フィアット「600」(セイチェント)をベースに、イタリアにあるジープの欧州デザインセンターで設計し、ポーランドで生産するという「Jeep Avenger 4xe Hybrid」が日本に上陸しました。なんとアメリカで販売していないモデルだそうで、アメリカ人が見たら「こんな小さなJeepは、Jeepじゃない!」と言ってきそうなコンパクトSUVをご紹介します。
日本にピッタリサイズのコンパクトJeep
英和辞典によるとAvengerは「復讐者」「報復者」という意味なのだとか。もともとBEV(バッテリーEV)モデルが先行し、その後ハイブリッドモデルが登場したことから、世界第2位の二酸化炭素排出国であるアメリカに対して、ヨーロッパ人が「エコなJeepで復讐しよう」という意味を込めたのかな、などと妄想してみたり。なるほど、だからアメリカで売っていないのね。と、これは不肖の勝手な想像ですので、真に受けないで下さい。
さて文頭で「フィアット600をベースに」と書いたとおり、本モデルはフィアット「600ハイブリッド」、アルファ・ロメオ「ジュニア」とプラットフォームが共通の兄弟車。
ですが味付けや商品コンセプトは相当異なり、フィアット 600が前輪駆動のみのファミリー向けモデルとするなら、アルファ・ロメオ ジュニアは高級志向でかつスポーツ指向。Jeepはアウトドア・レジャー向けで四駆モデルのみと、同じステランティス・グループ内で食い合いが起きないよう考えられています。
全幅1775mmで狭い駐車場もラクラク!
欧州設計ならではの優れたパッケージングと使い勝手
ボディーサイズは全長4120×全幅1775×全高1600mm、ホイールベースは2560mmと、フィアット600ハイブリッドよりも全長は80mm、全幅5mm小さく、全高は5mm大きく、ホイールベースは同寸。兄弟車ですから、同じ大きさなのは当然といえば当然でしょう。
不肖の近所にある車庫枠が狭いと評判の駐車場に停めてみると、キレイに枠内に停めることができました。高さはあるので、立体駐車場は難しいものの、全幅1800mmを切るボディーサイズは日本にピッタリだなと改めて感じました。
電動バックドアを開けると、写真のとおりうしろにスペースをあまり必要としない構造。アメリカ生まれはクロカンテイストが強く、結果的にうしろにスペースがないとバックドアが開けられないことがあるので、ここらへんに欧州らしさを感じました。
荷室容量は325Lでサイズなりといったところ。
個人的な荷室の残念ポイントはほかに2点ありまして。ひとつはプレイバシートレイが一体成型の板であり、これを収納する場所がないこと。次の残念な点は、荷室ドア部分と床面に少し段差があること。荷物を置いてズルズルッと押し込むのはできますが、取り出す時にズルズルッと引き出せないんですね。
でも使いながら思うのは「このサイズのSUVにしては奥行きがある方かな」ということ。大きな荷物でも後部座席を倒さずに載せられそうです。
驚愕のホイールトルク1900N・m!
「スタックしたラングラーを救出できる」最強電動4WD
床面を開けてみると、パンク修理キットのほかに大きな四角い物体を発見。これは何かというと、後輪用モーターなのだとか。そう、本機は日産の「e-4ORCE」や「e-POWER 4WD」、トヨタの「E-Four」のような、電動4WDなのです。
リアモーターの最高出力は29馬力、最大トルクも9.1kgf・mとハイスペックではないのですが、メーカーの資料によると、22.7:1の減速ギアにより、ホイールレベルで1900N・mに相当する大トルクを発生するのだとか。そのギアのため、写真のようにモーターが飛び出すような構造になってしまったといいます。ちなみに、高速になるとFF動作になるとのこと。
リアバンパーに牽引フックを設けるあたりに、実トルクに対する自信のほどが見えます。広報スタッフから聞いた話によると「設計陣によると、スタックしたラングラーを引っ張り上げられるそうです」というから驚き。とはいえ、ラングラーがスタックする場所なら、Jeep Avengerもスタックすると思うのですが……。ともあれ、Jeepの名に偽りナシということでしょう。
後席の背もたれを倒すと、荷室容量がアップします。完全フルフラットにはなりませんが、このくらいの角度は問題ないかなと思います。
後席をチェックしようとドアを開けて気がづきました。ドアの開口部が狭く、またサイドシルが高めなのです。若い人なら問題ないでしょうが、足が不自由なお年寄りには厳しいかもしれません。
後席シートは撥水素材が用いられており、多少汚れても水拭きすれば綺麗になるとのこと。その素材感をうまく使いながら、チープに見せないあたりに、イタリアのデザインセンスを覚えます。
乗り込んでみると、身長185cmの筆者では天井に頭がぶつかってしまいます。
運転席はパッと見ると600ハイブリッドの面影がちらほらと。ですが、あちらは曲線を基調としたデザインであるのに対し、Jeepは直線基調。ここでもシート素材には高い耐水性を誇るものが使われています。
ステアリングホイールは丸型の3スポークで、メーターパネルは液晶ディスプレイ。ペダル周りはちょっと小さく、左足のフットレストは筆者の大足(30cm)では半分程度しか載りませんでした。他のヨーロッパ車もフットレストが小さめなので、あちらの方は足が小さいのでしょうか?
