今大会最年少の26歳。
最高位戦日本プロ麻雀協会、高津柚那(たかつゆうな)。
名古屋大学工学部卒業。
女流リーグはAリーグ、混合リーグはB2リーグにいる、まさに、新進気鋭の選手だ。
鈴木優や魚谷侑未というMリーガーを育んだ、愛知県の豊橋に縁がある高津。
なんと、Mリーグ入りを目指すために務めていた会社をやめ、7月末から東京へと拠点を移すことを決めたそうだ。
その行動力からも、「麻雀に人生を捧げている」ことが伝わってくる。
そんな高津が全力で臨む「夢の舞台」Mトーナメント。
2半荘を打って、1位が3rdステージへ、2位が2ndステージへ進める。
高津は1回戦のP卓に出場。
1半荘目の南3局、高津は強気の攻めを見せる。
親の堀から先制リーチが入るも、高津は、
無筋の1索、
これまた無筋の9萬を押して、いい形のイーシャンテンをキープする。
そして、
9索を引いて追いついた!
「リーチ」
前年度Mトーナメント覇者の堀慎吾に、真っ向から勝負を挑んでいく。
その堀から、
8萬をとらえた!
リーチ一発ピンフドラ、8000点のアガリを決めて、
高津は1戦目のオーラスをトップ目で迎えることとなった。
だが、歴戦の猛者たちが、「どうぞどうぞ」とトップを譲ってくれるはずはない。
「リーチ」
中盤に、堀からリーチが飛んできた!
「リーチ」
親の一馬からも追っかけが来た!
そして、二軒リーチに挟まれた高津の手に、
安全牌は、なかった。
目を見開いて、盤面を凝視する高津。
俯瞰的に見てみよう。
(河にある、白色の牌は手出し、灰色の牌はツモ切りを示す。)
本当に、きれいサッパリ安全牌がない。
なんなら「安全そうな牌」すら見当たらない。
みなさんなら何を切るだろうか。
最善手を探す高津。
放銃だけは絶対に避けなければならない。
思い浮かぶ、主な打牌候補は、2つ。
まず、どのみち通っている牌がないなら、自分のアガリを消さないために、浮いている1筒を切るのも一つの手だ。
なお、仕掛けることもできるため、実戦では「1pを切ったあとで、どの牌が出たら鳴くかどうか」の精査も込みで時間が必要ではある。
しかし、ここで切りたい1筒はもちろん両方に通っていない。また、このあとテンパイするためにはピンズをもう一枚切らなくてはならない。6筒も7筒も、この時点では危険牌だ。
何ともツラい、いばらの道。
もうテンパイしている二人に対して、この状態から「追いついて、追い越せるか」と言われると、難しいと言わざるを得ない。
他には、
堀に通っている5萬を打つ、という選択肢もある。
なんせ、他の牌は全て「二人ともにロンされる可能性がある」牌だ。
Mリーグルールではダブロンがない(回ってくる順番が早い人の、頭ハネとなる)とはいえ、ここは是が非でも勝ちたい、Mトーナメントでのオーラス。
誰にも放銃したくない中で、一人に対して確実に通るという要素は大きい。
しかし、実は読めば読むほど「一馬の待ちが5-8萬である可能性が高め」であることが浮き彫りとなってくるのだ。
上家にいる一馬の河を見ると、
少し前、堀に通っていない8筒をツモ切っており、その後に「堀の現物である6萬」をリーチ宣言牌としている。
ラス目で親をしている一馬にオリる選択肢はないとしても、8筒と6萬のどちらともが要らないのなら、先に6萬が打たれる可能性は高い。6萬はロンと言われないからだ。
よって、「危険牌を切ってまであとに回した6萬」は、一馬の手に関連していることが多いと読めるのだ。
また、堀のリーチ一発目に、一馬はドラの9萬を「手から」打っていることにも注目が必要だ。
一馬が6萬を使ったリャンメン待ちになっているパターンを考える際、9萬を使うことに色気があったという要素を加味すると、5669萬より、6679萬の形が濃くなるだろう。9萬の浮き具合が違う。
ここまで見ていくと、5萬がとてつもなく危ないように感じるかもしれないが、それでも「このパターン以外は通りそう」と考えることも出来よう。
すなわち、「イーシャンテンの状態で他の未完成ブロックが先に埋まって、667萬から6萬切りリーチをしたときにだけ、5萬は危ない」と考えられるので、他のケースでは5萬は通る可能性が高いと言える。私は5萬を切りそうだ。
ただ、我々は卓外で盤面を眺めて、コーヒーでも飲みながら、「自分ならあれを切るかな~」とぼんやり考えることが出来る。
一方で、
高津が思考を巡らせている場所は、憧れの地、Mリーグスタジオだ。
そして、1筒にせよ5萬にせよ、今見てきたように「打ちづらい」理由が存在する。
こういうときは、どの牌を選ぼうとしても、「ロン」と言われたときのイメージがついてきてしまうものだ。
そんな魔の時間帯。
スター選手に囲まれて、悲痛な面持ちを浮かべながら、高津が使った思考時間は「220秒」。
そして、熟考の末、
場に放たれた牌は、1筒でも5萬でもなかった。
高津が切ったのは、
アンコで持っている3索だった!!!
通れば、3巡凌げるのが大きい。
また、
対面の堀は、1索を切ったあとで、2索を連打してのリーチ。
堀に対して3索は、ペンチャンやカンチャン、単騎待ちには当たらないと読める。
また、こちらが3枚持っている時点で、堀にだけでなく一馬にも、3索のシャンポン待ちは出てこない。
これさえ通せば、ほぼオリ切れると考えた高津は「堀には安全度が高めな、複数枚ある牌」を選んだのであった。
この3索に声がかかることはなかった。
堀の待ちは、
5-8索。
そして、
一馬の待ちはカン7索だった。
なお、一馬は667萬と持っているところから、8萬を引き入れての6萬切りリーチであった。
1巡経ったとき、
対面にいる堀は4索をツモ切っていた。
高津は前巡に3索を選んでいたからこそ、ここでも3索を打つことが出来た。
しかし、もし前の段階で1筒や5萬を切っていたら、ここで後スジになった7索を捨てて、一馬に放銃する未来があり得たのだ。
一牌の行方で運命が大きく変わる。それが麻雀。
この局は、
二軒テンパイで流局。
ピンチを乗り切った高津だったが、南4局2本場に、
萩原が、4着から1着まで突き抜ける満貫のツモアガリを決めて、高津はこの半荘を2着で終える。
続く2戦目、高津は、
南4局で4000オールをツモアガり、
萩原、一馬と1万点差のところまで迫るも、
最後は萩原がアガって試合終了。
1位通過が萩原。2位通過が一馬。
前年度チャンピオンの堀は4位。
そして、
高津は、惜しくも3位で敗退となった。
試合後のインタビューでは、
「悔しいよぉ!」
と語っていた高津。
夢の舞台での悔しい気持ちが、また一つ、高津柚那を強くする。
そして、「夢には続きがある」。
上京してからも活躍した高津が、再びMの舞台に戻ってくることを心待ちにしたい。
ゆうせー ゆうせー 麻雀戦術研究家。福井県出身。京大法学部卒。Mリーグの観戦記者歴8年。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている。元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。 好きなアーティストは吉澤嘉代子。 この著者の記事一覧はこちら











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