現在、福岡県北九州市で行なわれているバレーボール男子アジア選手権で、日本は9月8日のオーストラリア戦で勝利。これで予選ラウンドを全勝し、グループ首位通過を果たした。

 オーストラリア戦の内容は、まさに快勝だった。なかでもエースの髙橋藍(ボグダンカ・LUK・ルブリン/ポーランド)は3戦続けて(それも同じ第1セット)サービスエースを連続で決めてチームに勢いをもたらしたほか、第2セットには体をぐるりと反転させながら相手に背を向けて放つ「背面アタック」で得点するなど、会場を大いに沸かせた。

【男子バレー】髙橋藍の「ド派手」なプレーの傍らで.........の画像はこちら >>
 そんなド派手なプレーの傍らで、着々と自身の役目を果たしていた選手がいる。ミドルブロッカーの小野寺太志(サントリーサンバーズ大阪)だ。

 3試合連続で先発出場を果たしたこの日は、各セットで必ずブロックシャットを浴びせ、終わってみれば両チームを通して最多4本のブロックポイントをマークした。

 オーストラリアといえば、平均身長が200cmを超えるように、アジア圏のチームのなかでもサイズの大きさが強みの国。その高さと対峙したわけだが、小野寺自身はそこにフォーカスしすぎることなくコートに立っていた。

「今までの2試合は自分たちよりも小さい選手を相手に戦うシーンが多かったのですが、今日(オーストラリア戦)に関してはほとんどの選手が僕よりも背が高かった(小野寺=202cm)ので、これまでの2戦とは違う展開になると想像していました。ですが、相手の高さに惑わされることなくプレーできました。

 それに身長が高い選手がそろっているとはいえ、攻撃のテンポが特段速いわけではなく、さらにアタッカーにも粗さが見られました。そこに対して、ブロッカーとしてはしつこくボールに触りにいくイメージを持っていたので、それがよかったと思います」

 ブロックの真髄はシャットだけにあらず──。ワンタッチをとる、的確な位置どりで後衛のレシーバーにボールを拾わせてチャンスメイクをする、など多岐にわたる。

それを随所で、小野寺はやってのけている。さらにオーストラリア戦では、こんな場面もあった。

【サイドアタッカーで起用されたことも】

 第2セットの中盤、ラリーのなかで小野寺は味方がつなげたボールを咄嗟に片手(ワンハンド)で処理し、髙橋へトスを上げた。結果的には相手に切り返されて得点にならなかったが、そうした細かいプレーも小野寺の真骨頂である。

 その場面を振り返ってもらうと、本人は「もうちょっと、いいトスを上げられるんじゃないかとは思うんですけど(笑)」と目尻を下げた。聞くに、普段の練習からワンハンドをやったり、トスを上げたりすることもあるという。

「今日の午前中も、石川(祐希/ジラート・バンク・アンカラ/トルコ)や(髙橋)藍、それに智くん(山本智大/大阪ブルテオン)がパスをしている際に、僕が遊びでトスを上げる──といったことをやっていました。それが生きたのではないかと」

 トップレベルのプレーが織りなす真剣勝負のなかで、ふと遊び心をのぞかせたというわけだ。

 そもそも小野寺の持ち味は、そのオールラウンダーぶりにある。これまでのキャリアを振り返ると、2019-20シーズンのVリーグ・ディビジョン1(当時)ではスパイク賞(アタック決定率)とブロック賞(1セットあたりのブロック決定本数)の個人2冠に輝いた実績がある(その後ブロック賞は2020-21シーズン、スパイク賞は2023-24シーズンにも受賞)。シニアの日本代表に抜擢されてまもない時期には、サイドアタッカーとして起用されたこともあった。

 オーストラリア戦では西田有志(大阪ブルテオン)が的確なレセプションを披露したように、現代のバレーボールではオポジットがサーブレシーブに入るなど、ポジションの概念にとらわれない幅広いプレーが求められるようになってきた。その点は小野寺も自覚しており、レシーブに関する意識を強めている。

 たとえばオーストラリア戦の第3セット、自らのサーブで始まったプレーでは、相手のアタックに対して後衛でレシーブを構えていながら、ボールに手が届かなかった。味方のブロックにかかってボールの軌道が変わったかのように見えたが、拾えて当然の打球だったと本人は悔やむ。

「今までだったらチャンスボールなので、もったいなかったですね。ひざをケガしてからディグ(スパイクレシーブ)練習を全然してこなかったので、ああいうボールにも反応できていないのが現状。取れるはずのボールを取れていないのは課題です」

【ミドルブロッカーとしての責務】

 悔しい表情といえば、同じ第3セットの終盤にもあった。オーストラリアが驚異的な粘りでつないだあと、日本にとってチャンスボールが巡ってきた場面。セッターの深津英臣(ウルフドッグス名古屋)は小野寺へのクイックを選択したが、そのボールはコート内に収まらず失点となる。着地と同時に、小野寺は天を仰いだ。

「ややトスが低かったり、コースを狙いすぎた部分もありましたが、ミスではなく得点につなげられるようにすべきプレーでした。あそこでうまく対応するのが僕の持ち味だと考えていますし、ああいうシーンでもうまく決められるようにしたいです」

 日本の戦いは、ここから決勝トーナメントへと移る。負ければ終わりの一発勝負、さらに2028年ロサンゼルス五輪の切符を獲得するために、今大会で必要なのは優勝だけだ。

 決勝トーナメントでいかなる相手に当たろうとも、ひとつのミスが勝敗を左右しかねないのは、このレベルになれば言うまでもない。

だからこそ小野寺は、自身の課題とミスに対してグッと噛み締めるように言葉を発していた。

「対戦相手は(オーストラリア戦終了時点で)確定していない状態ですが、僕らとしては1試合ずつ勝つだけですし、1点ずつ積み重ねて有利な展開を作っていくだけ。僕たちのやるべき準備をしっかりと全員でやっていきたいと考えています」

 状況に応じたブロックを繰り出す。確実にアタックで仕留める。それだけではない。丁寧に2本目のパスを上げて味方の得点をアシストする。拾えるボールに対応してチャンスを作る──。

 コート上でやれることは、実にたくさんだ。そこに決して派手さはなくとも、小野寺はミドルブロッカーとして、自身の務めを遂行し続ける。

坂口功将●取材・文 text by Kosuke Sakaguchi

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