市立中学校で部活動が終了した神戸市。9月1から、地域の団体が主体となるクラブ活動が始まりました。

その名も「コベカツ」。校区の垣根を越えて生徒たちが希望のクラブに参加できる仕組みで、平日も含めて全面的に変わるのは全国の政令指定都市で初めてです。

その背景には「教員のタダ働き」などの問題があり、こうした“歪み”を抱えざるを得なかった戦後日本の歴史的背景がありました。

一方、これまでの部活動が教員の“善意”で成り立ってきた以上、それが廃止されて地域クラブ制に移行した今、さまざまな課題が浮上しています。名古屋大学・教育学部の内田良教授への取材を交え解説します。

夏休み最終日…神戸市内の中学校では「地域クラブ」体験会

「教員のタダ働き」部活動が生みだした“歪み” 教員の負担軽減...の画像はこちら >>

神戸市東灘区にある、神戸市立本山南中学校では、夏休み最終日の8月31日、「部活動」から「地域クラブ」に移行するのを前に、体験会が行われていました。

地元の中学生らが体験するのは、音楽やリズムに合わせて全身を動かす「リズムトレーニング」のクラブです。

「色んな友達作れそう」「部活なくなるのは寂しいけど…」

「教員のタダ働き」部活動が生みだした“歪み” 教員の負担軽減や少子化背景に『地域クラブ制』神戸市が完全移行 専門家「子どもの居場所づくりが大きな課題」
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(参加した生徒)
「友達が楽しかったって言ってたから参加してみました」
「これから色んな友達が作れて楽しくなりそう」
「部活なくなるのは寂しいけど、こういう形でやるのもありかな」

指導するのは、これまで地域の教室で教えてきた専門のトレーナーです。

(「リズトレ部」副代表 平良遥さん)
「“楽しく運動しましょう”をコンセプトにやっていますので、そこが(部活とは)違う」

部活と習い事の中間にあたる「地域展開」

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これまで中学生の放課後の過ごし方と言えば、主に「部活動」「習い事」でした。

今回神戸市で始まった「地域展開」=コベカツは、この2つの中間にあたり、麻雀・手品・釣り・料理・農業・DJ・ヨガ・ピラティス・英会話・フラダンス・ボルダリング・ミニ四駆・太極拳など、1000を超える多種多様のクラブが自治体に認定されています。

▼部活動  ⇒学校で活動・教職員が指導
▼地域展開 ⇒自治体の認定で学校利用(体育館・グラウンドなど)・補助金
▼習い事  ⇒学校外で活動・専門の指導員

神戸市の場合、地域クラブへの登録には営利目的ではないことや、中学生にふさわしい内容であることなどの条件が求められ、市が指定する研修を毎年受けることなども必須です。

地域展開の背景に「少子化」「教員の負担軽減」

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部活動の地域展開を進める背景には2つの理由があります。

1つ目が「少子化」。14年後には中学生の数が今の2/3となり、団体競技ではチームの維持が困難になる可能性があるのです。

(神戸市教育委員会 魚山純子さん)
「子どもの少ないエリアでは、1年間で5つのクラブがなくなったり、野球部で部員が4人しかいないとか、実際起こっている」

2つ目が「教員の負担軽減」。ある教員の月の残業は約90時間で、国が定める残業時間上限の2倍となっています。

<ある教員の就業時間(2019年度)>
▼平日
08:00~15:40 授業
~18:00      部活
~20:00      その他業務
▼土
9:00~12:00   部活

【部活動の歴史】国・学校・保護者の利害一致で“肥大化”

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私たちが当たり前だと思ってきた“部活動”とは何なのか?

名古屋大学教育学部・内田良教授によると、戦後すぐの時期、授業とは異なる「趣味・自主的な活動」として始まったということです。1950年代半ばまでは、全国大会は禁止されていました。

この部活動を“肥大化”させたのが、1964年の「東京オリンピック」。国がスポーツを推進し、法律で“学校”が推進拠点となりました。

また、1970~80年代に「学校の荒廃」が進み、授業以外で生徒を指導(コントロール)する手段として部活動が重宝されたのです。

▽コストゼロでスポーツインフラを整備したい国、▽生徒をコントロールしたい学校、▽無料or安価で体験・託児を享受したい保護者、この3者の利害が一致したと言えるでしょう。

「公立教員のタダ働き」日本の部活動が生み出した“歪み”

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一方、内田教授によると、こうした部活動をめぐる構造は“歪み”を生み出しました。

1つ目が「公立教員のタダ働き」。教員は労働時間に応じた残業代は出ない仕組みで、仮に全ての残業代を払った場合、約9000億円になると言います(2018年~2019年ごろの試算)。

2つ目は「全国大会主義」

“結果”を求めていない部活動希望者の受け皿の問題です。

3つ目は “自主的”と言いながら、内申書への影響を匂わせるなどして部活を「強制」する風潮です。

お金」「移動」「指導者」地域クラブ制が抱える課題

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ただし、部活動の地域展開にも課題はあると内田教授は指摘します。

1つ目が「お金」の問題。これまでの部活動は教員の“善意”で成り立っていましたが、地域クラブには会費が必要です。困窮家庭は部活動に参加する機会が得られるないおそれもあります。

2つ目は「移動」の問題。活動場所が学校外に広がるため、地方や過疎地はどうなるか、移動の安全は担保できるのかなどが懸念されます。

3つ目は「指導者」の問題。地域クラブ指導者の採用基準はなく、 “問題“を起こした指導者への対応などが課題となります。

神戸市では保護者から「始まったばかりで団体の実績や活動内容が分からない」といった不安の声も上がっています。

「部活の良い効果たくさんあった」子どもの“居場所”確保が課題

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部活動の地域展開は今後、全国で広がっていくのでしょうか?

専門家は、従来の部活動を評価しつつ、いかに子どもの“居場所”を確保するかが課題だと言います。

(名古屋大学・教育学部 内田良教授)
「やろうと思えば実は明日にでもできる。

でもそれで済まないのは、これまで部活が担ってきた教育的など含めてすごく良い効果がたくさんあった。放課後の居場所というのも含めて、子どもの居場所をどう作っていくのかが大きな課題」

(2026年9月1日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『山中プレゼン』より)

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