遠方で一人暮らしとなった親のことは心配だけれど、自分にも家庭や仕事があり、なかなか思うように見にいけない。そんな人は多いだろう。
知らないうちに老いていく親をどうフォローすればいいのだろうか。

■1年ぶりに実家へ行ってみたら
3年前に父が亡くなり、母が一人暮らしになったというエリカさん(43歳)。

「でもまだ70代になったばかりだし、電話のやりとりでは元気そうだった。だから安心していたんです」

実家までは新幹線を使っても3時間ほどかかる。フルタイムで共働き、しかも高校生と中学生の子どもをもつ身としては、なかなか母の様子を見にいくこともできなかった。

昨年、1年ぶりに実家を訪ねてみると、なんだか様子がおかしい。家の中は暗く、片づいていた部屋もなんだか乱雑になっている。冷蔵庫や冷凍庫にも食材があまりない。

「一人になったら料理も面倒だし、最近はスーパーの総菜もおいしいからねと母は言い訳のように言っていましたが、ふっくらしていた母が激やせしている。ちゃんと食べてないんでしょと言ったら、食べてるよとうるさがっていました」

■母の食生活を知って
その日は泊まる予定だったので、夕飯をどうするつもりなのかと見ていると「近くにあるおそば屋さんに行こう」と母が言い出した。

そば屋に行って、母がトイレに行ったすきに店の人に聞いてみると、週の半分は来ているという。いつもざるそば1枚食べて帰っていくとか。
あとの日はスーパーの総菜なのだろうかと思いつつ、翌日、そのスーパーへも母を連れていってみた。

「いつも何を買うのと聞くと、その日によってとモゴモゴしている。店の人が『いつもの、安くなってますよ』と話しかけてきて、母がいつも買っているのはナムルだと分かりました。どうやらナムルでごはんを食べているだけみたい。たまにコロッケなどを買っているようでした」

これじゃ激やせするに決まっているとエリカさんは腑に落ちた。

■実はうつ状態だった母
本来は社交的で外に出るのも好きだった母が変わってしまったきっかけは、やはり父の死だったようだ。

「母にじっくり話を聞いたら、自分のために料理などしたことがない、いつも家族のためにしていた、だから父がいなくなって料理する意味がなくなった。年金が少ないため、外に出なければお金を使うこともない。そう思っていたら、だんだん出るのがおっくうになった。それでも歩かないと足が弱る、だからそば屋やスーパーへは行くことにしているけど、何かを食べたいとも思わないと。1泊の予定をもう1泊延ばして、翌日、医者に連れていきました。『うつ病とまではいえないかもしれないけど、うつ状態であるのは確か』と言われました。
なんとかしなければと思ったけど、どうしたらいいか分からなかった」

冷蔵庫と冷凍庫に食材を詰め込んでいったん自宅に戻ったエリカさん。母の住む自治体に連絡し、とりあえず要介護認定をしてもらえるよう申請した。

栄養失調とうつ状態という医師からの報告書も出て、結果的に母は要支援2となった。デイサービスに行けるようになったが、母は「他人と一緒に何かをするのは嫌」と最初は拒否ばかり。

「でも担当になったケアマネがいい人で、時々母を訪ねては何かしたいことはないのか、困っていることはないのかと親身になってくれた。それで母も徐々に心を開くようになったんです」

■電話だけでは分からないこと
現在、母は週に2回、運動に特化したデイサービスに通っている。顔見知りになった人たちとおしゃべりするのも楽しいらしい。

「私は知らなかったんですが、以前、母は些細なことから近所の人と揉めたことがあって、人間関係でも少し追いつめられていたみたい。でもデイサービスで知り合いができたことで、他人と話すこともできるようになった」

離れて暮らしていると、親の日常生活までは目が届かない。事細かに聞くような時間もない。それでも心配なら、やはり様子を見にいって、親自身の精神状態や環境をチェックすることは必要だとエリカさんは言う。

「親は子どもには迷惑をかけたくないと言いますが、黙って我慢していることで、かえって面倒なことになるわけですよ。
それを親にはちゃんと認識してもらいたいですね。電話だけだと分からないことは多いと思う」

完全に自立した生活は難しい、だが介護というほどではない。そんな状態であっても、介護保険は役に立つ場合が少なくない。

「たんまりお金があれば、高級老人ホームに預けられるんでしょうけど、私たちには有料施設はとても無理。だったら自分が動いて手続きするしかないんだろうなとよく分かりました。こうなると私たちはどうするか問題が出てくるよねと、夫と二人で話し合っています」

年をとるのも大変な時代なのだ。
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