人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいは自分の限界に直面して立ち止まりそうになるとき――そのような瞬間にそっと寄り添い、再び前を向く力をくれる存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。
コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。

連載第31回は、八木美佐子アナ(出演26回目)が、戦争を日常として生きる少女たちを描いた『きみが死ぬまで恋をしたい』をピックアップ。ワンタッチ式の日傘の思わぬハプニングをきっかけに、「慣れる」とは本当に強くなることなのかを見つめ直します。戦場で「兵器」として生きることを求められながらも、誰かを特別に思うことで人間らしさを守ろうとする少女たち。その姿を、自身がアナウンサーとして培ってきた「気持ちの切り替え」と重ねながら、心が摩耗していくことの危うさと、慣れないままでいたい感情の尊さを優しくつづります。

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◆慣れることは、強くなることなのか『きみが死ぬまで恋をしたい』

この夏、照りつける日差しから身を守るため、ワンタッチ式の日傘を導入しました。持ち手のボタンひとつでパッと開閉するスマートさに感動していたのも束の間、最近、思わぬハプニングが頻発しています。街を歩いていると、ふとした拍子に持ち手を握る親指がボタンを押し込んでしまうらしく、バサッと大きな音を立てて、歩行中に日傘が閉じてしまうのです。ガバッと、自分の日傘に視界を呑み込まれます。その姿はあまりにも間抜けです。私自身も毎回驚いて、「ショートコント!からかさ小僧!」と心の中でその場しのぎの言い訳を考えています。この短期間に何度か繰り返しているのに、何度経験しても慣れません。

ですが、ふと考えさせられました。「慣れる」とは、一体どういうことなのか。環境や刺激に対する反応が薄れ、当たり前の日常として消化できるようになること。きっとそれは生活の知恵でもありますが、同時に感情の摩耗でもあるのではないでしょうか。

『きみが死ぬまで恋をしたい』は、戦争と死に慣れることを求められた少女たちの物語です。
舞台は、身寄りのない子どもたちを戦争のための兵器として育てる、孤児院兼・国戦用魔術兵器育成機関。ここで暮らす少女たちは、兵器として消費される運命を背負わされています。主人公である14歳のシーナは、日常の一部となった戦争や、仲間が次々と命を落とす環境にどうしても馴染むことができません。そんな彼女の前に、「伝説の秘密兵器」と噂される少女・ミミが現れます。
シーナとミミが重ねていく、初々しく不器用な感情のやり取りが美しい本作。百合作品として描かれる二人の関係はもちろん、ディストピア的な世界で少女たちが交わす会話の一つひとつが、どこか特別な輝きを帯びています。
戦争や死が日常となった世界では、誰かと食事をすること、帰りを待つこと、何気ない言葉を交わすことさえ、いつ失われてもおかしくありません。
だからこそ、本来なら何気ないはずの会話の大切さを感じます。

名作『最終兵器彼女』が「兵器になってしまった恋人をどう愛するか」を描き、『GUNSLINGER GIRL』が「兵器にされた少女たちがどのように生きるか」を描いてきた作品だとすれば、『きみが死ぬまで恋をしたい』は、「兵器として扱われる少女同士が、互いを特別に思うことで、失いかけた人間らしさをどう守るのか」を描いているように思います。彼女たちにとって誰かを特別に思うことは、世界から押し付けられた役割に対する、小さな抵抗なのではないでしょうか。

何事にも「慣れる」ことは、自分の心を守るために必要な力です。私もこの仕事を始めたばかりの頃は、失敗が分かりやすく伝わってしまう仕事だからこそ、一つのミスをそれはもう何日も、布団の中に入っても夢の中まで引きずっていました。今でも落ち込みやすい性格ですが、放送中は、次の原稿に入った瞬間には即座に気持ちを切り替えなければなりません。たとえばニュースを読んでいる最中に、「今のアクセントは合っていたかな」と考え始めた瞬間、その先の一行まで高い確率でとちってしまうからです。
周りには、気持ちの切り替えが圧倒的に早い人もいます。もしかすると、それが根明(ねあか)パワーなのかもしれません。うらやましく思う一方で、その人は悔しさや悲しみをどこへしまって、あんなに明るく振る舞っているのだろうと気になります。
シーナが出会うミミは「秘密兵器」と呼ばれ、どれほど傷ついても明るい笑顔で戦場から帰ってくる少女です。その姿だけを見れば、戦争のために完成された強い存在に見えますが、それは彼女が自身に貼られた「兵器」というラベルを無意識に演じているのかもしれません。
ミミが今後どのような感情と向き合っていくのか、不穏さを感じながらも見届けたいと思います。どうか二人に明るい展開が待っていてほしいです……!

『きみが死ぬまで恋をしたい』というタイトルは、甘い告白であると同時に、死や心の摩耗を当たり前にする残酷な世界に対峙する決意表明のようにも聞こえます。
歳を重ね、大切な人が増えるほど、人生には傷つく可能性も増えていくに違いありません。それでも、傷つかないために誰も愛さない道を選んだり、誰かが傷つくことや別れを「仕方がない」と片づけたりする冷たさには、いつまでも慣れずにいたい――突然、頭上から降ってくる布地に、毎回ちゃんと驚いてしまうそんな情けなさも含めて、そう思います。
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