次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線
第16回 近畿大・宮原廉
──東の鈴木泰成(青山学院大)、西の宮原廉(近畿大)。
秋が深まるにつれ、ドラフト戦線でそんなフレーズが浸透していくかもしれない。
ともに大学球界を代表する本格派右腕。今夏に台湾で開催されるワールドカレッジベースボールチャンピオンシップの日本代表に、ふたりとも選出されている。
かねてより将来性を高く評価されてきた鈴木に対し、宮原は最上級生になるにつれ右肩上がりに評価を高めてきた。
【154キロを生んだフォーム改革】
宮原は広島県出身で、崇徳高校では甲子園出場経験こそなかったものの、県内屈指の右腕として注目されていた。現在は身長182センチ、体重88キロというたくましい体躯から、最速154キロを計測する。
宮原の投球を見るたびに、気になることがあった。それは、大学3年春以降、ストレートの球威が徐々に上がっているように感じられたのだ。ただスピードが速いだけでなく、捕手のミットを力強く叩ける。この球威こそ、宮原の最大の魅力なのではないか。
そんな印象を本人にぶつけてみると、宮原は淡々とした口調で答えた。
「フォームを変えてからボールの強さを求めてきたので、そこに気づいてもらえたのはうれしいです」
宮原はトレーナーの前田大佳さんとフォーム矯正に取り組んだという。前田さんは筑波大出身で、投手として独立リーグでプレーした経験がある。どんな改善ポイントがあったのか聞くと、宮原は「言葉にするのが難しいんですけど」と前置きしながら答えた。
「リリースポイントで力を入れるのではなく、その前の部分から力を伝えていくイメージです。『ボールを切る』というイメージをなくそうと取り組んできました」
投手のなかには「リリースの瞬間に100パーセントの力を伝える」と語る選手も少なくない。宮原のようにリリースの手前から力を伝えるタイプは、少数派と言っていいだろう。
【ライバルという意識はない】
じつは宮原は、大学日本代表でチームメイトになった鈴木にこの感覚を惜しげもなく伝えている。鈴木が明かす。
「宮原くんにリリースのアドバイスをもらったおかげで、いい感覚が戻ってきました。自分は今までリリースの瞬間に一点集中で投げていたんですけど、これだとバラつきも出やすいんです。宮原くんのようにリリースの手前から力を伝える時間を長くする感覚のほうが、自分にはいいのかなと感じました」
逆に鈴木からは、落ちる変化球の握りやリリース感覚を宮原に伝授したという。両者の間に「ライバル」というギラついた緊張感はない。
宮原は苦笑交じりにこんな実感を語った。
「周りがどうこうではなくて、結局は自分を高めていくだけなので。刺激や参考になっても、ライバルという意識はないですね」
周囲に惑わされることなく、我が道を行く。だからこそ、近畿大のような個人の意思を尊重してくれるチームと水が合ったのだろう。
バッティングパレス相石スタジアムひらつか(平塚球場)で実施された大学日本代表候補合宿では、宮原のマイペースぶりが浮き彫りになった。参加者同士の紅白戦で誰もが自身のアピールに躍起になるなか、宮原は「新たな武器」を試していた。
「この春のリーグ戦では、カーブが決め球としてはあまり使えていなくて。上のレベルに行くためにも、もっとカーブを使えるようになりたいと練習してきたんです。ちょっとコツをつかんできたので、合宿でも使いました」
宮原は2ストライクと投手有利なカウントに持ち込むと、積極的にカーブを投げ込んだ。120キロ近い球速で、大きく縦に割れるパワーカーブ。ただし、宮原が「少し力みました」と明かすように、コントロールがバラついた。
打者7人と対戦し、カーブで三振を奪えたのは、最後に対戦した酒井成真(日本体育大)のみ。それでも、宮原は「最後のカーブはよかった」と手応えを得ている。
【亡き恩師への恩返しは終わらない】
こんな重要な舞台でも、新たな挑戦ができる胆力。それは、宮原が現状維持ではなく、常に前進しようとしている証拠でもある。
宮原は言う。
「今の段階でこんなことを言っていいのかわからないんですけど、自分はプロに行ってからが勝負だと考えています。プロで活躍することを目標にして練習していますし、自分は未完成ですから。フォームもストレートも変化球の精度も、まだまだ改善できる部分はあります。だから今の時点で同世代の選手と比べられても、あまり意味はないのかなと感じます」
宮原は自分自身の可能性を信じている。その自信は、今は亡き恩師から授けられたものだった。
「高校2年まで應武(篤良)さんが監督だったんですけど、1年生の何でもないピッチャーだった時から『いいよ、いいよ』と褒めてくれて、試合で使ってくれました。應武さんのお陰で自信がつきましたし、今でも感謝しています」
應武は新日鐵君津(現・日本製鉄かずさマジック)、早稲田大で監督を務め、数々の名選手を指導してきた。母校である崇徳の監督になり、宮原ら後進を育成する途上で病に倒れた。恩師は2022年9月に鬼籍に入ったが、宮原にとっての恩返しは続いている。
目標はプロの世界で大エースになること。リリーフ適性も高いが、本人は「先発にこだわりたい」と語っている。
「もともと投げるスタミナはありますし、長いイニングを投げるほうがやりがいもあって、楽しいので」
すでにドラフト3位以内の指名でなければ強豪企業チームへ進む意向を示しているが、その制約も意味をなさないだろう。










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