次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線
第17回 仙台育英・田山纏
グラウンドに立っているだけで、不思議と華やいで見える。抽象的な表現になってしまうが、野球選手のなかにはそんなエネルギーを放射する選手がいる。
1年前の6月。仙台育英の守備練習を見ていて、右翼を守る選手に釘づけになった。遠投120メートルという爆発的なスローイングはもちろん魅力だったが、それ以上に見る者に訴えかけてくるものがあった。よく通る声、精悍な表情、明るいムード。この選手が発する"覇気"というべきか。しかも、その選手が2年生と聞いて、ますます興味をそそられた。
【指揮官も大絶賛の異質な打撃】仙台育英の須江航監督は、その右翼手の名前が田山纏(まとい)だと教えてくれた。そして、須江監督の田山評に、私は思わず膝を打った。
「打者としても人間としても、度会隆輝くん(DeNA)に似ているかもしれません」
度会もまた、アマチュア時代から陽のオーラを発散する選手だった。その天真爛漫な笑顔を見るだけで、こちらもつられて笑ってしまう。そんな度会と、田山が重なって見えるのは同感だった。
あれから1年が経ち、田山は希望進路を「プロ一本」と絞るほどの注目選手になっている。
ただ、避けては通れないネガティブな要因もある。それは田山が「右投左打の外野手」という点だ。近年はプロ野球界で右投左打の外野手が飽和状態にあり、同じ属性の選手がドラフト指名を受けるハードルが高まっている。高校時点でのプロ志望届の提出を見送り、進学に舵を切る有望選手も目立っている。
当然ながら、仙台育英サイドもプロ側の事情を把握している。そのうえで、田山がプロ志望を固めた背景には何があったのか。須江監督に聞くと、意外な答えが返ってきた。
「田山は打席でのスイングスピードが落ちないんです。素振りや打撃練習でスイングスピードが速い選手はいくらでもいます。
【"纏"という名前に込められた父の思い】
昨夏の甲子園では、須江監督の証言を裏づける打撃を披露している。初戦の鳥取城北戦。1番打者として甲子園初打席に立った田山は、鳥取城北の先発右腕・田中勇飛(ゆうひ)から左翼ポール際へ大飛球を放つ。打球はフェンスを越えたようにも見えたが、判定はフェンス直撃。とはいえ、いきなり逆方向への二塁打に、甲子園の場内はどよめいた。しかも、低反発バット導入後、高校野球界が投高打低の傾向が深まるなかでの一打だった。
本人に当時の打席について聞くと、田山は目を輝かせてこう答えた。
「絶対に先頭打者ホームランを打ってやると思っていたんです。前日に森友哉さん(オリックス)が甲子園の逆方向にホームランを打った映像を何回も見て、イメージをつくっていました。
「纏」という特徴的な名前の由来を聞くと、田山はこんなエピソードを教えてくれた。
「父(貴司さん)が結婚した時から、『息子ができたらこの名前にしたい』と決めていたらしいです。生きていくなかで、いろんな能力や技術を身に纏っていってほしいと。自分のなかでもオーラ、雰囲気を纏うことは意識しています」
ホームベースから離れた場所にいても、不思議と視界に入ってくる独特の存在感。それは田山が意図的に「纏って」いたものだった。
「華のある選手を目指しているので、やっぱり目立たないと。プレーだけでなく、声のかけ方、言葉のチョイスでも人の目に留まると思うので、そこは意識しています」
控えめで慎み深い高校球児が多いなかで、田山のアグレッシブな姿勢は新鮮に映る。人とのコミュニケーションも得意だという。そのルーツに迫っていくと、田山は意外なことを打ち明けた。
「父も母(英里香さん)も特別支援学校で教員をしていたんですけど、自分も小さい頃からいろんな人と触れ合う機会をもらっていたんです。障害を持つ子どもに対して、どんな言葉を使えば意図が伝わるか考えるようになりました。両親もプロなので、どう接するべきか事細かに教えてくれていました。
父・貴司さんは土浦日大の野球部出身で、プロを目指したほどの選手だったという。茨城県鉾田市の自宅の庭には手づくりの練習ケージがあり、田山は平日に自主練習に精を出した。小学6年時には12球団ジュニアトーナメントのDeNAジュニアに選出され、活動日になると片道4時間をかけて練習に通った。
「毎週土曜に父の運転で練習に行って、ホテルに泊まって日曜の夜に帰る生活でした。母もいつも試合を見に来てくれましたし、サポートしてくれてありがたかったです」
【プロでプレーする幼馴染との約束】
右投左打の外野手として、高卒でプロを目指すのは生半可な覚悟ではないはずだ。その話題に触れてみると、田山はこんな心情を打ち明けた。
「田山家は先祖代々、公務員が多いんです。自衛官、消防士、警察官といった堅実な仕事についていて、それに比べたらプロ野球選手なんてギャンブルみたいなものですよね。大ケガをしたら仕事がなくなる、厳しい世界ですから。でも、自分は小学生の頃から『高卒でプロに行きたい』と言ってきました。『大学に行ってから』と思うと、どうしても甘えが出てしまうと思うんです。ドラフトまでのあと4カ月、高い意識を持って野球に取り組むことで、自分はもっと成長できると考えています」
保育園から中学まで同窓だった幼馴染に、中山優人(ロッテ育成)がいる。
「おまえも絶対にプロに来いよ!」
中山との約束もまた、田山が高卒でプロを目指すひとつの理由になっている。
今夏の青写真は描ききっている。宮城大会を勝ち上がり、甲子園で活躍。侍ジャパンU−18代表に選出され、日の丸を背負って戦う。
田山は決然とした口調で宣言した。
「自分は『心で戦え』って言葉が好きなんです。技術も大事ですけど、まずは相手を圧倒する気持ちを常に持っています。須江先生も『心は熱く、頭は冷静に』と言っていますが、最後は根性や執念がないと活躍できないと思っています」
常にハートは熱く燃えさかっている。仙台育英の右翼には、いつも人々の視線を集めるオーラを纏った男が立っている。










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