今回は、地方取引所に単独上場する銘柄に割安な銘柄が存在する可能性に着目しました。今回は、一定の規模を持つ地方単独上場銘柄から、特に割安度が高い銘柄を五つ紹介します。
PBR(株価評価)とROE(収益性)の比例関係を利用して割安銘柄を探索
時価総額100億円以上で地方取引所に単独上場する銘柄から、同業他社比で割安な銘柄を探しました。
どの銘柄が割安かを知るために、株式の評価と収益性がおおむね、図のような比例関係にあることを利用しました。
<株価評価と収益性はおおむね比例関係>
具体的には、2026年9月4日時点で時価総額100億円以上、かつ、直近通期決算で黒字を計上している地方取引所単独上場銘柄のうち、国内同業他社との間で株価純資産倍率(PBR)(株価評価)と自己資本利益率(ROE)(収益性)に比例関係が認められる21社をまず選定しました。
そして、この21社が国内同業他社(東証など他市場上場銘柄含む)比で割安か割高かを分析するとともに、その割安度合い・割高度合いが解消された場合の株価を各社について計算。現在の株価からの上昇率が高い順に21社について並べ、トップ5に絞りました。
表が、地方取引所単独上場銘柄の中で、国内同業他社比較の観点で割安感が高いトップ5企業です。
<地方取引所単独上場銘柄割安トップ5> 順位 社名 証券
コード 取引所 株価 PBR 割安感解消 PBR 株価 上昇率 1 ジョイフル 9942 福岡 1,300 2.6 7.1 3,500 169% 2 岡谷鋼機 7485 名古屋 5,130 0.4 0.8 10,200 99% 3 ABホテル 6565 名古屋 1,300 1.2 2.2 2,400 85% 4 北海電工 1832 札幌 1,388 0.8 1.4 2,500 80% 5 川崎設備工業 1777 名古屋 2,339 1.7 2.8 3,800 62% ※株価は2026年9月4日終値
出所:各社資料などより作成
なお、銀行業界については7月16日公開の本連載記事の分析に地方取引所単独上場企業がおおむね含まれているため、今回は分析対象から外しました。
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2026年7月16日付: 金利上昇が追い風に!?【割安銀行銘柄トップ10】1位は「PBR0.1倍」の地方銀行
1位:ジョイフル
ジョイフル(9942 福岡)は、九州発の全国型ファミリーレストランチェーンで、低価格と地域密着を強みに成長してきた外食企業です。1976年に大分県で創業し、焼き肉店からファミレスへ業態転換。現在は全国に約600店舗を展開し、ステーキ・ハンバーグなど洋食中心のメニューを提供しています。
自社工場による一貫製造体制を持ち、品質管理と低価格を両立させている点が特徴です。郊外ロードサイド型の出店戦略により、地域の「集いの場」としての役割も果たしています。創業者の「現地・現品・現場」精神を継承し、メニュー開発や店舗運営の改善を継続的に行っています。
ジョイフルが行うカジュアルレストラン事業の同業他社には、ロイヤルホールディングス(8179 東証プライム)、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387 東証プライム)、サンマルクホールディングス(3395 東証プライム)などの企業があります。
これら上場カジュアルレストラン企業主要14社について、上述の通り、収益性についてはROEを、株価評価についてはPBRを適用した散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。
その中で、ジョイフル(英語名:Joyfull)は割安方向にずれています。現在ジョイフルの株価は長期的な上昇トレンドにある中で1,300円(PBR2.6)となっていますが依然として非常に割安感がある状況で、この割安感が解消された場合のPBR(散布図の青破線に乗る水準)は7.1であり、相当する株価は3,500円(169%上昇)です。
<主なカジュアルレストラン企業14社のROEとPBRの関係>
なお、分析対象とした14社の中で、地方取引所単独上場銘柄ではありませんが、グローバルダイニング(7625 東証スタンダード)とサンマルクHDも割安感が大きい銘柄です。
