縦型洗濯機よりも高額なイメージのある「ドラム式洗濯機」。しかし水道代や光熱費を抑えられるモデルも多く、日々のランニングコストは低いと感じる人も多いでしょう。


では、実際にどのくらい使えば縦型との本体価格の差を取り戻せるのでしょうか。本記事では、10年使用した場合のトータルコストを比較します。

■ 「ドラム式は高い」ってイメージ、もう古い?
ドラム式洗濯乾燥機は、ここ数年で一気に価格が下がりました。これまではパナソニックや日立などの国内大手メーカーが20万~35万円ほどで販売するのが主流でした。しかし2024~2025年にかけて、市場の常識を覆す動きが起きています。

そのきっかけは、低価格かつ省エネなドラム式洗濯乾燥機の登場です。ドラム式の乾燥方式には、大きく2種類あります。

ヒートポンプ乾燥方式は省エネ性能が高い反面、本体価格が高め(従来は30万円以上が当たり前)。一方のヒーター式は購入価格こそ20万円前後と安いものの、電気代が割高になりやすいという特徴があります。

ところが、ニトリが2024年11月に10万円を切るヒーター式ドラム式洗濯乾燥機を発売。さらに2025年10月には、ヒートポンプ乾燥を搭載したモデルを14万9900円で投入しました。

ハイセンスも同価格帯の商品を展開しており、「15万円以下でヒートポンプ式が買える時代」が到来しています。
「ドラム式=高い」という考え方は、すでに過去のものになりつつあります。

なお、乾燥機能が十分でなく本体も高価な縦型洗濯乾燥機は、今回の比較対象から除外しています。

■【コスト比較】4モデルで検証
光熱費の節約で本当に元が取れるのか、実際に販売されている4モデル(ドラム式3製品・縦型1製品)の本体価格と10年間のランニングコストの合計で比較します。計算の条件は以下の通りです。

・電気代の目安単価:31円/kWh(家電公取協・2022年7月改定)
・水道代の目安単価:262円/m³(日本電機工業会調べ)
・毎日1回使用を前提に、10年間で計算

※実際の電気代・水道代は地域や電力会社との契約によって異なります。

▼A. パナソニック NA-LX129E(高級ヒートポンプ式ドラム洗濯機)最新のヒートポンプ式フラグシップモデル。おまかせコース(標準乾燥)の消費電力量は800Wh/回、使用水量は約65L/回です。

・本体価格:約30万円
・電気代:約25円/回
・水道代:約14円/回
・1回の光熱費合計:約39円
・年間光熱費(毎日使用):約14235円
・10年間光熱費:約14万2350円

▼B. パナソニック NA-SD10UBL(ヒーター式ドラム洗濯機)コンパクトなSDシリーズ。乾燥はヒーター式で、ダウンジャケットコース・自動投入・スマホ連携を搭載しています。消費電力量は1980Wh/回、使用水量は約65L/回です。

・本体価格:約19万4000円
・電気代:約61円/回
・水道代:約17円/回
・1回の光熱費合計:約78円
・年間光熱費(毎日使用):約28470円
・10年間光熱費:約28万4700円

▼C. ニトリ ND120HL1(ヒートポンプ式ドラム洗濯機)2025年発売のヒートポンプ乾燥搭載モデル。実際はヒートポンプ+補助ヒーターのハイブリッド式。
標準コースの消費電力量は900Wh/回、使用水量は約65L/回です。

・本体価格:約15万円
・電気代:約28円/回
・水道代:約17円/回
・1回の光熱費合計:約45円
・年間光熱費(毎日使用):約16425円
・10年間光熱費:約16万4250円

▼D. パナソニック NA-FA10K5(乾燥機能なし縦型洗濯機)洗濯・すすぎで使い、乾燥は自然乾燥。消費電力量は50Wh/回、標準使用水量は103L/回です。

・本体価格:約9~10万円(2026年4月時点の市場参考価格)
・電気代:約2円/回
・水道代:約27円/回
・1回の光熱費合計:約29円
・年間光熱費(毎日使用):約10585円
・10年間光熱費:約10万5850円

■【比較結果】10年間のトータルコストは?
4モデルを10年間使用した場合の本体価格+ランニングコストの合計は画像の通りです。
高額な「ドラム式洗濯機」10年使えば元は取れる? 縦型洗濯機との総コストを徹底比較!
4モデルの本体価格とランニングコストの比較 画像:筆者作成

まず、縦型(D)と比べると、ドラム式は10年間で11万~28万円ほど総コストが高くなります。電気代が極めて少ない縦型は自然乾燥が前提のため、光熱費の節約だけでドラム式の本体価格差を埋めるのは難しいと言えます。

