“好き”が“病気”に変わるのはどこからなのか。そして、なぜ本人は絶対に気づけないのか。

スマホ、ショート動画、市販薬、美容整形、推し活。

昭和や平成の時代とはまるで違う「イマドキの依存症」。朝のコーヒーも、仕事終わりのビールも、実は「依存」です。でもそれは「病気」ではありません。

この分野の第一人者・精神科医の松本俊彦さんに“新時代の依存症”について、伺いました。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オー...の画像はこちら >>

▼出演
【松本俊彦】
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長 同センター病院 薬物依存症センター センター長

▼聞き手
柳沢彩美(CBCテレビ アナウンサー)

この記事は前編です。中編と後編は以下のリンクから読むことができます。

【中編】推し活が“病気”に変わる瞬間 なぜ本人は気づけない?“自分が贅沢しているわけではない”

【後編】朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線

“捕まらない薬物” 2、30年で変化した依存症 

(柳沢彩美アナウンサー)
松本さんは国立精神・神経医療研究センターで薬物依存研究部の部長を務められ、依存症治療の現場に長く関わってこられました。そんな松本先生にまずお伺いしたいのが、依存症の現場で、今と昔で違うところはどんな所がありますか。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”【新時代の依存症 前編】
CBC

(松本さん)
いくつかあるんですが、まず1点目。例えば薬物の依存症の分野では覚醒剤など、違法薬物がこれまでは中心だったんですが、やはりこの2、30年を振り返ってみると“捕まらない薬物”。つまり、医薬品ですね。処方薬や市販薬といった捕まらない薬物が増えてきたなっていうのが1点。

それから2点目は、ネットの普及。特にコロナ禍では、お年寄りまで含めてネットにアクセスするようになったという状況がある。その中で例えば、ギャンブルなどオンラインカジノ、それからゲームもインターネットのゲームにハマる人が増えているなと。

3点目は、やはりその文化が非常に多様化してきました。人々の趣味も本当に様々で、その中で例えば推し活みたいなものが、自分の経済能力を超えて、のめり込んでしまう人がいたり、美容ブームみたいなもので、美容整形が止まらなくなってしまったり。これまで我々もあまり馴染みなかったものが一気に広がっているというのが、最近の依存症分野の特徴かと思います。 

「依存症患者」は増加している?

(柳沢)
以前よりも、依存症の患者さんが増えたということですか?

(松本さん)
そこが難しいところなんですね。 元々こういう問題はあったかもしれないんですが、時代の流れの中で表面に表れてきたと言える部分もあるかもしれません。

例えば医薬品の依存症に関しては、背景には人々が医療にアクセスしやすくなった、あるいは医薬品にアクセスしやすくなったという社会の変化なんかがあるような気がしますし、先ほど申し上げた推し活とか美容みたいなものも、例えば美容一つとっても、昔に比べたら美容整形手術に対する人々の抵抗感はなくなっているんじゃないかなと思うんです。

質問に正確に答えるならば、裾野が広がってる可能性はあるよねという感じでしょうか。ただし、それが重症とは限らないという、そんな言い方になります。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”【新時代の依存症 前編】
CBC

なぜ少女たちは“市販薬オーバードーズ”に走るのか

(柳沢)
確かに医薬品は、今ものすごくいろんな時間帯で買えるようになっていますね。この市販薬オーバードーズという使い方、この点はどうしてこんなふうになってると先生は見ていらっしゃいますか。

(松本さん)
やっぱり一番は、ドラッグストアなどが増えてきたということ。

営業時間もずいぶん深夜までやっていたりします。なので、全体として医薬品へのアクセスが良くなったんですね。このこと自体は悪いことではないと思うんです。でもそれだけに、やはり子どもたちが容易に購入できてしまうということに関しては、やはり一つの問題かなと思いますね。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”【新時代の依存症 前編】
CBC

コスメを買う「ドラッグストア」で…

(柳沢)
子どもたちがアクセスしてしまう理由は何ですか?

