6~7月になると多くの小学校でプールの授業が行われます。夏休み中は誰もプールに入らなくなりますが、その間も先生たちがメンテナンスをしているのをご存じでしょうか?

今回は、プールのメンテナンスや学校プールにまつわるさまざまな課題について、現役小学校教師の松下隼司先生にお聞きしました。


▼(質問)夏休み中、学校のプールはどうしているのですか?

▼(回答)夏休み明けにもプールの授業がある場合は、休み中にも水質の確認などをします。

どういうことか、詳しく解説します。

■誰も入らなくても「毎日メンテ」が必要? 夏休みのプールから水を抜けない納得の理由
夏休み中のプールメンテナンスの有無は、夏休み明けにプール授業があるかどうかで変わってきます。メンテナンスが必要な場合は、主に体育主任や管理職が行います。

プールの水は放っておくとすぐ藻が生えて緑色になってしまうため、出勤したら塩素を入れたり濾過(ろか)器を回したりします。ただし、濾過器自体も回しっぱなしはよくないため、退勤前には止めます。基本的にはこの作業を毎日行っています。

ちなみに学期中の水泳期間は、上記のメンテナンスのほかに1~2週間に一度、水を入れ替えます。塩素を入れていても濁ってくるため、定期的な入れ替えが必要になるのです。

「夏休み中、誰も入らないなら水を抜いておけばいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、プールの水は学校の「防火水槽」の役割も兼ねているため、空っぽにすることはできないのです。

■「プール中止」はなぜ起きる? 酷暑と安全の間で悩む先生たちの苦悩
保護者世代だと「夏休みに学校のプールが開放されていた」という思い出がある方も多いかもしれません。
しかし現在、こうした取り組みはほとんど行われていません。

コロナ禍をきっかけに縮小した側面もありますが、それ以上に大きいのが「暑過ぎて入れない」という現実です。

現在、学校では環境省が発表する「暑さ指数(WBGT)」を基準にプール授業の実施を判断しています。この基準を厳格に守ると、通常の体育授業すらほとんどプールに入れない地域も少なくありません。

実際、過去にシーズン中1回しかプール授業ができなかった年もありました。

そこで、各学校ではルールは守りつつも、例えば1回の授業時間を通常よりも短くしたり、プール開きの時期を前倒し、もしくは後ろ倒しにするなどの対策を取っています。

それでも、今度は雷注意報や台風などもあるので本当に難しいところなのですが……。私だけに限らず、多くの先生たちは「子どもたちがプール授業を経験する機会の確保」と「安全面の両立」に悩んでいると思います。

■毎年のように起きる“プール出しっぱなし事故”の構造的理由
数年に一度、「プールの水を出しっぱなしにして数十万円の損害が発生した」というニュースを目にします。報道を見るたびに「自分も気をつけなくては」と気持ちを引き締めています。

こうした事案にはさまざまな原因がありますが、個人的には「学校設備の扱いにくさ」も関係していると感じます。

学校のプールは、ご家庭のお風呂のようにボタン1つで水をためられるものではありません。


栓を閉めるにしても、まずマンホールのようなふたを開け、排水口を棒状のハンドルで力いっぱい回す必要があります。回し切っても「カチッ」などの手応えや合図はありません(設備によってはあるかもしれませんが)。

プール掃除がある日は、その日の昼ごろからプールの水を抜き始めます。水が入ったままだと掃除できないからです(暑さ対策のために子どもたちがプールに入れない日が続いても、プール掃除は予定通り行うことが多いです)。

水の量が多く抜き切るまでに時間がかかるため、学期中は水がほとんどなくなった放課後に掃除を行います。そして掃除が終わったあと、プールの栓を閉めて水をため始めます。

しかし、水をためるのは抜くとき以上に時間がかかります。ずっと見張っているわけにもいかず、たまりきったか確認できるのは退勤した翌朝ということもあり得ます。そのタイミングで「全くたまっていない(栓がしっかり閉まっていなかった)」と気付くリスクが存在します。

あとは、プールが学校の敷地内のどこにあるかも重要なポイントです。

例えば、職員室や教室から見えやすい場所にあれば、誰かしらが異変に気付いてくれるかもしれません。

しかし最近は屋上プールも増えており、そうなるとわざわざ見に行くのは担当職員のみとなってしまいます。
多くの人の目に入る場所に位置しているかどうかも、出しっぱなし事故を防ぐ大きな要素だと感じます。

とはいえ、これらの問題のために設備改善をするのは難しいのが現状です。現在はどの学校でも対策を立て、複数人で確認を行った上で対応されていると思います。

松下隼司さん
大阪府公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。令和6年版教科書編集委員。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクール文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門優秀賞などの受賞歴を持つ。新刊『がっこうとコロナ』(教育報道出版社)など著書多数。Voicyで『しくじり先生の「今日の失敗」』を発信中。

この記事の執筆者:大塚よう子 プロフィール
フリーランス編集・ライター。子育てや教育、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。
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