次に、ヒーター式(B)とニトリのヒートポンプ式(C)を比べると、Cの方が本体価格で約4万円安く、年間光熱費も約1万2000円安い結果になります。10年間の光熱費差額だけで約12万円の節約になるため、ランニングコストの面ではヒートポンプ式が明らかに有利です。

パナソニックのヒーター式とヒートポンプ式(A)を比較しても同様で、本体が安いヒーター式はランニングコストが高く、10年トータルではヒートポンプ式の方が安くなります。ヒーター式ドラムを選ぶ理由は、デザインやコンパクトさ、特定の機能など、コスト以外の部分に限られてきます。

■高級なドラム式洗濯機を選ぶ意味はある?
パナソニックの高級ヒートポンプ式(A)とニトリのヒートポンプ式(C)を比べると、本体価格に約15万円の差があります。10年間の光熱費差額は2万円ほどに過ぎないため、この差額はコスト回収という観点では取り戻せません。


では、その15万円は何に払っているのか。答えは「快適性・時短・仕上がり品質・信頼性」です。高級モデルの強みは主に4つあります。

・仕上がり精度の高さ
ウールやデリケート素材への対応力、細かな温度制御、衣類の縮みにくさなど、高級機ならではの洗濯・乾燥品質が魅力です。多彩なコースがあり、高価な衣類も安心して任せられます。

・スマホ連携・自動化機能
アプリによる遠隔操作やAI自動コース選択、洗剤・柔軟剤の自動投入など、家事の手間を細かく削減できます。

・静粛性
深夜や早朝でも運転音がほとんど気にならないレベルの静音性は、マンションや隣家が近い環境で大きなメリットになります。

・メンテナンスのしやすさ
フィルターや槽の自動清掃機能を備え、長期使用でも手間が少なく済みます。

また、パナソニックのヒートポンプ乾燥機は2005年に世界で初めて製品化されて以来、20年以上の実績があり、その信頼性も購入の根拠になります。毎日の家事を静かに・確実に・少ない手間でこなしたい人には、高級機を選ぶ意味は十分にあります。

■乾燥機能の使い方で、最適な選択は変わる
ドラム式の本当の価値は「光熱費の節約」ではなく、「洗濯から乾燥までをまるごと自動化できること」です。「洗う・干す・取り込む」という手間を省きたい人には、コスト以上のメリットをもたらします。
目的別の選び方をまとめると、以下の通りです。

・コスパ重視・光熱費も抑えたい → ニトリ ND120HL1(ヒートポンプ式)
本体15万円でヒートポンプ乾燥・洗剤自動投入・大容量を実現。光熱費もヒーター式より安く、現時点では最もバランスのいい選択肢です。

・長く安心して使いたい・衣類の仕上がりを重視 → パナソニック NA-LX129シリーズ
本体価格は高めですが、静音性・仕上がり精度・スマホ連携の完成度はトップクラス。高価な衣類を自宅で洗いたい人や、クリーニング代の節約も見込む人には合理的な投資です。

・設置スペースが限られている → パナソニック NA-SD10UBL(ヒーター式)
幅600mmのコンパクト設計で、置き場所が限られる家庭に向いています。乾燥を毎日使うと光熱費が高めになるため、洗濯メインで乾燥は週数回という使い方なら、トータルコストは許容範囲に収まります。

■干すのが苦でないなら、縦型のままでも十分
縦型洗濯機は本体価格が安く、10年間のトータルコストを抑えやすい選択肢です。洗浄力も高く、花粉症などで外干しが難しい時期だけ衣類乾燥機(7万~8万円程度)を組み合わせる方法も、改めて注目されています。

今回の試算では、ニトリのドラム式と縦型洗濯機を比べると10年間で約11万円の差が生じました。これを「洗濯物を干す・取り込む時間」と換算すると、1回30分×10年(約3650回)で約1825時間。1回あたりの乾燥コストに直すと、縦型での「手干し」は約60円に相当します。


一方、ニトリのヒートポンプ式ドラムの乾燥コストは1回約45円、パナソニックの高級モデルでも約42円です。時間の価値を考えれば、十分に元が取れると言えるでしょう。

乾燥機能をほぼ毎日使うなら、ドラム式は十分に元が取れる可能性があります。ただし、乾燥を使わず干すスタイルであれば、光熱費の差額だけで元を取るのは難しいのが実情です。

ドラム式を選ぶかどうかは、「いくら節約できるか」ではなく、「家事の手間をどこまで省きたいか」で判断するのが正解です。

文:コヤマ タカヒロ(デジタル・家電ライター)
家電とデジタルガジェットをメインに雑誌やWebなどさまざまな媒体で執筆するライター。執筆以外に監修やコンサルティングなども行っており、企業の製品開発、人材教育、PR戦略に関するアドバイザーなども務める。家電のテストと撮影のための家電スタジオ「コヤマキッチン」を用意。All About デジタル・白物家電ガイド。
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