舞い申し上げるとともに、皆さまとそのご家族の安全と、被災地の一日も早い復旧・復興を心より祈念いたします。


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東証REIT指数:7月後半に急反発→8月に急反落、1,800ポイント台でもみあい

森ヒルズ、ユナイテッド・アーバン…地震リスクに強いJ-REITの見分け方
楽天証券「東証REIT指数」より著者抜粋

 チャートを見ると、前月お伝えした6月の底打ちから続く回復トレンドが7月後半にかけて加速し、7月29日には1,912.57ポイントと4月21日以来、約3カ月ぶりの高値をつけました。AI半導体関連株の急落を受けて株式市場が動揺する中、長期金利の低下を追い風に、不動産投資信託(REIT)は相対的に資金を集めた形です。


 しかし、1,900ポイントを超えたのもつかの間、その後は急ピッチで調整が進みました。7月期決算銘柄の権利落ちによる需給の悪化に加え、日本銀行の追加利上げ観測が重なり、週後半から下落が加速。8月に入っても下げ止まらず、現在は1,804ポイント台と、心理的な節目である1,800ポイントを辛うじて上回る水準で推移しています(8月7日時点)。


 急反発の後の急反落と、値動きの荒い展開が続いています。ただ、分配金利回りは5.04%と依然として高水準を維持しており、長期投資家にとっての投資妙味は変わっていません。今後は1,800ポイントの節目を維持できるかどうか、また日銀の金融政策の動向を見極めながら、市場の方向性が定まってくるかに注目しています。


地震大国・日本でのREIT投資 地震リスクはどう考える?

 今回の地震報道を受け「国内の不動産投資信託(J-REIT)は地震が起きたらどうなるの?」と不安を感じた方も多いのではないでしょうか。不動産に投資するJ-REITにとって、地震リスクは避けて通れないテーマです。


 しかしJ-REITには、「地震PML」という独自のリスク管理指標があり、その情報は投資家に公開されています。今回はこの「地震PML」を中心に、J-REITの地震リスク対策を分かりやすく解説します。用語辞典でも「地震PML」を取り上げます。


 日本は世界有数の地震大国です。

南海トラフ地震や首都直下地震への警戒が高まる中、不動産を保有・運用するJ-REITにとって、地震リスクは軽視できないテーマです。


「大地震が起きたら、保有しているREITの分配金や投資口価格はどうなるの?」という不安は、多くのREIT投資家が持つ自然な疑問です。


 しかし、J-REITは「地震PML」という指標を活用した独自のリスク管理の仕組みを持っており、その情報を投資家に向けて開示しています。まずはこの言葉の意味から確認しましょう。


「地震PML」とは何か?建物の耐震力を数値で示す指標

「地震PML」は、英語の「Probable Maximum Loss(プロバブル・マキシマム・ロス)」の略称で、日本語では「予想最大損失率」と呼ばれます。一言で言えば、「大地震が起きたとき、建物がどれほどのダメージを受けるかをパーセントで示したもの」です。


 具体的には、475年に1度程度の確率で発生するとされる大地震(震度6強~7程度)が起きた場合に、建物に生じる損害額が、建物の再調達価格(新築で建て直すのにかかる費用)の何パーセントになるかを示しています。


 例えば、再調達価格が100億円の建物でPMLが5%なら、「この規模の大地震で最大5億円の損害が生じる可能性がある」ということを意味します。PMLの数値が低いほど地震に強い物件、高いほど地震リスクの大きい物件です。


J-REITにおけるPMLの目安

 J-REITの世界では、PML値を基に次のような投資基準が一般的に用いられています。


森ヒルズ、ユナイテッド・アーバン…地震リスクに強いJ-REITの見分け方
筆者作成

 PMLが15%を超えると「要注意」、20%を超えると「そもそも投資しない」という水準です。こうした基準を設けることで、ポートフォリオ全体の地震リスクを管理しています。


J-REITの現実 ほぼ全ての銘柄でポートフォリオPMLが10%未満

 では、実際のJ-REITはどのくらいのPML水準で運用されているのでしょうか。


 結論から言えば、ポートフォリオPML(保有する全物件のPML平均)を開示しているJ-REIT銘柄のほぼ全てが10%を下回っています。優良な投資法人の中には、PML1~2%台という非常に低い水準を実現しているところもあります。