センターコンソールから助手席にかけて、小物を入れるのに便利なトレイが用意されています。これも600ハイブリッドで見かけた手法です。これが実に有用で、試乗中、財布はココが定位置でした。助手席側にはカッコいいロゴが配置されていました。
最近、インフォテインメントディスプレイ側で操作しがちなエアコンまわりの操作は、ボタン式で使いやすい印象。残念ながらBEV版アベンジャーにあったシートヒーターのボタンは見当たりませんでした。
シフトセレクターはボタン式。そのためセンターコンソールはスッキリしています。ボタン式がいいかレバー式がいいかは好みが分かれるところ。「いちいち見ないとダメだからイヤ」という声も聞きますが、いっぽうで「確実に押す」という点では操作間違えが減る気もしています。
ドライブモードセレクターを押すと、AUTO、SPORTのほか、SNOWやSAND/MUDが登場するあたり、本格4WDの風情を感じさせます。また、ヒルセンドコントロール(坂道でのサポート機能)なども用意されていました。パーキングブレーキは押しボタン式で、Pのポジションでも自動でかからない仕様ですが、DやRでアクセルを踏むと自動解除します。
それでは、ASCII.jpらしくスマホ対応をチェックしましょう。センターコンソールに置かれたUSBの形状はType-Cで、運転席側のみインフォテインメントとつながります。スマホトレイは縦配置で手首を返さないのは〇。ワイヤレス充電に対応しており、動作中の様子がLEDで表示されるのはわかりやすいです。
インフォテインメントディスプレイのサイズは10.25インチ。
標準でナビも入っているのですが、フリーワード検索ができないのは残念なところ。住所や近隣の駅といった感じでスポット入力するのは、ちょっと面倒だったりします。よってディスプレイオーディオを使うのが前提かなと感じました。
システム145馬力&燃費18.9km/L!
「イタリア料理人が作ったハンバーガー」のような独特の走り
パワートレインはフロントが最高出力136馬力の1.2L 直3ガソリンターボと、最高出力21馬力の48Vモーターの組合せ。リアが29馬力のモーターという布陣で、システム全体で最高出力145馬力を発生します。燃料はハイオクのみで燃費は18.9km/L(WLTCモード)が公称値。
走り出すとパワフルですが、音は結構大きめで、太めの排気音がクルマを操っているという気持ちにさせてくれます。
停車中はハンドルにエンジンの振動が伝わるほか、アイドリングストップからの復帰も、イマドキのクルマにしては大きめ。さらに言えば、アクセルを離した時の回生も強め。極言すれば「10年ほど前の日本車のようなパワートレインフィーリング」で、それが逆に違和感がなかったりします。
ちなみに、輸入車のフルハイブリッドはルノーに続くもので、それがまさかフィアットやJeepだとは思いもよりませんでした。
乗り心地はJeepのチェロキー系に似たシットリ感覚。
車体のあちこちに、遊び心が散りばめられている点もJeepらしいところ。フロントバンパーに設けられた最大渡河深度40cmを示す場所には、アヒルのイラストが描かれていました。ルーフにはテントウムシの姿も。これも何か意味があるのかなと妄想しましたが、ちょっと思い浮かびませんでした。
乗れば乗るほど、欧州JeepチームのJeep好きがにじみ出ていることを実感。本家Jeepは大きいけれど、こちらは手頃なサイズですし、なによりフルハイブリッドで燃費がイイ!
アベンジャーという名前の由来はともかく(以前クライスラーのダッジ・アベンジャーという三菱ギャランベースのクルマがありました)、アウトドアで使えるクルマを探している人は、絶対チェックすべき1台。というか、コンパクトSUVを捜しているのであれば、Jeep Avengerは要チェックなモデルです。
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Jeep Avengerギャラリー

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