グローバルダイニングは、東京発の外食企業で「カフェ ラ・ボエム」「ゼストキャンティーナ」「モンスーンカフェ」など多業態レストランを展開しています。高いデザイン性と非日常空間を強みに、都心中心に約40店舗を運営するほか、海外展開も行っています。
サンマルクHDは「サンマルクカフェ」「生麺専門鎌倉パスタ」などを展開する外食企業で、ベーカリー・カフェと和洋レストランを全国展開しています。高品質・中価格帯の業態を強みに、直営中心で安定した運営体制を持っています。
<カジュアルレストラン企業割安銘柄(地方取引所以外も含む)> 市場 社名 証券
コード 株価 PBR 割安感解消 PBR 株価 上昇率 福岡 ジョイフル 9942 1,300 2.6 7.1 3,500 169% 東京S グローバルダイニング 7625 470 0.9 2.3 1,200 155% 東京P サンマルクHD 3395 2,456 1.7 3.1 4,600 87% ※東京Pは東証プライム市場、東京Sは東証スタンダード市場
出所:各社資料より作成
2位:岡谷鋼機
岡谷鋼機(7485 名古屋)は、鉄鋼、非鉄金属、機械、エレクトロニクス、食品などを扱う日本最古級の独立系商社で、1669年創業の「笹屋」を起源とします。名古屋を本拠に、製造業向けの素材・部材供給から設備機器、電子デバイス、食品流通まで幅広い事業を行っています。国内外に多数の拠点を持ち、アジア・北米を中心にグローバル展開を進めている状況です。
岡谷鋼機が行う金属卸事業の同業他社には、阪和興業(8078 東証プライム)、神鋼商事(8075 東証プライム)、佐藤商事(8065 東証プライム)などの企業があります。これら上場金属卸企業主要10社について、上述の散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。
その中で、岡谷鋼機(英語名:Okaya & Co)は割安方向にずれています。現在岡谷鋼機の株価は上昇トレンドにある中で5,130円(PBR0.4)となっていますが、同業他社比の割安感が解消された場合のPBR(散布図の青破線に乗る水準)は0.8であり、相当する株価は1万200円(99%上昇)です。
<主な金属卸企業10社のROEとPBRの関係>
<金属卸企業割安銘柄(地方取引所以外も含む)> 市場 社名 証券
コード 株価 PBR 割安感解消 PBR 株価 上昇率 名古屋 岡谷鋼機 7485 5,130 0.4 0.8 10,200 99% 出所:各社資料より作成
3位:ABホテル
ABホテル(6565 名古屋)は、愛知県を拠点とするビジネスホテルチェーンで、シンプル・高効率運営を特徴とする宿泊特化型ホテルを全国展開しています。
2005年設立、東海地方を中心に駅近立地での出店を進め、2026年時点で約70店舗を運営。客室は機能性重視で、無料朝食・大浴場を標準装備することで、出張客や観光客の需要を広く取り込んでいます。運営は直営中心で、建物の標準化によるコスト最適化と高稼働率の確保が強みです。
なお、ABホテルは東証スタンダード市場での上場を2026年5月に廃止し、名証単独上場となりました。
これは、主要株主である東祥(8920 東証スタンダード)(スポーツクラブ「ホリデイスポーツクラブ」や賃貸住宅を展開する東海地盤の企業)が、出店戦略や設備投資を中長期で進めるための経営権強化と意思決定の迅速化のために持株比率を約88%まで高めた結果、東証上場の必須基準である流通株式比率25%以上を満たさなくなったことによるものです。
ABホテルが行うホテル・旅館事業の同業他社には、共立メンテナンス(9616 東証プライム)、リゾートトラスト(4681 東証プライム)、藤田観光(9722 東証プライム)などの企業があります。
これら上場ホテル・旅館企業主要10社について、上述の通り、収益性についてはROEを、株価評価についてはPBRを適用した散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。
その中で、ABホテル(英語名:AB Hotel)は割安方向にずれています。現在ABホテルの株価はダウントレンドにある中で1,300円(PBR1.2)となっていますが、同業他社比の割安感が解消された場合のPBR(散布図の青破線に乗る水準)は2.2であり、相当する株価は2,400円(85%上昇)です。
