アリーナツアー、幕張メッセ公演の模様をお届け!
| 宇多田ヒカル「WILD LIFE」 | 2010.12.09(THU) at 横浜アリーナ |
2011年からしばらくの間、音楽活動を一時休止する事を発表してから約4ヶ月。宇多田ヒカルが12月8、9日に、休止前最後のライヴ【WILD LIFE】を行った。
地球に不時着した"くま型宇宙船"からおりてきたくまが頭の部分を脱ぐと、中にいたのは宇多田ヒカルだった! なんていう微笑ましいオープニング映像が流れた後、宇多田ヒカルはアリーナ・フロアの中央に設置された円形のセンター・ステージに現れた。360度ぐるりと客席に囲まれたステージにしたのは、今、この瞬間の宇多田ヒカルをみんなに全部見て欲しかったからだろう。
歌詞の一部を<みんな盛り上がる時間だ 横浜アリーナ>と替えて歌った「traveling」。<必ず帰るよ>というフレーズが心に響いた「Letters」。ピアノで弾き語りをした「SAKURAドロップス」、「First Love」。ストリングスと共に歌った「COLORS」。客席のみんなと合唱した「ぼくはくま」。たった2日間の【WILD LIFE】のために彼女が選んだ曲には、この12年間で彼女が放ったたくさんのヒット曲の他に、最新ベスト・アルバムに収録した「Hymne ? l'amour ~愛のアンセム~」やギターで弾き語りをしたビートルズの「Across the Universe」のカバーもあった。ひと際大きな声援が上がったのは、デビュー曲「Automatic」。歌い終えた宇多田ヒカルは「早いわ、12年って。私も色々あったけど、みんなも色々あったんじゃない? 干支で言ったら一周だもんね。一区切りって感じ。しみじみしちゃう」と言い、涙をこらえているような表情に。奇しくも12月9日は、12年前に彼女がシングル「Automatic/time will tell」でデビューした日。客席から届くたくさんのヒッキー・コールに、「私がおばさんになっても、ヒッキーって呼んでくれる?」と応え、みんなが再び「ヒッキー!」と叫ぶと、「じゃ、それを楽しみに、おばさんになったらライヴやろう!」と、言った宇多田ヒカル。様々な出来事があった12年間の最後の日をファンと共に過ごせたことを、宇多田ヒカルは決して忘れることはないだろう。「長い間、自分を見失っていた時期があって、自分を大切にしてこなかった」こと。「自分を大切に出来ないのに、他の人達を大切になんて出来ない」と気付けたこと。そして、「私の願いは、みんなも自分を大切に出来たら良いなと思ってます」と、今の気持ちをみんなにまっすぐに伝えていた宇多田ヒカルの表情は、とても清々しく、美しかった。
アンコール。彼女が最後に選んだ曲は「time will tell」だった。この曲にある<時間がたてばわかる>というフレーズは、まるで過去の宇多田ヒカルに対して、今の宇多田ヒカルが言ってあげているよう。どんな道を歩いてきても、時間が経てば全て過去になる。大事なのは過去を受け止めて、今を大切に生きる事。この日の「time will tell」は、そんな彼女の想いが注がれた歌のように聞こえた。
ライヴの最後、彼女はマイクをステージそでにそっと置いて、花道をゆっくりと歩き、深々とおじぎをして去った。マイクをみんなの目の前に置いたままにしたのは、歌うことを止めるからじゃない。いつの日か帰ってきてまた歌うからね、という約束のしるしだったんだと思う。
(取材・文/松浦靖恵)
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