今年4月に放送された『最強大食い王決定戦2026春』(テレビ東京)で優勝した“大食いターミネーター”Ryu。本インタビューでは選手の身体づくりに関して、はたまた大食いという競技そのものへの認識について、新王者から大食い界に提言してもらっている。

過激にも思える彼の激白から浮かび上がってきたのは、過去のレジェンドへの敬意と郷愁、そこで革命戦士のスピリッツである。

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筋肉と大食いの関係性を語る肉体

――今まで、日本の大食い界には「ちっちゃくて痩せ型の人が大きい人を倒す」というイメージがありました。しかし、今大会は本業がパーソナルトレーナーでマッチョな肉体のRyuさんが優勝しています。大食いとマッチョは両立できるものなのでしょうか?

Ryu:大食いを2年間やってきた僕の感覚としては、早食いには筋肉があったほうがいいです。

男性と女性で比較すると、食べるのは男のほうが早いじゃないですか? 嚥下力や喉の周りの筋力など、大食いにはフィジカルが重要です。だから、海外の大食い選手にはマッチョ体型が多いです。つまり、自分の感覚的にも統計的にも答えは出ている。

一方、大食いで痩せ型の人が強い理由もあります。内臓脂肪が多かったりむくんでいる人は、食べられる隙間に限界があるんです。自分の骨格のなかで胃拡張を限りなく限界まで持っていくとしたら、隙間は多いほうがいいです。

――昔、テレビ番組で食後のギャル曽根さんの体内を調べたら胃の拡張が体中に広がっていて驚きました。そういう意味で、太っていると胃拡張を脂肪が邪魔しそうです。

Ryu:実際、そうだと思います。
あと、大食いって太る食事をしているわけじゃないですか? もともと太っている人がそのまま食べ続けていたら、典型的に死にますよね(笑)。

――(笑)。

Ryu:健康を害するし、体へのダメージも大きい。オーバーカロリーのままやっていける活動でもないと思うので。

体調管理にも独自の哲学が

――Ryuさんは食事制限などをされているわけですか?

Ryu:僕は大食い以外、基本的に断食です。今日も前の食事から33時間ぐらい食べていないです。

――本当ですか!

Ryu:見た目をつくっておかないと説得力が出ないし、今の大食い界にはかっこいい人が少ない。だから、誰も憧れないと思うんです。

――過去の大食い界を振り返ると、小林尊さんはかっこよかったです。

Ryu:体脂肪が少ないほうが食べられるし、小林さんも僕も筋肉がある。大食い選手として突き詰めると、強くあるために体調をキープしておかねばならない現実にぶち当たります。

――脂肪が胃拡張を邪魔するという話がありましたが、筋肉はOKですか?

Ryu:「筋肉がついたら食べられなくなる」という定説もありましたが、それを主張する人たちのなかで僕より筋肉がある人は見たことがありません。筋肉のない人たちがそれを言っているので「筋肉をつけて試したうえでそれを言ってるのかな?」と、疑問なんですよね(笑)。


美味しく味わう感覚を忘れない心

――今大会は50歳になったアンジェラ佐藤さんの活躍も印象等でした。実年齢を明かしていないRyuさんに質問するのもアレですが、年齢を実感することはありますか?

Ryu:「なんか胃もたれするな」とは、めちゃくちゃ思うようになりました(笑)。

――YouTubeチャンネルで行われたロシアン佐藤さんとの対談で「30歳を超えたら油がきつくなってきた」とRyuさんがおっしゃっていて、「その辺、我々と同じ感覚なんだな」と思いました。

Ryu:もともと僕はトレーニングで強くなった側の人間なので一般の人の感覚はすごくわかるし、「食べたくない」「無理だ」と思うこともあります。そこを、根性や気合で強引に持っていってるだけで。

あと、普通の人と同じように僕にとって「腹減った」という感覚はすごく大事です。自分は常に食べものが好きで、おいしく食べることを忘れたくない。それが結果、続けたいという意欲にもつながってくるし。大食いファイターには食べ疲れしちゃっている人も多いので。

――「腹減った」という感覚といえば、小林尊さんは「腹減った」「満腹だ」という感覚がなくなってしまったと告白されていましたね。

Ryu:ああ……、はい。

――大食いは体を酷使する競技なのだと、改めて実感しました。Ryuさんも肉体を摩耗しながら競技に臨んでいるという思いはありますか?

