たばこや薬物など、やめたくてもやめられない“依存症”。今増えているのが「ギャンブル依存症」です。
5月14日、名古屋の金山駅前で行われた「ギャンブル依存症」の問題について啓発する街頭活動。主催したのは、当事者やその家族らでつくる支援団体です。
(ギャンブル依存症家族の会 愛知 松本知美代表)
「“ギャンブル依存症”は誰でもなる病気だということと、早い段階で相談ができることをたくさんの人に知ってもらいたい」
42歳男性 コロナで入院中「タガが外れ、1~2週間で100万円近く使った」
愛知県豊田市に住む会社員のAさん42歳。2年前にギャンブル依存症と診断されました。
(Aさん)
「僕がパチンコ・パチスロに出会ったのは18歳のときで、はじめは本当に楽しかった。その頃は、借金をしてまでとかいう発想は全くなくて」
大学生の時にパチンコや競馬を始めたというAさん。当初は、趣味程度だったといいます。しかし、コロナ禍をきっかけに大きな変化が。
(Aさん)
「コロナにかかったタイミングで隔離されて入院した時があった。そのときに好きなことができなくなる恐怖というか、ギャンブルができなくなる恐怖がすごくて、やらなきゃいけないみたいな感じになって、その時に金額のタガが外れた。1~2週間で100万円近くのお金を使ってしまって」
入院中、オンラインの競馬などで多額のお金をかけるように。
(Aさん)
「コロナの時にリモートワークが解禁されて、片方で携帯で競馬を見ながらパソコンはつけっぱなしにしておく。実際負け続けていくのだけれど『いつか勝つんじゃないか』というのが捨てられなくてやり続ける」
睡眠薬100錠以上を飲み自殺図る「生きている価値はないと思っていた」
その後もギャンブルをやめることはできず、消費者金融や親、友人などから借りた借金は、あわせて1000万円以上に。そして…
(Aさん)
「その生活が数か月間続いて、40歳のときに金銭的にもどうしようもなくなり、オーバードーズで自殺を図りました」
極度のうつ状態になり、当時処方されていた睡眠薬を100錠以上飲み、病院に搬送。
何とか命は取り留めましたが、そこで重度のギャンブル依存症と診断され、そのまま、山梨県にある依存症の回復施設に約1年半入所しました。
現在は仕事を休職し、自助グループなどに通いながら回復を目指しています。施設を出て以降、賭け事はしていません。
(Aさん)
「やっぱり罪悪感というのはあって、こんなにギャンブルで借金をしてしまった自分はもう生きている価値がない人間だし、他の人に迷惑をかけてまで生きている価値はないと思っていた。本当に死に至る病気だなと」
ギャンブル依存症は、本人だけではなく周りも苦しめることに。
ギャンブルやめられない夫 娘の「お年玉や誕生日祝い」にも手をつける
名古屋市内で3歳の娘と暮らすBさん33歳。2年ほど前、夫からギャンブルによる借金があることを打ち明けられました。
(Bさん)
「ギャンブルで2000万円負けてしまったという告白があって。もともとパチンコが好きなのは知っていたし、パチンコだったらまぁいいかなという感覚だったが、(夫が)オンラインのアプリで競輪にハマって、そこで大金を勝ってしまったところから始まったのかな」
祖父母や友人、会社の同僚などから借金を重ねてきたという夫。休日もパチンコなどに出かけ、子どもと過ごす時間は少なかったといいます。そして…
(Bさん)
「娘の祝い金を取られてしまったことから、私が離婚をすると決めて実家に戻ってきたんですけど、出産祝いやお年玉とか誕生日のお祝いとかを15万円ほど抜かれていた。
「依存症をまずは認めてくれないと」
2年ほど前から夫とは別居、Bさんは現在離婚に向けて準備を進めていますが、夫は今もギャンブルをやめられないといいます。
(Bさん)
「もし回復することができたら一緒に生活したいとは思っていたけれど、依存症というのをまずは認めてくれないと難しいと思う」
賭け事などにのめり込んで、コントロールができなくなる「ギャンブル依存症」。
WHO・世界保健機関も、精神疾患の一つとして定めています。
有効な薬などはなく、当事者同士の自助グループでそれぞれの経験を語り合ったりして、ギャンブルから離れることで回復を目指します。
(自助グループの参加者)
「『ひとりでどうにかしようとしない』ということを周りの人が教えてくれて、本当に仲間の存在に感謝している」
「依存症は脳の病気」
愛知県では2024年度、福祉センターなどに寄せられた依存症に関する相談は、合わせて1834件。そのうちギャンブルに関する相談は1053件と最も多く、アルコールや薬物に関する相談を大きく上回っています。
(刈谷病院 アデクションセンター 菅沼直樹センター長)
「『性格(意思)が弱い』とか誤解されることがよくあるが、依存症というのは脳の病気。(ギャンブルをすると)脳に強い刺激が来るので、それを繰り返し繰り返し与えられると、脳に回路ができてしまって、そこに大量の信号が流れる。止まらなくなる。それが繰り返される。そのような病気」
こうした中、愛知県ではことし4月、「依存症対策センター」を新たに設立。刈谷病院と藤田医科大学の2つの医療機関と協定を結び、依存症に特化した医療体制の強化や、治療を担う人材育成などを行います。
(菅沼センター長)
「今はスマホがある。手元にいつでもギャンブルにアクセスできる状態になってしまっている。
依存症対策の一方で行政はカジノ誘致も…
その一方で…
(愛知・大村秀章知事 ことし2月)
「IR事業の実現可能性について、関心のある事業者がいるかどうかを調査、検討、リサーチを進める」
愛知県はカジノを含む統合型リゾート施設、IRの誘致を本格的に進めようとしています。既存の公営ギャンブルに加え、「カジノ」も自治体自ら後押しすることは、ギャンブル依存症の増加に手を貸すことにつながらないのか。
当事者の家族らを支援する団体の松本代表は…
(ギャンブル依存症 家族の会 愛知 松本知美代表)
「さらに新たな賭博場を作るということについては、既存のものも対策がしっかりできていない段階で、時期尚早かなというのが(支援団体の)現場の意見だが、依存症対策をしっかりするという約束の上で、この法律(IR整備法)ができていると思うので、カジノの開業について反対とか賛成ではなく、国として(依存症)対策をきちんとやってもらえることを重視している」
「適切な対応をしないと死につながる」
この日、愛知県刈谷市で開かれたのは、ギャンブル依存症についてのセミナー。当事者やその家族ら約170人が参加しました。
そこには、依存症からの回復を目指すAさんの姿が。参加者の前で、自らの体験を語りました。
(Aさん)
「人生をやり直すにはギャンブルしかないとか、ギャンブルをやっている以外の時間は生きている価値がないと思っていて、睡眠薬をアルコールで飲んで寝る。本当に適切な対応をしないと死につながるというのは、私自身すごく経験しているし、強く訴えたい」
当事者だけではなく、経済活動や治安など社会全体に損失を招く「ギャンブル依存症」。国を挙げて拡大を食い止める必要があります。

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