“好き”が“病気”に変わるのはどこからなのか。そして、なぜ本人は絶対に気づけないのか。

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昭和や平成の時代とはまるで違う「イマドキの依存症」。朝のコーヒーも、仕事終わりのビールも、実は「依存」です。でもそれは「病気」ではありません。

この分野の第一人者・精神科医の松本俊彦さんに“新時代の依存症”について、伺いました。

▼出演
【松本俊彦】
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長 同センター病院 薬物依存症センター センター長

朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」...の画像はこちら >>

▼聞き手
柳沢彩美(CBCテレビ アナウンサー)

この記事は後編です。前編と中編は以下のリンクから読むことができます。

【前編】止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”

【中編】推し活が“病気”に変わる瞬間 なぜ本人は気づけない?“自分が贅沢しているわけではない”

朝のコーヒー 仕事終わりのビール 「依存」と「依存症」の境界線

(柳沢彩美アナウンサー)
1日何杯もコーヒーを飲むとか、仕事終わったら絶対お酒飲むという、身近な嗜好品による「依存」というのはどのように捉えていますか。

(松本俊彦さん)
「依存」と「依存症」は違うということは、皆さんにしっかり理解してほしいところはあると思うんです。朝出勤前にコーヒー1杯2杯飲まないと仕事に行く気がしないんだよねとか、あるいは朝、職場のデスクに着いた後に「まずはコーヒーだよね」という方はいっぱいいると思うんですよ。それがないと仕事ができない気がするって思い込んでいたり、何か調子が悪い気がする、これは「依存」なんです。

朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線【新時代の依存症 後編】
CBC

それから仕事終わったときに「やっぱりビールの最初の一杯が美味しいよね」って、あれが楽しみで頑張って働いているんだって、だからそれがないとすごく機嫌が悪くなる。これは「依存」ですよね。



でもその人たちは朝一杯のコーヒーを飲むことによってしっかりと仕事をしているし、あるいは仕事が終わった後のビールを飲むことによってストレスが解消されて、翌日また元気に仕事に行っているんですよ。依存はしているんだけど、健康的な依存、「良き依存」だと僕は思います。

「良くない依存」とは?

問題は「良くない依存」がどんなものなのか。例えば、仕事が終わった後にお酒を飲むと止まらなくなって、酩酊して自分を失った状態で、自分が一番大切にしている人を傷つけるような言動をしてしまう。あるいは深夜まで飲んで、朝起きられなくて仕事を翌日休んでしまう。これは健康的に依存できてないですよね。

それからカフェインの場合には、害がなかなか分かりづらいところがあるんですが、胸がドキドキと動悸がする、パニック発作の場合もあるだろうし、あるいは不整脈のある人もいるかもしれない。なのにコーヒーが止められないとなってくると、適切に健康的に依存できているとは言えません。だから、実は依存症というのは不健康な依存、安全に依存できない病。

(柳沢)
安全の範疇を超えると依存症になる?

(松本さん)
そうですね。これまでは仕事が終わった後のビールのおかげで、仕事のパフォーマンスはむしろ上がっていた。ところが依存症になると、お酒を飲むと翌日仕事ができなくなる。「依存」になっていないですよね。

朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線【新時代の依存症 後編】
CBC

依存症治療は「家族の相談」から

(柳沢)
安全な依存にとどまらなくなった時は、誰が一番最初に気づけるんですか。

(松本さん)
これが大事なポイントなんですね。 実は依存症というのは本当に自分で気づきにくい、自覚しにくい病気なんですよ。依存症という病気の特徴は何かというと、本人が困るよりも先に周りが困るんですよ。

周りが困って「お前おかしいよ」「お前病気だよ」「医者に行ってくれよ」っていうふうに言うと、「お前らがそういうふうに口うるさいから、そのストレスで余計飲んじゃうじゃないか」みたいな言われ方をするんですね。だから一番最初に困るのは身近に一緒にいる人、家族なんですよ。なので、依存症の治療は多くの場合、家族の相談から始まるんですね。

朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線【新時代の依存症 後編】
CBC

(柳沢)
家族が不安になりすぎて「依存症じゃないですか」と相談するケースももちろんあるんですよね。先生の見極めとして「安心していいですよ」とお答えになるラインというのはどんなところなんでしょうか。

(松本さん)
正確には本人を見てないことには分からないところなんですが、やっぱり本人が自分の役割を果たせなくなっているかどうかということは、すごく大きな見極めだと思いますね。職業的な役割もあるでしょうし、家庭内での役割っていうこともあるかと思います。

「本人がいないと診療できない」

(松本さん)
ただ、今の話だと、僕が病院の診察室で家族の相談を受け止めているみたいな感じに視聴者の方は思うと思うんですが、これ大事なポイントで、病院というのは、少なくとも初回の診察に本人が来ないと診療ができない(お金が取れない)んですよ。そこが依存症の治療を始める上でのご家族が悩む点なんですね。

病院に電話をしても「本人が来なければ話にならないよ」というふうに言われちゃうんですよ。

ここで家族は路頭に迷って、「一体我々がどこに相談したらいいのか」ってことなんですね。ぜひ見ている方にしっかりと赤線を引いておいてほしいんですけれども、各都道府県・政令指定都市には少なくとも1か所「精神保健福祉センター」という行政機関があるんです。これは心の問題に特化した保健所みたいな場所です。

例えば、愛知県の中には名古屋市の精神保健福祉センターがありますし、この名古屋市を除く県域をカバーするところとしては愛知県の精神保健福祉センターがあるんです。これは日本全国どこでもこういったところがあります。 ここでは、依存症のご家族の相談とか、あるいはご家族の勉強会とかをやっているんですね。 それから依存症のご本人やご家族をサポートする様々な民間の社会資源に関する情報もたくさんあるんです。

なので、まず「あれ、うちの人、あるいはうちの子ども依存症かもしれない」と思ったときには、まず精神保健福祉センターに連絡を取って、そこで本人を無理くり病院へ連れて行くんじゃなくて、最初に疑問を感じたご家族が精神保健福祉センターで相談をしたり、あるいはその勉強会に出るというところから始めるのが一番いいかと思いますね。

朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線【新時代の依存症 後編】
CBC

〈新時代の依存症〉※この記事は後編です。

【前編】止まらない美容整形は“自分探し” 手軽に買える市販薬で“オーバードーズ”

【中編】推し活が“病気”に変わる瞬間 なぜ本人は気づけない?“自分が贅沢しているわけではない”

【後編】朝のコーヒーや仕事終わりのビール… 精神科医が明かす「依存」と「依存症」の境界線

YouTube「NextTV ネクストテレビ」2026年08月22日配信より

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