しかし、小中学生向けに金融教育事業を展開する「にぐ先生」こと谷口達也さんは、著書『10歳の子どもには毎週1000円渡しなさい』(飛鳥新社)の中で、「少ないお小遣いを渡すと、使い切る癖がついて浪費癖につながってしまう」と警鐘を鳴らします。
「よかれと思って少額に抑えていた」親にとって衝撃的なこの説。なぜ少額のお小遣いが子どもを浪費家に育ててしまうのでしょうか。谷口さんに詳しく伺いました。
■「どうせ貯まらない」から使い切る……少額お小遣いの落とし穴
日本の小学生がもらうお小遣いの平均額は、月に1回「500円」が最も多いとされています(「子どものくらしとお金に関する調査」より)。しかし、谷口さんはこの「少額過ぎるお小遣い」こそが危険だと指摘します。
「物価が上がる今の時代、500円はファストフードやお菓子を少し買ったらすぐになくなってしまう金額です。少額過ぎると『どうせ貯まらない』ため、手元にあるお金を無意識に全て使い切る習慣がついてしまいます。これこそが、将来の浪費癖につながる原因なのです」
谷口さん自身も子どもの頃、1日30円のお小遣いをもらっていたものの、貯金箱は空っぽのままだったと言います。
「少ないお小遣いは節約志向にはなるかもしれませんが、計画的に『お金を管理する能力』は身につきません」
実際、今の20代の約3割が金融資産(貯金や株式、投資信託など)を保有していないというデータもあります。これはまさに、社会人になっても「手元にある給料を使い果たしてしまう習慣」から抜け出せていない状態と言えます。
■「渡して終わり」はNG。お金の管理には親のサポートが必要
では、お小遣いはどのように渡せばいいのでしょうか。
多くの親は「大事に使いなさい」「貯めなさい」と声をかけて渡しますが、そのまま使い道は子どもに任せきりになりがちです。
「問題集を渡しただけで勝手に学力が上がらないのと同じで、現金を渡しただけで勝手にお金を管理できるようにはなりません。本来は自分で管理できるようになるまで、親がサポートしてあげる必要があります」
学校では勉強を教えてくれる先生がいますが、家庭でのお金の管理を教えられるのは保護者しかいません。外部のセミナーなどで知識を得ることはできても、「実践」の場を作れるのは家庭だけだからです。
しかし、お金の使い方を知らないのは、親世代も同じなのかもしれません。金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査」(2022年)によると、「金融教育を受けたことがある」と認識している人の割合は、アメリカが20%なのに対し、日本はわずか7%。「金融知識に自信のある人」の割合はアメリカが71%、日本は12%という結果が出ています。
「お金のセンスは、親から子どもへ受け継がれやすい傾向があります。『貯蓄が大事。投資は危ない』という知識なら、現代に対応したマネーリテラシーの学び直しが必要です」
現在の日本では、食品や日用品をはじめ、さまざまな物の価格が上がるインフレが進んでいます。
まずは親自身が学び直しつつ、家庭でできるお小遣いのあげ方から見直してみるのがいいかもしれません。
■親子でお小遣いと向き合う「振り返り」の時間を
家庭でお小遣い教育を進める上で、大切なのは「教育者の意識を保護者が持つこと」だと谷口さんは言います。
「大切なのは、子どもがお金を何に使ったのかを親子で一緒に『振り返る時間』を設けること。定期的なお小遣いとは別に、文房具代など『必要な分のお金』を子どもに渡して自ら管理させる体験も効果的です」
お小遣いを単なる遊興費で終わらせず、親の見守りのもとで予算管理のトレーニングとして活用する——。親子でお金についてオープンに話し合うコミュニケーションこそが、子どものマネーリテラシーを高める第一歩となりそうです。
にぐ先生(谷口達也) プロフィール
「なにも売らないFP」。1985年、岐阜県生まれ。株式会社マネーシフト代表取締役。大手証券会社を2社経て独立後、現在のFP法人を設立。小中学生向けの金融教育事業「おやこde資産形成アカデミー」を展開。
この記事の執筆者: 結井 ゆき江
フリーランスの編集者・ライター。中学受験雑誌の編集者として勤務した後に独立。小学校で発達障害グレーゾーンの児童をサポートした経験から、教育分野を中心にライターとして活動する。









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