 なぜここまで低いのでしょうか。それには大きく二つの理由があります。


[1]新耐震基準を満たした高品質物件が中心

 1981年6月以降の建築確認に基づく「新耐震基準」の建物は、震度6強~7の大地震でも倒壊しないことが法律で求められています。J-REITが保有する物件の多くはこの基準を満たしており、旧耐震基準の建物に比べて耐震性能が格段に高くなっています。


[2]免震・制振構造を採用した物件が多い

 大型のオフィスビルや商業施設では、地震の揺れを大幅に軽減する「免震構造」(建物の基礎部分に特殊な装置を組み込み、揺れを地面から切り離す構造)や「制振構造」(建物内部のダンパーが揺れのエネルギーを吸収する構造)を採用しているケースが多く、これがPMLをさらに低く抑える要因になっています。


 実際、2007年の新潟県中越沖地震では、新潟県に物件を保有するJ-REITの被害は軽微にとどまりました。J-REITが高品質・高耐震性の物件を厳選していることの証と言えるでしょう。


主なJ-REIT銘柄のポートフォリオ地震PML値

 実際にJ-REITの代表的な銘柄がどのくらいのPML水準で運用されているか、各社の公式資料から確認した数値を見てみましょう。


森ヒルズ、ユナイテッド・アーバン…地震リスクに強いJ-REITの見分け方
※各投資法人の公式サイトおよび決算資料より筆者作成 (PML値は決算ごとに更新されるため、最新情報は各社の公式サイトでご確認ください。)

 PML値は建物の耐震性能だけでなく、投資エリアの構成によっても変わります。地方など複数地域に分散投資している銘柄は、PML値が相対的に高めに出る場合がありますが、地域分散によるリスク軽減という別のアプローチをとっていることを合わせて理解することが重要です。


過去の地震とJ-REITへの影響

 地震リスクが実際にJ-REITの運用に影響を与えた事例として、2016年の熊本地震が挙げられます。


 イオンリート投資法人(3292)は当時、「イオンモール熊本」を保有していましたが、2016年4月の熊本地震で同物件は大きな被害を受けました。復旧費用の計上により、イオンリート投資法人は一時的な損失を余儀なくされています。地震リスクが分配金や財務に直接影響を与えうることを示した出来事でした。


 その後、物件の復旧・再整備が進められましたが、イオンリート投資法人は2018年に同物件をポートフォリオから売却しています。


 公式サイトのポートフォリオ一覧(2026年7月1日現在)を確認すると、現在イオンリート投資法人は熊本県内に物件を保有していません。そのため、今回の令和8年熊本地震による同投資法人への直接的な影響は生じない状況です。


 過去の被災経験を経てポートフォリオを見直し、地震リスクに向き合ってきた事例として、J-REIT投資を考える上で記憶にとどめておきたい出来事です。


地震PMLはどこで確認できる?確認方法と注意点

 気になる銘柄のPMLを調べる場合は、以下の場所を参照してください。


・各投資法人の公式ウェブサイト(主にポートフォリオデータ)
・決算説明資料・資産運用報告書(有価証券報告書)


 多くの投資法人が「ポートフォリオPML」として全保有物件のPML平均値を公開しており、個別物件ごとのPMLを詳細に開示している投資法人もあります。情報は決算ごとに更新されるため、必ず最新の決算資料を確認するようにしましょう。


 ただし、全ての投資法人がPML値を公開しているわけではありません。ホテル系の一部銘柄など、ポートフォリオPMLを開示していない投資法人も存在します。開示していない場合は、個別物件の耐震性能や建築年、建物構造などを決算資料から読み取ることで、地震リスクをある程度判断する参考にすることができます。


PML以外の地震対策も加えてリスク分散しよう

 J-REITの地震リスク管理は、PML値の管理だけにとどまりません。各投資法人は複数の手段を組み合わせてリスクに備えています。


[1]地域分散

 特定の地域に物件を集中させず、全国各地に分散投資することで、一カ所で大地震が発生してもポートフォリオ全体へのダメージを限定できます。今回の熊本地震のような地域的な大地震の場合、物件の地域分散が特に効果を発揮します。


