受験の天王山とされる小6の夏、「今が踏ん張りどころ」というプレッシャーも重なり、心も体もクタクタになってしまうこともあるでしょう。忙しさと疲れで心に余裕がなくなると、つい子どもに強くあたってしまうことも。わが子を大事に思うからこそ空回りしてしまう、そんな悪循環に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
「どうすれば、親も無理なく夏を乗り切れるのか」。この問いに、早稲田アカデミー・駿台などで30年以上受験指導に携わる西村創先生が答えます。忙しい毎日の中で心の余裕を取り戻すヒントを、一緒に整理していきましょう。
■夏期講習の毎日に追われ、親の余裕がなくなってきています
【CASE】小学6年生・男子
真面目でコツコツ取り組むが、少しマイペースで気が散りやすい一面もある。
【今回のお悩み】
ペンネーム:harunomamaさん(小学6年生 保護者)
小6の夏休み、早稲田アカデミーの夏期講習が始まり、毎日やることに追われています。お弁当の準備、仕事、送り迎え、学習のサポート……。休む間もなく1日が終わり、自分のことを後回しにするのが当たり前になって、少しずつ余裕がなくなっているのを感じています。
一方で、息子は疲れて帰ってくると、すぐに机に向かえずぼーっとしてしまう日もあります。
頑張っている子どもを支えたい気持ちはあるのに、自分の余裕のなさからうまく関われない。このままではいけないと思いながらも、どう関わるのがよいのか分からず悩んでいます。
■受験生の親が子どもとうまく関われなくなる理由
今回寄せられたお悩みのように、焦りや不安から「子どもとの関係がギクシャクしてしまう」と悩む保護者の方は非常に多いものです。子どものサポートがしんどくなり、上手なコミュニケーションがとれなくなったときは、まずその「原因」を客観的に整理してみましょう。大きく分けると、次の2つのタイプに当てはまることが多いです。
▼タイプ1:膨大なタスクに追われ、心に余裕がなくなるからお弁当作りや塾の送迎、日々の学習管理に体調管理……。受験生を持つ親の日常は時間に追われがち。分刻みの生活の中で心のキャパシティが限界を迎えると、普段なら気にならないわが子のちょっとした態度に、ついイライラをぶつけてしまうこともあるでしょう。
▼タイプ2:「今は大事な時期」というプレッシャーで、気を抜けないから「絶対に失敗できない」という思いが強いほど、少しでもペースを緩めることに恐怖や不安を感じてしまいます。24時間ずっと気が張っているため、自分の理想通りに動かない子どもを見たときに感情が爆発し、強く当たってしまう悪循環に陥るのです。
どちらのタイプに近いかで、見直すべきポイントや対策も変わってきます。
■今の関わり方で大丈夫? 見極めるための3つの視点
「なんだか最近うまくいかない」という日々の違和感は、親御さん自身が知らず知らずのうちに限界を迎えているサインかもしれません。まずは現在の親子関係やサポート環境について、次の3つのポイントを見直してみましょう。
▼親の負担が一人に偏っていないか受験のサポートを全て一人で抱え込んではいませんか? 送り迎え・学習管理・進捗(しんちょく)確認のうち、今いくつを自分だけで担当していますか? ひとつだけでも、パートナーや外部の人に渡せるタスクがないか考えてみましょう。
最初に夫婦で役割分担を決めた結果、どちらか一方に負担が偏ってしまうケースはよくあります。「時間に余裕がある方がやる」くらい、臨機応変に助け合える環境づくりを意識してみましょう。
▼子どもに当たる場面が増えていないか日々の会話の中で、わが子への言い方がトゲトゲしくなっていませんか? 「なんでできないの!」「早くしなさい!」といった感情的な言葉、この1週間でどれくらい口にしましたか? 「言い過ぎたかな」と思ったら、まずは一呼吸置いて、自分の心理状態を振り返ってみましょう。
▼子どもの状態を見られているか朝起きられない、口数が減った、表情が暗いなど、一番大切な「子どものSOS」が見えなくなっていませんか? 1日5分でいいので、受験や勉強に関係のない、ほっととできる会話の時間を作ってみてください。例えば、「今日の晩ごはん何がいい?」といった何気ない一言でも構いません。