(松本さん)
そもそも店舗数が多いというのはあるかと思います。それから市販薬のオーバードーズを繰り返している子たちは若い女性が多いんですね。若い女性は、おそらく同じ年代の男性よりも市販薬に対する心理的な抵抗感が低いと思います。

なぜならば、生理痛との付き合いがありますよね。だから早い段階から市販の鎮痛薬には馴染んでいるかと思います。

それから3つ目。これが重要な点なんですが、10代の女の子たちが買えるコスメ用品を売っている場所、最もよく品揃えがある場所はどこなのかということを考えていただきたいんですよ。

(柳沢)
ドラッグストアですね。

(松本さん)
やっぱり女の子たちは、化粧を覚える年代でドラッグストアに行く。

その中でっていうのもありますね。もうちょっとうがった見方をすれば、例えば今、SNS等で自分の生活のベストな部分をたくさん映すじゃないですか。顔も修正されているのかなっていうぐらい、キラキラした顔ですよね。 あれを見る中で、多くの若い子たちが自分の容姿に自信を失っているんですよね。でもそれを頑張って取り返すチャンスとして、やはりメイクというものがあって。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”【新時代の依存症 前編】
CBC

だから、ドラッグストアというのは悩める女の子たちがメイクをし、そしてその後に心の痛みみたいなものを、市販薬の本来とは異なる不適切な使用によって癒している。こんなふうにも読み取ることができて、いろんな意味で現代的なのかなという気がしますね。

(柳沢)
1個の悩みが全て解決されるような場所が、すごく好都合にたくさんあるということですね。

(松本さん)
そうですね。ドラッグストアって元々アメリカなんかではそんなふうにすごく便利なお店として発展した経緯がありますから、ある意味では本来の役割を果たしているとも言えるんですけれどもね。 

止まらない美容整形は“自分探し”

(柳沢)
若い女性というところで言うと、美容に依存する、メイクで自分を変えたいというものもあれば、もう骨格そのものから美容整形という形で依存していく方、こういったときって、ご家族はどういうお気持ちなんですか。

(松本さん)
家族はもはやコントロールできない状況になっています。手っ取り早くお金を稼げるような風俗産業、あるいは高価な接客業なんかでお金を稼いでいるので、もはや家族はコントロールできない状況にあるかなと思いますね。

(柳沢)
一度美容整形をした方が、何度も何度も繰り返してしまうのは、どうしてなんでしょう。

(松本さん)
もう自分探しみたいになってしまうという感じだと思うんです。例えば自分のまぶたが問題で、自分の人生はうまくいかないと思っている。まぶたを直してみると、実はそれほど人生は変わらない。では今度はどこだっていうふうな中で、止まらなくなっている方もいるなという印象がありますね。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”【新時代の依存症 前編】
CBC

ハードルが下がった「美容整形」

(柳沢)
美容整形に対する皆さんの理解というのが、本当にこの数十年で大きく変わってきたと思うんですが、それも美容依存に陥る人が増えた要因に考えられるんですか。

(松本さん)
美容整形している方は多分、昔に比べるとすごく増えて、裾野が広がったと思います。 ただしその美容依存になっている方のパーセンテージが昔と比べて増えたかというと、それは違うのではないかという印象はあるんですね。

ただ、何か自分が納得いかないという気持ちを持っている方が、美容にハマりやすい社会にはなっているかなと思うんですね。やはり美容に関しては昔に比べたら抵抗感はなくなっていますし、SNSなんかでも美容形成外科医とか美容形成のクリニックなんかが盛んに宣伝をしている。そこで手術をしましたというユーザーもニコニコしながらカミングアウトしている。

別にこれが悪いというふうには全然思ってないんですが、そういう中で、美容整形のハードルは確実に下がっているような気がしますね。

止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”【新時代の依存症 前編】
CBC

〈新時代の依存症〉※この記事は前編です。

【前編】止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”

【中編】推し活が“病気”に変わる瞬間 なぜ本人は気づけない?“自分が贅沢しているわけではない”

【後編】朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線

YouTube「NextTV ネクストテレビ」2026年08月22日配信より

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