[2]用途分散

 オフィス、住宅、物流施設、商業施設など複数の用途の不動産に分散することで、特定種類の施設が影響を受けても他でカバーできる構造をつくっています。


[3]地震保険の付保

 PMLが一定水準(目安として15~20%)を超える物件には地震保険を付保し、万が一の大規模損害に備えます。


[4]免震・制振構造の積極採用

 揺れそのものを低減する特殊な構造を持つ建物を積極的に取得することで、PML値自体を低く抑える取り組みも行われています。


PMLの活用方法は?

 PMLは、「分配金利回り」や「財務の健全性」と並ぶ、銘柄選びの重要な判断材料の一つです。


 例えば、分配金利回りが同水準の2銘柄を比較する際、ポートフォリオPMLが低い方が地震リスクに対してより堅固と言えます。「同じ利回りなら、より地震に強い方を選ぶ」という視点です。


 ただし、PMLはあくまで指標の一つです。分配金利回り、財務基盤の安定性、スポンサーの信頼性なども含めた総合的な判断が大切です。「低いPML=物件品質の高さと、リスク管理への真剣な取り組み」の表れとして活用しましょう。


地震PMLで見る!今月の注目J-REIT 2銘柄

 今回は、地震リスクへの対応アプローチが対照的な2銘柄をピックアップしました。


[1]森ヒルズリート投資法人(3234):都心最高品質ビルで業界屈指の低PMLを実現する「建物の品質」型


[2]ユナイテッド・アーバン投資法人(8960):全国分散×複合用途で地震リスクを広く薄める「分散」型


「建物の耐震性能でPMLを下げるタイプ」と「地域・用途の分散でリスクを薄めるタイプ」


 同じ「地震に強い」でも、アプローチが全く異なる2銘柄です。それぞれ詳しく解説します。


[1]森ヒルズリート投資法人(3234) 建物の力で実現する、業界屈指の低PML

▼どんなリート?


 森ヒルズリート投資法人は、森ビル株式会社をスポンサーとし、東京都心の超高品質オフィスビルや複合施設に特化したREITです。


 最大の注目点は、そのポートフォリオPMLの低さです。2.1%という水準はJ-REIT全銘柄の中でも最低水準クラスであり、「地震リスク管理に優れたREIT」として広く知られています。


 なぜここまでPMLが低いのでしょうか。答えは保有物件の「品質」にあります。


 旗艦物件の「六本木ヒルズ森タワー」(東京都港区、地上54階建て)をはじめ、「ARK Hills South Tower」など、最先端の免震・制振技術を採用した超高層ビルが中心です。六本木ヒルズ森タワーは建物の基礎部分に免震装置を組み込んだ高度な耐震設計を持ち、大地震でも建物の揺れを大幅に抑制できる構造となっています。


 ポートフォリオは東京都心に集中しているため、一見「地震リスクが高い」と感じるかもしれません。しかし、建物そのものの耐震性能が極めて高いため、PMLは非常に低い水準にとどまっています。これが「都心集中でも地震に強い」という、この銘柄ならではのポジションを生み出しています。


 スポンサーの森ビルは、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズなど超大型複合開発を手がけてきた実績を持つ不動産デベロッパー。高品質なビル開発のノウハウがREITの物件品質に直結しており、安定的な物件取得パイプラインとしても機能しています。


▼詳細データ
投資口価格:
12万7,100円(8月7日)
単元株数:1口
年初来高値:15万1,500円(1月8日)
年初来安値:12万3,800円(6月8日)
時価総額:約2,389億円
分配金利回り:4.88%
決算回数:年2回(1月/7月)
ポートフォリオPML:2.1%(2026年1月31日時点)
格付:AA/安定的(JCR)


▼メリット&デメリット
メリット:
ポートフォリオPMLが業界最低水準クラスであり、保有物件の地震耐性が極めて高い点が最大の強みです。免震・制振構造を採用した最高品質ビルが中心のポートフォリオは、地震リスクの低さと賃貸需要が旺盛な東京都心一等地という立地の強さを兼ね備えています。森ビルという実績あるデベロッパーによる安定した物件供給パイプラインも、長期運用の基盤となっています。


デメリット:ポートフォリオが東京都心に集中しているため、首都直下地震が発生した場合、PMLが低くても一定の影響を免れることはできない点は認識しておく必要があります。高品質物件が中心なため分配金利回りは他銘柄より低めの傾向にあり、高利回りを優先する投資家には物足りない局面もあります。


[2]ユナイテッド・アーバン投資法人(8960) 地方42%超・全国分散で地震リスクを「薄める」アプローチ

▼どんなリート?


