アリーナツアー、幕張メッセ公演の模様をお届け!
| okuda tamio tour 2011-2012 ~おとしのレイら~ |
サポートミュージシャンの小原礼が還暦を迎えることから名付けられたという今回のツアータイトル。シンプルなステージセットに現れた奥田を含むメンバーも、楽しげに声援を送る観客も、どこかゆったりと、自分なりの楽しみ方で存在しているように感じられ、まさに大人な空間だなと思う。そんな中、ライヴは現サポートメンバーで作り上げた、2005年リリースのアルバム『comp』に収録されている「ギブミークッキー」からスタート。続く「ルート2」はかなり懐かしいセレクトだ。3曲終えたところで、最初のMCへ。
「どーもありがとー! 最初の3曲が上手くいったからもういいです。どうもありがとう、また来週!」。そんな、ならではな言い回しに客席のファンたちから歓声が上がる。「最終日ということで、最終日っぽくヘンにならないように(笑)頑張ります」と、これまた独特の発言(いつも通りにやります、という宣言だと解釈かなと)に全員ウケつつ、演奏が再開された。
4曲目は「夕陽ヶ丘のサンセット」。冒頭から感じていたのだけれど、この場のたたずまいというか、空気が実に心地いい。まるで、老舗のバーの一角にあるソファーに座って、美味しいお酒でも飲みながらそこのバンドの演奏を聴いているかのような満たされ方。派手だったり奇をてらったりするところはないけど、その分楽曲だったり演奏力だったり、ライヴを構成するアイテム一つひとつが上質であるがゆえの安心感と信頼感がステージには存在していると思った。
さて、中盤にさしかかると突然ツアーグッズの赤いパーカーを着込み、フードをかぶるメンバーたち。ここでは小原の還暦記念に自ら、かつて在籍していたサディスティック・ミカ・バンドの「ダンス・ハ・スンダ」、そして詞を還暦ネタに変えた「監獄ロック」を披露。とことん還暦をテーマにする辺り、ユニコーンでのライヴを彷彿とさせる。が、次の「手紙」で場内は一転、エモーショナルな熱を纏い出す。“淡々と”とか“渋めの”とか、そういう単語がイメージの先頭に立ちやすい彼だけに、こういった、感情をぐらぐら揺さぶるような歌には、よりハッとさせられる気がした。
「個人的な今日のピークはもう過ぎてます。あとは残ってるやつを淡々とこなすだけです」なんて、またもや腰の引けた前フリのあと、ステージは終盤へ突入。井上陽水のカバー「最後のニュース」や、ラストへの気分を高めてくれる「解体ショー」などを経て、「明日はどうだ」で本編は終了。ファンからの“アンコール”を受けて再び登場すると、改めてメンバーを紹介、そのまま最新シングル「拳を天につき上げろ」、さらに「近未来」を聴かせ、いったん引き上げた。そして迎えた2度目のアンコール、奥田と共に登場したのは何と…吉井和哉と斉藤和義。「ディスタンスでーす(笑)!」そんな奥田の紹介にもどこか所在無げなお二人。斉藤氏は当日声はかけられていたそうだが、吉井氏に至っては「フツーに観に来ただけ」なんだとか。そんな状況でも「大丈夫、多分始まったら終わるよ」とサラッと言いのける奥田。「じゃあ、ちょっとこのアルフィーで、ディスタンスを聴いて下さい」という言葉で始まったのは「息子」。始まってしまえばもう3人の息はピッタリで、すぐその世界に引き込まれてしまった。さらにバンドメンバーとの「さすらい」で幕を閉じたこの日のライヴ、「最終日っぽくない」を目指しながらも、フタを開けてみれば実に最終日らしい、スペシャル感に溢れたステージとなったのだった。
(取材・文/向出早苗)