<主なホテル・旅館企業10社のROEとPBRの関係>
なお、分析対象とした10社の中で、アメイズ(6076 福岡)もABホテルほどではありませんが、割安感が高いです。
アメイズは九州地盤の宿泊特化型ホテル運営会社で、「HOTEL AZ」を中心に低価格、均一サービス、大量出店を強みに急成長しています。標準化された設備と高稼働率を武器に、地方ロードサイド型ホテル市場で存在感を高めています。1994年にジョイフルが買収して子会社化した後、ジョイフル創業者の穴見保雄氏が2002年に株式をジョイフルから引き取り、独立させました。
ロイヤルホテルは、「リーガロイヤルホテル大阪」など、国内外に17のホテルを展開する会社です。
<ホテル・旅館企業割安銘柄(地方取引所以外も含む)> 市場 社名 証券
コード 株価 PBR 割安感解消 PBR 株価 上昇率 名古屋 ABホテル 6565 1,300 1.2 2.2 2,400 85% 福岡 アメイズ 6076 1,315 1.1 1.7 2,100 60% 東京S ロイヤルホテル 9713 912 0.6 1.3 2,100 130% ※東京Sは東証スタンダード市場
出所:各社資料より作成
4位:北海電工
北海電工(1832 札幌)は北海道最大級の電気設備工事会社で、半導体工場、データセンター、再エネ設備、送電網など道内の大型投資を背景に業績を拡大しています。
主力は送電設備、変電設備、電気設備工事で、ラピダス(千歳)やソニー苫小牧の半導体関連投資、AWS・NTTなどのデータセンター建設が追い風となり、受注が継続的に増加。北海道は再エネ導入量が全国上位で、風力、太陽光、送電網増強などの設備投資が多く、同社の事業領域と完全に一致している状況です。
北海電工が行う電気工事事業の同業他社には、きんでん(1944 東証プライム)、関電工(1942 東証プライム)、クラフティア(1959 東証プライム)などの企業があります。これら上場電気工事企業主要10社について、上述の通り、収益性についてはROEを、株価評価についてはPBRを適用した散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。
その中で、北海電工(英語名:Hokkai Electrical Construction)は割安方向にずれています。現在北海電工の株価は過去一年間上昇トレンドにある中で1,388円(PBR0.8)となっていますが、同業他社比の割安感が解消された場合のPBR(散布図の青破線に乗る水準)は1.4であり、相当する株価は2,500円(80%上昇)です。
<主な電気工事企業10社のROEとPBRの関係>
<電気工事企業割安銘柄(地方取引所以外も含む)> 市場 社名 証券
コード 株価 PBR 割安感解消 PBR 株価 上昇率 札幌 北海電工 1832 1,388 0.8 1.4 2,500 80% 出所:各社資料より作成
5位:川崎設備工業
川崎設備工業(1777 名古屋)は、空気調和設備、衛生設備、防災設備、電気設備など、建築設備工事全般を手がける総合設備会社です。
川崎設備工業が行う空調・衛生工事事業の同業他社には、高砂熱学工業(1969 東証プライム)、大氣社(1979 東証プライム)、三機工業(1961 東証プライム)などの企業があります。
これらの上場空調・衛生工事企業主要14社について、上述の散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、川崎設備工業(英語名:Kawasaki Setsubi Kogyo)は割安方向にずれています。
現在川崎設備工業の株価は長期的に低迷している中で2,339円(PBR1.7)となっていますが、同業他社比の割安感が解消された場合のPBR(散布図の青破線に乗る水準)は2.8であり、相当する株価は3,800円(62%上昇)です。
<主な空調・衛生工事企業14社のROEとPBRの関係>
<空調・衛生工事企業割安銘柄(地方取引所以外も含む)> 市場 社名 証券
コード 株価 PBR 割安感解消 PBR 株価 上昇率 名古屋 川崎設備工業 1777 2,339 1.7 2.8 3,800 62% 出所:各社資料より作成
(西 勇太郎)

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