ある無差別殺傷事件が、日本社会の大きく深い闇へとつながっていく。刑事・記者・生存者という“出会うはずのなかった3人”が命を懸けて真相に挑むノンストップ・クライムミステリードラマ『犯罪者』が、Prime Videoで世界独占配信中だ。

本作で記者の鑓水を演じた斎藤工と事件の生存者の修司を演じた水上恒司に話を聞いた。

-最初に脚本を読んだ時の印象から伺います。

斎藤 活字の段階で映像を想像すると複雑でしたし、(原作者の)太田(愛)さんも映像を想像できなかったとおっしゃっていました。ただ、映像化できないようなものを作るという理念があるともおっしゃっていたので、それを理解するというか、3人の主線があって、そのややこしさみたいなものには、原作を含めてレイヤーがたくさんあると理解するには時間がかかりました。でも、何か心拍数がだんだん上がっていくようなクライム感というか、サスペンス感というのは、日本では前例がないような作品になるような気もしました。

水上 僕も、正直なところ脚本を読んだ段階では、なかなか映像をイメージすることが難しかったです。でも、撮影をしていく中で、松永(大司)監督の演出というか、組をどういうふうに持っていくのかということを、多少なりとも感じることができて、「あそこをそういうふうに捉えるのか、なるほど」とも思えたので、そういう意味では非常に勉強になりました。

-監督とのディスカッションや入念なリハーサルを通して役を作り上げていった感じですか。

斎藤 役作りに関しては、3人の関係性がとても重要だと思いました。だから自分で準備していったものや、水上さんと高橋(一生)さんがいる中で行われたエチュード(練習)を含めたリハーサルが、鑓水という役を形成してくれているという感覚がありました。また、原作があるものを実写にした時に、唯一原作を超えられるのは人間を映しているということ。そのうまみみたいなものをあぶり出す作業だったのかなと思います。

リハーサルが苦しかったわけではありませんが、「そこに答えがあったのか」という意外なものが、自分に戻ってくるような不思議な感覚がありました。それが水上さんと高橋さんとの三角形の中で感じられて作品に臨めたことは、僕にとっては本当に宝物のような経験でした。3人のシーンが、ドラマの核の一つになるので、鑓水の部屋で3人がどう過ごすのかという部分に関しては、リハーサルを厚めにした記憶があります。

水上 僕は、自分がちゃんと考えていないといくら演出する側が水をくれても花は咲かないと思うんです。だから、今回はリハーサルが大きな肥料になったと思えるぐらい、今まで感じたことがないものを頂きました。そこからどう花を咲かせていくのかは、自分自身の問題ですが、今回はリハーサルの期間があったからこそ、クランクインから飛ばすことができました。いくら自分がイメージしたとしても、生身の人間がそこにいたら、予想しないことが起きたり、うまくいかなかったりもするので、なかなか最初からアクセルは踏めないのですが、今回はいきなり踏めました。

-3人の関係性についてはどう考えましたか。

斎藤 3人の関係性はとても特殊だと思います。不思議だったのが、僕と高橋さんのシーンの時に、そこにはいない修司の存在がすごく大きかったんです。むしろそのシーンにおける主人公は修司だったりもする。いない人が三角形の中で存在感を出すみたいな関係性がすごく面白いなと。

これがバディだったらちょっと違います。三角形ということの絶妙さを介して、そのエネルギーの中でぐるぐるしていくことが面白いなと。その分、誰が演じるのかというのがすごく大事になります。それにいい意味で左右され合う関係性がとてもすてきでした。人を見るとか話を聞くとか、それを受けてどう自分が反応するかみたいなところに丁寧に向き合えた現場だったと思います。例えば、合わせ鏡のような瞬間がたくさんありました。言葉として表現しなくても、表情やまなざしなどで描かれているものがたくさんあったので。自分のキャラクターを形成してくれたのは、確実に水上さんの修司と高橋さんの相馬だったと、今振り返って強く思います。

水上 今、斎藤さんがおっしゃったように、僕と一生さんがやっている時に、そのシーンにはいない斎藤さんの顔が浮かぶことが一番大きいと思います。その場にいない人の何かを感じながら、目の前の人に対して言葉を投げかけていくことができるのが演技のレベルの高さだと思います。人間ってみんなそうじゃないですか。こうしてお話ししながらも、何か他のことを考えながら目の前の人たちと対峙(たいじ)しているわけですよね。

それが画面に奥行きを与えていくと思うし、見る人たちがいろんなことを想像することにもつながると思います。

-刑事と記者と生存者という、立場の違う3人が事件の真相に迫る構成の面白さについてはいかがですか。

斎藤 太田さんに話を聞いたのですが、社会的な構造を描きたいが故に、キャラクターが増えていったということらしいです。なので、このプロジェクトは、視聴者の方を信用しないと描けないものだと思いましたし、大きな組織が持つ不条理のしわ寄せが個人に落とし込まれていくというのは社会の常でもあると思います。それを地上波では放送できない理由も分かるし、そういう意味では、ストリーミングの時代になったことで、映像作品としてパンドラの箱を開けるタイミングが来たというワクワク感というか、武者震いじゃないですけど、そういう題材なんだというのは、監督と話していても思いました。

水上 今回で言うと、僕らが悪に対して鉄ついを下すわけですが、それをやったとしても、何かが大きく変わるとか、巨万の富を得るとか、権力を得るとか、そういうことでスカッとするわけではない。地味かもしれないけれど、生きていく意味を見いだしていったりすることの方が大事なわけです。そういうものが描きづらい今の流れの中で、こうした作品を作れること、それに参加できたことに喜びがありました。

-見どころは、3人の関係性の変化ですが、高橋さんを交えて3人で演じながら、そういう変化を演じる楽しさはありましたか。

水上 たくさんありました。中でも、3人の中で一番変わったのは修司だと思います。修司のバックボーンも含めて、1話からの流れで演じていく中で、この2人のような人をずっと求めていたんだろうなというのが分かるからこそ、修司を演じていて楽しかったです。

そして、そんな修司を少しでもすてきに、素晴らしく、魅力的にするためにはどうしたらいいのだろうと、一生さんと斎藤さんを鏡として、お二人を見ながら自分の役を立ち上げていく時間でした。

-演技者として、高橋さんも交えて共演してみていかがでしたか。

斎藤 たくさん刺激をもらいましたし、安心感ももらいました。高橋さんもそうですが、修司が水上さんで本当によかったと思います。年齢差はありますが、僕の中ではお二人とも奥行きがあって深い。自分の浅さが分かっているからこそ、その深さに魅力を感じます。僕の中では映画的という人たちなのですが、語らずとも言葉があるお二人なんです。言葉なき言葉があるというのは、物語があるということなので。今の水上さんとご一緒できたことの価値は、この先さらに増していくと思います。そういう意味では、僕にとっては、この仕事を辞めなくてよかったなと思える瞬間でした。どこかでこの仕事や業界はすごく水物だと思っているんです。なので、そんな中で時折、ご褒美のような、答え合わせのような、そういう作品や時間に出会えるのですが、今回は間違いなくそういう時間でした。

水上 比較的順撮りだったので、その時間を経て、修司が相馬と鑓水に対して告白するシーンなどは、それまでの撮影とリハーサルの時間がなかったら全く別物になっていたと思います。ある意味、役と実生活の自分がリンクして、修司という役がお二人のおかげで出来上がっていったと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

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