Ryu:本気でやる人は肉体を摩耗していると思います。
ものすごく内臓が圧迫されるし、普通に危ないと思います。だからこそ、見返りのある業界にしていきたいんです。

肉体を摩耗して挑む競技ゆえ、危険はつきもの

――大食いは下手すると生死に関わる競技だと思います。

Ryu:業界内でも、その認識がもっと深まってほしいと思っています。食べにくいものや詰まりやすいものを胃や食道に延々入れたり、そんなの明らかに危ないじゃないですか。激熱メニューを食べたら食道まで焼けちゃうわけじゃないですか。「それは大食いではなく、一体なんの競技なのか?」と思っちゃいますし。「激熱王」だったらわかるんですけど(苦苦)。

事実、海外のフードファイトは食べやすいメニューが出ることが多いです。そのへんの認識が深まっていくと、大食いは見せものじゃなくなってくると思うんですよね。

――完全なバラエティだったら、『正解は1年後』の“デカくてマズいラーメン”もアリでしょうけど。

Ryu:でも、僕が見せたいのはそういうのじゃない。やっぱり、「どれだけ多く」「どれだけ早く」食べられるかということに尽きると思うので。


時代が変わっても、“最強”であり続ける二人

――今回の『大食い王』は「現役ファイターが過去のレジェンド記録を破る」というテーマが前面に押し出されていました。しかし、ラーメン対決を例に挙げると、過去の大会では「スープ完飲」が必須だったルールが今は「スープを飲まない」に刷新されています。つまり、今と昔の記録を単純比較することはできません。

Ryu:できないですね。

――番組は「今の大食いは昔よりレベルが上がっている」としきりに煽っていましたが、実際にレベルが上がったと実感していますか?

Ryu:全体的な平均値は上がっていると思います。昔の大食いって上位と下位の差がめちゃくちゃ激しいんですよ。ジャイアント白田さんと小林尊さんがずば抜けているだけで、ほかの人とは差が開いている感じです。このお二人は、もう間違いない。僕はものすごくリスペクトしています。

特に、小林さんは僕のことを評価してくれていて、先日もアンジャッシュ・渡部(建)さんと行った対談をYouTubeで見たら、「注目している選手はRyu君」と名前を挙げてくれていました。実は、『大食い王』優勝後に京都のホテルのバーで個人的にお祝いしてくれたんです。

レジェンドから勝利に対する執念を学んだ

――小林さんは、自分と似た匂いをRyuさんに感じたのではないでしょうか。

Ryu:僕の立場から言うのはおこがましいですが、小林さんのスピリットが大好きです。大食いへの臨み方というか。


自分から見て、それまではビジネスのために大食いしている人が業界内に多いイメージでした。でも、小林さんはフードファイトで負けたくないから、好きだから、ライバルがいるから……という思いで続けてこられた方だと思います。

――我々ファンが抱くイメージも、大食い界の歴史を代表するファイターは白田・小林の二人で決まりです。そして、そこにRyuさんも加わるのでは……という期待感もあります。Ryuさんにもその思いはありますか?

Ryu:それは見る人が決めることだと思います。ただ、客観的に見てもルール次第では全盛期のお二人に今の僕は勝てると思います。特に、スピードに関しては負けない。もちろん、ルールによっては僕が負けると思います。

人生を賭けて挑む「大食い界の再建」

――何度も言いますけど、Ryuさんからは小林さんと似た匂いを感じます。そして、小林さんがアメリカへ行ったのはRyuさんと同じ思いがあったのでは? という気がしています。「今の日本の状況ではダメだ」「じゃあ、本場へ行っちゃおう」という思いから、小林さんは渡米したのかな? と思ったんです。

Ryu:同じかどうかはわからないですが、似た感覚はあったと思います。
でも、一つ違うのは、僕は日本人なのでやっぱり日本の大食いを盛り上げたいです。

小林さんが海外に渡ってフードファイトを盛り上げたのは快挙ですし、100%のリスペクトがあります。でも、僕としては海外に行くのではなく「日本の大食いがこのまま廃れていく前に盛り上げたほうがいい」と思っています。

僕にとって、大食いはロマンの活動なんです。人生一回きりだし、どうせやるんだったらお茶の間であれだけ盛り上がっていた大食いを復活させてみたい。

――やっぱり、現役の選手たちには2000年代の大食いの記憶が強く残ってるわけですね。

Ryu:そうですね。そこまで自分の心と気持ちに刻んでくれたのだから、すごいことだと本当に思います。

<取材・文/寺西ジャジューカ>

【寺西ジャジューカ】
1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス、ドラマ評。『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 完全崩壊の真実』『証言「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実 』『証言 長州力 「革命戦士」の虚と実』(すべて宝島社)で執筆。
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