今年8月、山本太郎前代表の突然の政治引退・議員辞職という政界激震のなか、山本ジョージ新代表のもとで「いのちの党」として再出発を切った旧れいわ新選組。その副代表(兼ボランティア本部長)に抜擢されたのが、前衆議院議員の八幡愛氏だ。
直近の選挙での大敗、比例票200万減、相次ぐ幹部・議員の離党、そしてSNS上での支持者同士の泥沼バトル――。満身創痍の組織の中で、なぜ彼女は逃げずに党に残り、重責を引き受けたのか。新体制発足直後の彼女を直撃し、旧体制の課題から山本太郎氏と交わした「最後の約束」まで、その本音を徹底的に聞いた。
■突然の副代表就任。カリスマ依存からの脱却を目指す
――副代表就任、おめでとうございます! 8月5日の新体制発表の直前まで、どのような経緯で副代表に決まったのでしょうか。
八幡愛(以下、八幡):ありがとうございます。7月31日に山本ジョージ新代表の就任が決定して以降、役員人事についていろいろと相談をさせていただきました。その中で、ジョージさんから「副代表をやってほしい」という強い希望をいただき、ありがたく拝命した次第です。
私は前回の衆院選で落選したため現職議員ではありません。ですが、現職ではないからこそ圧倒的にフットワークが軽い。時間があるからこそ、誰よりも早く動けるじゃないですか。
国会が始まったら現職の国会議員(6名)には国会質疑に100%専念していただき、私は現職以外の立場から党の組織運営や現場を全力でフォローしていく。
――メディアでも「山本太郎からの脱却」が大きなテーマとして報じられていますが、副代表としてどう捉えていますか?
八幡:やっぱり、前代表である山本太郎という存在はあまりにも大きすぎました。彼という強烈なカリスマ政治家がいたからこそ成立していた部分がある一方で、カリスマゆえに「組織や次の人材が育たなかった」という側面も否めません。すべての決定が代表の決済を通して進む、悪く言えば強い「トップダウン」の組織構造だったんです。
ですが、山本ジョージ新代表は「ボトムアップ」という言葉を繰り返しおっしゃっています。トップダウンの限界を全員が痛感した今だからこそ、党員やボランティア、現場の声をしっかり吸い上げるボトムアップの組織へ構造改革を進めていく。それが新体制における最大の課題であり、私たちに求められる覚悟ですね。
■比例200万票減の大敗…その「弱さ」と離党ドミノの真相
――直近の選挙での大敗。参院選からわずか1年足らずで比例票を約200万票も失うという厳しい結果になりました。一番の要因は何だったと考えていますか?
八幡:この大敗は絶対に正面から受け止めなければいけません。高市さんの飛躍といった情勢の影響もあるとは思いますが、要因は大きくふたつあります。
ひとつは政策の埋没です。
もうひとつは、組織としての「足腰の弱さ」です。政策自体はすごくしっかり作っているのに、それを有権者に届ける力が弱かった。167万人もの方々が今も支持を続けてくださっている一方で、風が吹いたときに流れてくる無党派層の票に依存しすぎており、地域に根を張る組織基盤が脆かったのだと痛感しています。
――参政党などが地方議員を急速に増やしたのに対し、地域への根付きの差が出た形でしょうか。
八幡:まさにそこです。参政党さんは地域にドバッと公認を出して地方票を固める戦術を取りました。一方のれいわは、立ち上げ当初「まずは国政に集中する」という、政治業界から見れば異質なスタートを切った。当時は山本太郎のカリスマで突破できましたが、本来は地域で票を固めて国政へ向かうのが王道です。
今になって「地方自治体議員の存在がいかに大事か」という現実が浮き彫りになりました。
――短期間で多くの議員や幹部が離党しました。「内部で何が起きていたのか」と世間も注目しています。
八幡:離党の理由は本当に一括りにはできません。旧執行部(旧体制)への不満や不信感から去った人もいれば、山本太郎と大石あきこさんが前線から離れたことで「自分も無所属になる」と決断した人もいます。
ただ、旧体制下において「言いたいことがあっても言えない空気」が存在していたのは事実ですし、私自身も含めて「もっとこう提案できたのではないか」という後悔は残っています。大敗を機に長年の蓄積が一気にドバッと表面化した形ですが、去っていく人たちを引き止めるのには限界がありますし、それぞれの政治家としての信念に基づく決断ですから、そこは受け止めるしかありません。
新体制では、不満や意見を隠さず吐き出せる風通しの良い環境づくりを徹底していきます。
■山本ジョージ新代表のもと、どうアピールする?