 ユナイテッド・アーバン投資法人は、第一ライフ丸紅リアルエステート株式会社をスポンサーとする総合型REITです。オフィス、商業施設、ホテル・旅館、住宅など多様な用途の不動産に、全国各地で投資しています。保有物件数は100件を超え、その立地は北海道から九州まで全国に広がっています。


 表を見ると、ポートフォリオPMLは5.56%と他の銘柄より高く見えます。しかしこの数字は、「地震に弱い」ことを意味するわけではありません。アプローチそのものが違うのです。


 森ヒルズリート投資法人が「建物の耐震性能を極限まで高めてPMLを下げる」戦略であるのに対し、ユナイテッド・アーバン投資法人は「全国各地に物件を分散させることで、特定地域の地震リスクをポートフォリオ全体で薄める」戦略をとっています。地域構成を見ると、首都圏約57.6%、地方約42.4%(2026年6月時点データ)と、投資先が広範囲のエリアに及んでいることが明白です。


 九州、関西、東海、北海道など、首都圏以外の各地域に物件が広く分散されています。例えば今回の熊本地震のように特定地域で大きな地震が発生した場合でも、九州の物件比率がポートフォリオ全体の一部にとどまるため、全体へのダメージが限定されやすい構造になっています。


 つまり、「一つの投資法人の中で地域分散が完結している」という点が、この銘柄の地震リスク対策の本質です。首都直下地震、南海トラフ地震、地方の直下型地震など、どこで起きても一定のリスク分散効果が働く設計になっています。


 さらに、オフィス、商業、ホテルなど複数の用途にも分散しているため、地域分散と用途分散の「二重の分散」が地震リスクを広く薄めています。


 旗艦物件は、東京都武蔵野市に位置する商業施設「ヨドバシカメラマルチメディア吉祥寺」です。吉祥寺という高い集客力を持つ商業エリアに立地しており、安定したテナント需要が見込める中核物件です。取得価格は約280億円で、ポートフォリオ全体の約3.8%を占めています(公式サイト ポートフォリオ一覧より)。


 スポンサーの第一ライフ丸紅リアルエステート株式会社は、丸紅株式会社(8002)と第一ライフグループ(8750)の中間持株会社です。丸紅グループの幅広いネットワークや不動産開発・建設事業のノウハウと、第一ライフグループの保有資産運用・金融仲介機能を組み合わせた強力なスポンサー体制が、全国各地への多様な分散投資を支えています。


▼詳細データ
投資口価格:16万200円(8月7日)
単元株数:1口
年初来高値:19万1,700円(1月19日)
年初来安値:15万5,600円(6月8日)
時価総額:約5,126億円
分配金利回り:5.71%
決算回数:年2回(5月/11月)
ポートフォリオPML:5.56%(第45期決算説明資料・2026年5月期)
格付:AA/安定的(JCR)


▼メリット&デメリット
メリット:
全国の複数地域・複数用途に分散投資しているため、一つの投資法人の中で地震リスクの地域分散が実現できています。地方比率が42.5%と高く、首都圏一極集中のリスクを避けたい投資家にとって有効な選択肢です。時価総額が大きくJ-REIT市場の中でも流動性が高いため、売買のしやすさの面でも安心感があります。


デメリット:ポートフォリオPMLは5.56%と、建物品質特化型の銘柄と比べると数値は高めです。地域・用途が幅広く分散している分、特定の成長エリアや高収益セクターに集中投資するタイプの銘柄と比べると、好況時の上振れが限定的になる場合があります。


▼REITの中ではココの位置!


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(かつさんど)

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