「スキマ時間に高収入」という言葉に誘われ、踏み込んだ副業の世界が、いつの間にか“地獄の副業”へと変わっていく──!? YouTubeやVTuberなど、気軽に始められる配信ビジネスだが、その裏側では、長時間配信や低収入、心無いコメントの数々で、精神崩壊寸前に追い込まれる人々がいる。夢の副業は、なぜ泥沼に変わってしまうのか?
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100日連続配信でも月収はお小遣い程度

 今やエンタメコンテンツのひとつであり、人気副業としても知られる“配信ビジネス”だが、その実態はけっして華やかなものばかりではない。多くのユーザーに親しまれ、コンスタントに収入を得られるのはほんの一握り。
残りの配信者は、膨大な時間と気力を吸い取られ、副業とは名ばかりのお小遣い程度の収入しか得られないという。

 今年の春から配信アプリでVTuberデビューを果たした藍さん(仮名・30代)も、「まさか、これだけ大変なのに稼げないとは思わなかった」と、疲れ切った表情でこう明かす。

「所属している事務所の人から、『毎日、決まった時間に配信しないとファンが付かないし、売上も少ないよ』と言われたんで、もう4ヶ月ぐらいは休まずに配信を続けているんです。でも、月の収入は千円から二千円ぐらい。いちばん稼いだ月でも、五千円には届きませんでした」

やめたいのに、やめられない

 藍さんによれば、本業の仕事を終え、家族の用事を済ませた夜10時か11時ごろから、毎日のように約2時間の配信を行っているという。それほどのハードスケジュールなら、自分のペースで休めばいいと思うが、そこにはなかなかやめられない心理が働いているようだ。

「一度、配信の中で『最近、疲れ気味だから、明日休もうかな』って、しゃべったことがあるんです。すると、数少ないフォロワーの一人が、『毎日がんばるっていうから応援してたのに』ってコメントしてきて。もし休んだらフォロワーが離れて、ギフト(投げ銭)も無くなるんじゃないかって。こんなに続けてきたのに、収入が減るって考えると、なかなか休めないんです」

 さらには、事務所に所属していることも、藍さんの大きな足かせになっていると話す。

「個人で配信するよりも、事務所に所属した方が取り分も増えて収入が多いと聞いたので所属を決めました。でも、新入りさんがデビューすると応援に駆けつけてコメントをしたり、先輩の記念配信があれば、身銭を切ってギフトを送らないといけない空気もあるし……。そういう些細なことも負担になっていますね」

卑猥なコメントを読まされ、精神は崩壊寸前

 収入は増えないのに、負担だけが膨らんでいく。そんな藍さんに追い打ちをかけたのは、ある男性リスナーとのやりとりだったと打ち明ける。


「配信プラットフォームの規約で、わいせつ表現は厳しく管理されているんですが、それでもルールを守らない人は一定数いるんです。いちばん多いのは、『真剣な悩みがありまして……』って、真面目な相談を装って下ネタをコメントしてくる人。たぶん、私が照れながらコメントを読むのを喜んでいるんだと思います。でも、本当に不快で……。たまに、その相談にほかのリスナーが乗っかって、隠語や伏せ字でもっと過激なことを書き込んで盛り上がってしまうんです。そうなると収拾がつかなくなる。もういいやって思って、私も本音で返してしまうこともあるんですが、そういう日は配信が終わったあと、ものすごく虚しくなるんです」

 こうしたストレスや連日の配信によって精神的に追い詰められ、不眠や動悸など、身体にも不調が表れはじめたという藍さん。まだ病院には通っていないが、「職場の人から、最近よく『疲れてない? 大丈夫?』と声を掛けられるようになった」と話し、近く受診することも検討しているという。