――山本ジョージ新代表とは、八幡さんから見てどのような人物ですか?
八幡:実は私、政界に入る前から犯罪心理学や刑務所の課題に関心があり、元受刑者の社会復帰支援をライフワークにされていたジョージさんの著書を読んでいたんです。だかられいわに来られたときは「来るべくして来てくれた人だ」と思いました。
ジョージさんは安住淳さんら民主党系のベテラン議員たちと同期だった経験もあり、国会運営や政治の裏表を知り尽くした「手練れ」です。
――山本太郎氏のような圧倒的な演説力やカリスマ性が不在のなか、どうやって無党派層の心を掴んでいくのでしょうか。
八幡:街頭で足を止めさせる山本太郎の話術や見せ方は、彼が芸能界で培ってきた唯一無二のスキルであり、誰もが真似できるものではありません。私も彼の演説技術を盗もうと思って動画を全部見返したんですよ。そうしたら支持者の方から「愛ちゃん、代表(山本太郎)みたいになっているよ」と言われたこともありました(笑)。
でも、それは山本太郎だからこそできた芸当だと思うんです。だから「みんなが山本太郎にはなれない」という現実に立ち返る必要があります。
これからは過度な演出やカリスマ性に頼る「脱カリスマ」を図り、新代表や各議員が自分の言葉とスタイルで地道に訴えていく。派手さはなくても、それが最も合理的で持続可能なアピール方法だと思っています。
■ネットの口撃に負けず、今できることを着実に
――八幡さんは旧体制時代からハラスメント対策を担当されていますが、新体制でも継続されるのですか?
八幡:はい、引き続き私が担当します。
私自身が被害を受けたり目撃したわけではありませんし、精神的にもかなりしんどい部署ですが、様々な人が集まる組織である以上、相談窓口と厳正な対処プロセスは不可欠ですので、これからもしっかり務めていくつもりです。
また、旧体制では週刊誌などのネガティブ報道に対して「勝手に言わせておけ」と放置しがちでした。新体制では新代表のもと、即座に事実無根の点や公式声明を出す方針に切り替えました。これからは支持者の方に嫌な思いをさせないためにも、逃げずに対応していきます。
――現在、X(旧Twitter)上で支持者同士のバトルが泥沼化し、八幡さん自身への根拠のないデマや攻撃も散見されます。
八幡:見たくもないのに悪口が「おすすめ」で流れてくるので参りますよね(笑)。私なんか「八幡が党を乗っ取ろうとしている」とか何とか、本人が不在の場所で盛り上がっている状況です。
それって山本太郎と大石あきこが去ったショックのやり場がなく、「仮想敵」を作ってぶつけたいのかもしれません。それと今の世の中のギスギスしたムードを感じますね。
ですが、私が選挙後に全国52箇所を回って開催したボランティアミーティングで直接お会いした支持者のみなさんは、厳しくも温かく「良い組織にしていこう」と前を向いておられました。ネット上で過激な言葉を投げかけている人と、現場で汗をかいているボランティアには大きなギャップがあると感じました。
――物議を醸した参議院の「ローテーション制」など、旧体制が遺した独自のルールはどうなるのでしょうか?