最後まで走り切るためには、親子ともに無理のない「持続可能なサポート体制」をつくることが何より大切。「小6の夏だから必死に頑張って当然」という前提を一度外し、まずは家庭内の雰囲気を健全に保つことに目を向けましょう。
■親の負担をラクにする! 今日からできる「引き算」の受験サポート
では、具体的にどのようにして心のゆとりを取り戻し、家庭内の雰囲気を整えていけばよいのでしょうか。ここからは、親御さんが無理なく伴走を続けるために今すぐ実践したい3つのアプローチを紹介します。
▼「全部やる」ではなく、「やることを絞る」タスクの多さにもプレッシャーにも、効果的なのが「やることを絞る」引き算の思考です。「あれもこれも完璧にこなさなきゃ」と思っていると、親子ともに追い詰められてしまいます。
受験後期は、塾から出される課題をこなすだけでも精いっぱいなはず。これが最低限だと思っていることをやり切るのも難しいでしょう。そんなときは、「最低限これだけはやる」という水準のバーを下げてください。
小6の夏であれば、「塾の授業の復習を最優先として、宿題は全部やらなくていい」と決めるのもアリです。具体的な目安としては、迷わずスラスラ解けた問題は繰り返さなくてOK。逆に、時間をかければ解ける問題や、時間をかけても解けない問題は、優先的に残しましょう。「間違えた問題の解き直し」を最優先にする、というシンプルな基準で十分です。「これはやらない」と決めることが、心の負担をグッと軽くするコツです。
▼学習面では塾を頼り、ペースメーカーに徹する親御さんが勉強を見てあげている場合には、もっと塾を頼ってもよいでしょう。もちろん、全て塾にお任せというわけにはいきませんが、勉強のつまずきは「塾の講師に聞いてみて」と手放してもよい部分です。
学習のペース配分は親の役目・勉強を教えるのは塾の役目、というように塾を頼れる部分は頼ってください。それだけでも、サポートに割く時間や精神的な負担は軽くなるはずです。
子どもへの声かけは、「勉強をどこまでやるか」といった計画と進捗確認のみに。「もっと頑張りなさい」と言いたい気持ちが生まれても、ペースメーカーに徹することを意識しましょう。
▼生活を回す仕組みを軽くする日々の家事の「仕組み」をスリム化するのもおすすめです。夏期講習中は昼食・夕食の2食分の弁当が必要になる日もあり、負担はいつも以上に大きくなります。「手作りにこだわらない」と決めるだけでも気持ちは軽くなるもの。市販のお弁当やコンビニのおにぎりを取り入れる日があってもいいですね。塾の送迎はお父さん・お母さんで曜日ごとに分担するなど、負担を減らせる方法がないか考えてみましょう。
■一歩立ち止まり、無理なく続けられる環境を整えて
中学受験では、子どもだけでなく親のメンタルケアも重要なカギを握ります。
まずは、1日のうちに短時間でもよいのでホッと一息つける時間を確保してください。受験一色になりがちな時期だからこそ、あえて受験から離れて子どもとコミュニケーションをとる時間をつくることが大切です。
優先すべきは、ただがむしゃらに頑張り続けることよりも、今ここで親子が笑顔でいられる「無理なく続けられる環境」を整えること。受験という長期戦を最後勝ち抜くためにも、頑張りの「引き算」をすることを心がけてくださいね。
※塾選調べ
対象:中学受験をする予定の子どもをもつ保護者50名にアンケートを実施
期間:2026年03月18日~23日実施
この記事の執筆者:塾選ジャーナル編集部
『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
この記事の監修者:受験指導専門家・西村 創 先生
早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wingsなどで指導歴25年以上。新卒入社の早稲田アカデミーでは、入社初年度に生徒授業満足度全講師中1位に輝く。駿台ではシンガポール校講師を経て、当時初の20代校長として香港校校長を務め、過去最高の合格実績を出す。河合塾Wingsでは講師、教室長、エリアマネージャーを務める。現在は、セミナー講演や書籍執筆、「にしむら先生 受験指導専門家」としてYouTube配信(チャンネル登録13万人超)などを中心に活動。
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