台風はOKで地震はダメ? 車両保険の“意外な線引き”

 2026年7月に発生した「令和8年熊本地震」では熊本県で最大震度7を観測しました。こうした大地震で気になるのが、通常の車両保険では地震によるクルマの損害が補償されない点です。

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 まずは、車両保険がどこまで守ってくれるのかを見ていきます。

 日本損害保険協会によると、車両保険では台風や洪水などの風水災が補償されますが、契約タイプによっては対象外の場合があります。一方で、地震・噴火・これらによる津波は通常の車両保険では補償されません。

 たとえば近くの山が噴火し、飛んできた噴石でボディがへこんでも、通常の車両保険では保険金は支払われません。

 三井ダイレクト損保によると、地震は火災や交通事故などと違って発生時期や頻度を予測することが非常に難しいうえ、広い範囲に巨大な災害を引き起こして損害額が甚大になる可能性があり、安定した保険制度として運用できる保険料の算定が難しいためだと説明しています。

「なぜ台風や洪水と扱いが違うのか」と感じるところです。しかもクルマは、家の地震保険でも守ってもらえません。

 住宅向けの地震保険でも、クルマは補償の対象に含まれないのです。財務省によると、地震保険の対象は居住用の建物と家財(生活用動産)で、家財のうち通貨や有価証券、自動車などは対象外とされています。

 つまり、通常の車両保険と住宅向け地震保険のどちらでも、地震による車両損害は基本的な補償の対象にならないのです。

 なぜ、地震などはそこまで“特別扱い”されるのでしょうか。カギは「災害の規模」にありました。

クルマは地震保険にも入れない! 頼れる“一時金50万円”の特約

 財務省によると、地震保険は民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険する官民共同の仕組みです。1回の地震で支払われる保険金の総支払限度額は現在12兆円で、関東大震災クラスの巨大地震にも対応できる範囲として設定されています。

「地震で愛車に被害」←通常の車両保険&地震保険では直せません! 台風や洪水と“扱いが違う”ワケ 備える方法は?
2011年の東日本大震災で被害を受けたクルマ(柘植優介撮影)

 つまり、民間単独では対応できないほど巨大な損害リスクを伴うため、地震は通常の保険の枠組みから外されているのです。

 とはいえ、地震でクルマを失っても泣き寝入りするしかない、というわけではありません。

 東京海上日動火災保険は東日本大震災での経験を踏まえ、2012(平成24)年1月から「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」を発売しました。生活に欠かせない移動手段を早く確保するための商品で、現在は複数の損害保険会社が同様の特約を用意しています。

 同社では車両保険(一般条件)にこの特約をセットでき、地震・噴火・津波で約款上の全損となった場合、50万円が支払われます。ただし車両保険金額が50万円未満の場合は、その金額となります。全損には、運転者席の座面を超える浸水などが含まれます。

 大事なのは「金額の考え方」です。修理費そのものを補償するのではなく、生活に欠かせない移動手段を確保するための定額一時金です。開発時には、新たな自動車を購入するための一定の資金を確保することが想定されました。

 近年は補償を手厚くする動きもあります。AIG損保は2026年1月20日、同年の1月1日以降を保険始期とする契約から、従来の一時金特約に「拡張払特約」を組み合わせ、一時金を100万円・200万円・300万円から選べるようにしたと発表しました。ただし車両保険金額を超える設定はできません。

 台風や洪水は補償される一方で、地震などは通常の車両保険では対象外です。その背景には、巨大災害を安定して引き受ける難しさがあります。地震への備えを考えるなら、こうした特約の有無も確認しておきたいところです。

 なお、とうぜんながら補償内容や全損の定義は会社ごとに異なるため、実際の取り扱いは各社の約款で確認が必要です。

【写真】「栃木県警察」の車両が無保険で捕まった!? どういうこと?

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