八幡:「参議院は6年間の安定性を持つべきだ」という批判も重々理解していますし、一方で制度に期待して挑戦した候補者の思いもあります。これらは旧代表時代に決まったルールですが、新体制となった今、今後の扱いについては党内で改めてしっかりと検証・協議を重ねてから決定していくことになります。
現段階で私から明言できることはありませんが、さまざまな立場の人が納得できる結果になればいいなと思っています。
■山本太郎と交わした「6年前の約束」とは
――大敗と混乱のなかで、八幡さんご自身が「離党する」という選択肢はなかったのですか?
八幡:正直、落選した悔しさや複雑な思いは山ほどありました。今年1月に山本太郎が病気で突然議員辞職したときも大きなショックを受けました。
でも、私には離党という選択肢はありませんでした。なぜなら、6年前に山本太郎から「れいわで政治をやらないか」と誘われたとき、私は彼と固い約束を交わしたからです。
「山本太郎が政治家を辞めるその日まで、私はこの船を降りずに続けます」と。
……まあ、まさか本人が先に政界引退して船を降りちゃうとは思いませんでしたけどね!「あんたが先に降りたんかい!」って心の中でツッコミましたよ(笑)。でも、その約束から6年が経ち、私自身も政治家として成長させてもらった。山本太郎の存在の有無にかかわらず、「自分には国会に戻ってやり残したことが山ほどある」という強い意志があったからこそ、残る決断をしました。
――国会に戻ったら、一番やり直したいこと、訴えたい課題は何ですか?
八幡:まずは防災庁の拡充です。熊本などで再び豪雨災害が起きていますが、いまだに支援はNPOやボランティアの手弁当頼みで公的支援が遅すぎる。災害大国である日本において、命を守る仕組みを根本から変えたい。
そして社会保障の立て直しです。私は厚生労働委員会にいましたが、今、高額療養費制度の負担増や高齢者の窓口負担増、さらには治療院のマッサージ保険適用の制限など、病気や障害を抱える人たちのセーフティネットがじわじわと削られています。「病気になっても大丈夫」と思える社会とは真逆に向かっている惨状に、絶対に警鐘を鳴らし続けなければいけません。
消費税廃止とインボイス中止の旗も下ろしません。政府の「食料品1%減税」のような選挙対策のポーズではなく、真に国民の手取りを増やし経済を立て直す財政出動を訴えていきます。
――「消費税廃止!」となると「財源」について聞かれると思いますが、どういった形で作るおつもりでしょうか。
八幡:最近は「財源はどうするんですか?」と聞かれたら、「もちろん足りない部分は国債も使いますが、必要性の低い予算の見直しも不可欠です」とお答えしています。
れいわ新選組を結党した2019年当時は「赤字国債の発行」で賄える経済状況でしたし、私たちもそう主張してきました。ですが、コロナ禍を経てインフレが進み、国債発行に対するマーケットや世間の見方も大きく変わっています。100兆円規模の財政出動を一律に言い続けるのではなく、金融や市場の動きを見極めながら伝え方を柔軟に変えていく必要があります。
ただ、「弱り切っている生活者の経済を立て直す」という根本の理念はブレていません。
――最後に、生まれ変わった「いのちの党」として、国民や無党派層へメッセージをお願いします。
八幡:今の社会は、「お年寄りを大切にしよう」「子供を守ろう」「戦争はダメだ」という当たり前のことを言うと「冷笑」される、どこか壊れた空気感があります。
でも、憲法が保障する「生存権」を守り、誰もがのびのびと生きて、もっと豊かで楽しく暮らしていいはずなんです。それを実現するのが政治の役割です。
諦めがあまりにも多すぎる時代だからこそ、私たちは諦めない。「生きててよかった」と誰もが思える社会を取り戻すために全力で闘いますので、これからの私たちの行動をぜひ注視してください!
取材・文:篁五郎
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