今年6月、トヨタ自動車を抜いて一時、時価総額で日本企業1位に立ったソフトバンクグループ。その総帥・孫正義が薫陶を受けた、一人の起業家と一冊の本がある。
本書に感銘を受けた孫少年が、藤田田との面会を強引に取り付け、いまにつながるアドバイスをもらった。あまりにも有名なこのエピソードを、孫自身が語った動画がXで再拡散され、話題を呼んでいる。
件の動画は、米国の著名投資家であり慈善家でもあるデビッド・ルベンスタイン(投資会社カーライル・グループ共同創業者)がホストを務める、ビジネスリーダーとの対談番組でのもの。その語りを一部抜粋しよう。
《藤田田氏が書いた本(『ユダヤの商法』)はベストセラーになっていました。素晴らしい本。私はとても感銘を受けていたのです》
こんな素晴らしい本を書いた著者に、ぜひ会いたい。そう思った16歳の孫少年は、まず秘書に“鬼電”を仕掛けたようだ。
《秘書の方には何度も電話しました。電話代はとても高かったですね。100回は電話しましたから。
電話ではらちが明かない。そう判断した孫少年は、東京へと乗り込む。そして、こう伝えたという。
《私が言ったことを、そのまま彼に伝えてください。私の顔を見なくても、話をしなくても大丈夫です。そのまま仕事を続けていただいて結構です。ただ、私はあなたの顔を拝見したいんです、3分間だけと》
これが刺さった。孫少年は藤田田から15分間の面会を許され、実際に言葉を交わすことができた。
《私は彼に聞きました。「これからどんなビジネスをすればよいでしょうか」と。そうしたら、「コンピュータだ。
このひと言を糧に、孫は起業へと突き進む。日本ソフトバンク初期の事業は、パソコンソフトの卸売と、パソコン雑誌の発刊。それが、今日の成功の確かな足がかりとなった。
少年・孫正義の進路を決めたその一冊は、いまも書店で手に取ることができる。『ユダヤの商法』は1972年の初版刊行、2019年に新装版として復刊で累計120万部のベストセラー。「銀座のユダヤ人」と呼ばれた藤田が説く“金儲けの定石”は、半世紀を経たいまもなお、起業を志す者の背中を押し続けている。
動画が拡散されると、ネット上では「正気の沙汰じゃない」「やっぱりすごい人は桁外れの行動力がある」と、稀代の起業家が見せた若き日の常軌を逸した執念に、驚きと感嘆の声が相次いでいる。時価総額日本一の原点は、一冊の本と、16歳の途方もない情熱にあった。
文:BEST T!MES編集部
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