2026年7月28日、熊本県を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市や八代郡氷川町などで最大震度7を観測しました。熊本県内で震度7を観測したのは2016年の熊本地震以来10年3か月ぶりで、大きな被害が報じられています。
被害に遭われた方、今も不安な状況の中で過ごされている方に、心よりお見舞い申し上げます。

震災時は、適切な心のケアが非常に大切です。被災地はもちろん、被災地から離れた地域に暮らす人々の心にも、震災は思いがけないダメージを残します。実際に2011年の東日本大震災でも、発生から2週間ほど経った頃から、被災地から遠く離れた地域でも心の不調を訴えが増加したと報告されています。

直接被災していなくても、繰り返される被害の情報や映像に触れることで、心に大きな衝撃を受け、日常生活に精神的な支障が出てしまうことは決して珍しいことではありません。

■被災地以外でも起こる「急性ストレス障害(ASD)」
こうした状態は「急性ストレス障害(ASD)」と呼ばれます。急性ストレス障害は、「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」になる一歩手前の状態と言えます。

ASDもPTSDも、

・トラウマとなった出来事が繰り返し脳裏に現れる
・悪夢を見る
・現実感が低下する
・心身が緊張して動悸を自覚する
・不眠や不安症状が続く

といった症状が起こります。これらの症状が4週間以内に収まるものは「ASD」です。症状がそれ以上継続し改善しない場合は「PTSD」と診断され、しっかりと適切な治療を検討する必要が出てきます。

加えて、気持ちが塞ぎ込むなどのうつ症状は、うつ病を発症するきっかけになってしまうこともあり、注意が必要です。

・食欲がわかない
・眠れない・眠りが浅い・夜中に何度も目が覚めるといった睡眠の変化がある
・今まで楽しめていたことが楽しめない
・自責の念が強くなる
・イライラ感が強い
・集中力が低下する
・疲労を覚えやすい

といった症状が2週間以上続く場合は、うつ病の可能性も疑う必要があります。
特に、「自分はうつ病になるわけがない」という思い込みが強い人ほど、自分の心のSOSに気付きにくい点には注意が必要です。

ASD・PTSDもうつ病も、決して心の弱い人がなる病気ではありません。大きな心的ストレスをきっかけに脳内の神経科学的環境が変化することで起こるため、誰でも発症する可能性があります。

■心の健康を守るために大切な3つの対策
・ASD・PTSD、うつ病の症状を正しく理解し、つらく感じている気持ちを軽んじない
・気心の知れた仲間と話す、被災地以外の地域にいるのであれば、過度な「自粛」はせず、いつも通りのリフレッシュを行う
・「死にたい」といった思いが浮かんでしまった場合は軽視せず、すぐに病院を受診する

被災地から離れた地域に住む人々も含め、心の健康を守っていつも通りの社会生活を行っていくことは、長期的に見て復興への力にもなります。

つらい報道に接したときは、自分の心の状態にも気をかけ、心の健康を守るためにできることをしましょう。ただし、飲酒や極端な散財などで気晴らしをするのは、おすすめできません。つらいときの極端な行動は、適切なリフレッシュにならず、精神医学的には依存リスクを高めてしまう行為です。

▼中嶋 泰憲プロフィール千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。
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