 では、藍さんのように体調を崩さないためには、稼げないとわかった時点で配信から身を引くのが賢明なのだろうか。そのひとつの答えとして、「配信はユーザーとの接点づくりと割り切ることが大切」と語るのが、YouTubeでガジェット紹介やゲーム配信などで1万人以上のチャンネル登録者を誇る、光のおじさん(@hikaoji)だ。

“配信鬱”はゲリラ配信で防ぐ

女性配信者「スキマ時間で高収入」の嘘。月収数千円のために毎日2時間“下ネタを読まされ続ける”苦悩
光のおじさん
 配信で思い詰めないために、光のおじさんがすすめるのは、あえて配信時間を固定しない“ゲリラ配信”だという。

「配信をやるときに気をつけているのが、配信時間を予告したり固定しないことです。私の場合は、夜中に料理やゲームをする配信が中心で、同時接続で見ているのも20人ぐらい。
広告収入としては数十円ですが、楽しく配信ができるし、ユーザーと交流する場作りとしては成功しているんじゃないでしょうか」

 また、誹謗中傷やマナーの悪いユーザーへの対処についても、ただ我慢するのではなく、相手を理解した受け答えが有効だと語る。

「たまに、心ないコメントや荒らし行為を受けることはあります。でも、そういう時は『こんな20人ほどしか見ていない配信に、わざわざそんなことを言いに来たんやね』と返します。それでもここに来るということは、実生活でよほどうまくいっていないか、もう色々限界なんだろうなと。そういう“かわいそうな人”として相手を見るようにします。こちらが怖がったり怒ったりせずに、そういう距離感で相手をすると、まず返事は返ってこないですね(笑)」

 副業として意気込む配信者と違い、光のおじさんの場合は、ゆるやかなファンづくりという感覚に近い。では、収益については一切期待していないのだろうか。

「たまに、自分の誕生日やハロウィンの日に合わせた配信をすると、ユーザーさんが気前よく投げ銭をしてくれることもあるんですけど、あえて『投げ銭なんかしなくていいんだよ』って呼びかけたりします(笑)。そういう雰囲気になって、観に来てくれる人が減るのがイヤなんで。収益については、配信の投げ銭で稼ぐというよりも、ガジェット紹介の動画の方でボチボチ稼げればいいかなという程度ですね」

投げ銭に頼らず続けていくには…

 これまでのアーカイブを確認すると、専門的な音楽機材やAV機器の紹介が中心で、1万回再生を超える動画も少なくない。ライブ配信でゆるく関係を築いたユーザーが、チャンネル登録者となり、動画の視聴者として定着していく可能性もある。光のおじさんにとって配信は、目先の投げ銭を集める場ではなく、長く付き合えるファンを育てる場となっているのだ。


 このように、自分のペースで気軽に配信を続ける光のおじさんは、「絶対に稼げるネタがない限り、事務所に入るのは慎重に考えたほうがいい」と、最後にこう忠告してくれた。

「一時期、そういう事務所の人たちが明らかに稼ぐ見込みが薄そうな人まで勧誘していて、その人たちは『時給が出るから、これで食っていけます!』とか息巻いていたんですが、もう全員やってないですね。あと、事務所に入っている知人のライブ配信に出たときに、数万円の投げ銭もあったんですが、配信後に話を聞いたら同じ事務所の配信者がしてくれたって聞いて、これじゃ続かないだろうなと思いました。だから、絶対に稼げるネタを持ってない人が事務所に入ったら、遅かれ早かれ疲弊してしまうでしょうね」

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 好きなことで稼げる。スマホ1台で人生を変えられる。そんな甘い言葉に惑わされず、配信を副業にするなら、大きな夢を見る前に、まず「どこで引き返すか」を決めておくことが大切なのかもしれない。

<取材・文/橋本未来>

【橋本未来】
主に関西圏で広告関係やマガジン系の仕事をしながら、映像の企画・構成なども手掛ける。芸人さんやちょっと変わった経営者さんなどの話を聞くのがライフワーク Twitter:@h_mirai1987
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