いまの場所にたどり着くまでに、どんな選択肢があったのか――。この連載では、道を切り開き始めた次代の担い手たちに、歩んできた決断の背景と、その先に見据える未来を聞いていく。
それぞれの選択がどのように現在をつくり、次の挑戦へつながっていくのかを、記録していく試みだ。

本稿で話を聞いたのは、お笑いコンビ ダブルヒガシ。ともにNSC大阪校の36期生で、東良介さんは1992年8月25日生まれ(大阪府出身)、大東翔生さんは1993年1月16日生まれ(大阪府出身)。2014年にコンビを結成し、第44回ABCお笑いグランプリ(2023年)で優勝している。渋谷よしもと漫才劇場にて話を聞いた。

漫才経験ゼロが「プロにならなしゃあない環境」に

――お笑い芸人を目指したきっかけについて教えて下さい。

東良介さん(以下、敬称略):もともと、芸人に憧れていたわけではないんです。大東に誘われるまで、自分で漫才をやろうとは思ったこともなくて。よしもと新喜劇、M-1グランプリ、お笑いのネタ番組などはテレビでよく見ていました。ブラックマヨネーズさん、チュートリアルさん、千鳥さんが好きでした。

大東翔生さん(以下、敬称略):ボクは大学の留年が決まったときに、大学を辞める理由が欲しくて。小さい頃から、周りからオモロいと言われてきたので、逃げ込む形でNSCに入学しました。
1人では怖かったので、仲の良かった東を誘ったんです。

それまで漫才は見てこなかったんですが、ダウンタウンさんの出るバラエティはめっちゃ見てました。おかんには「大学を卒業してからでも良いやろ」と止められました。嘘ついて大学を辞めて芸人になることが自分でも情けなくて、おかん、おやじのいる前でむっちゃ泣いたのを憶えています。

東:うちの親は反対しませんでしたね。あるとき、よしもとから自宅に謎の封筒(=NSCの願書)が届いて、親に「何やこれは」って聞かれたときに、会社を辞めてNSCに入ることを伝えたんですが、すんなり「ええよ」って感じで。身内の反対はまったくなく、ただ会社の上司からは「そっか、残念やな」って言ってもらえました。ちゃんとした企業だったんですが、出社して17時くらいまで一日やることもなく、3か月くらい経って「ちょっと楽しくないな」って思ってたときに大東から誘われたので、まだ若いからやり直しもきくし良いかな、と思って。

大東:東はめっちゃ仲の良い友だちで、性格もしっかりしていたんですが、お笑いをやり始めたらスポンジのようにオモロさを吸収していきました。

東:大東は高校のときからずっと面白かったので、一緒にお笑いをやっていったら何かあるかもしれんな、と信じていました。

――これまで、芸人を辞めたいと思ったことは?

大東:まだないですね。最初のうちは、芸人をやってて10年くらい何もなかったら辞めようか、みたいな感じで思ってましたけど、やってるラジオを聞いてもらえたり、M-1の予選のときの動画がYouTubeでまわり始めたり、だんだんオモロい奴らって気付いてもらえるようになって。


東:ほんまそうだと思います。ボクたちがやっていることは、当初からそれほど変わってはないと思うんです。周りからも「オモロいから大丈夫だよ」って言ってもらえたりして、自信がなくなることもなくやってこれたのが大きかったかな、と思います。NSCを卒業して、初めてお客さんの前で漫才をやったとき「これから頑張っていかなあかんな」と奮い立ったのを憶えています。

大東:これまで極端な気持ちの上がり下がりもなく、今日までやってこれた気はしています。仕事をこなしていったら自然にプロになっていった感じ。はじめは月4~5回だった仕事がどんどん増えていって「プロにならなしゃあない環境」になった、というか。

上京後に目指すのは、「M-1コンプレックス」打破

――4月に上京されて数か月ですが、東京には慣れましたか?

東:そうですね、どこで乗り換えたら便利かも分かるようになってきました(笑)。どこに人が多いとか、どこに何があるとか、ちょっとずつですが。まだ迷子になるので、早めに移動するようにはしています。

大東:大阪のときはギリに出ても間に合うけど、東京はタクシーもめちゃおるし、電車も遅延したりとか、交通の面で大阪との違いを感じますね。

東:大阪はね、ややこしいのは梅田の地下街だけです。
どっちに行ったら近いとか、ボクらも梅田の地下街はまだ、完全には理解できてませんから(笑)。

――東京進出のきっかけについても教えてください。

東:もっと有名になって、なんばグランド花月(NGK)に出てもお客さんに喜んでもらえる、そのくらいになりたいという思いがあります。2年くらい前から、マネージャーも含めて話し合ってきました。はじめはM-1の決勝に行けたら東京に行こうか、とかも言ってたんですが、このタイミングで行こうということに決まって。

大東:大阪でもしこたま働いてきたんですが、東京でも知名度を上げていかないと、おっさんになったときにNGKに立てないんちゃうか、という思いもありました。

――仕事の面では、東京と大阪で違いを感じますか?

東:基本的には変わらないんですが、大阪は数がめちゃくちゃ多いですね。でも東京の方は色んなメディアさんに出させてもらっている感じがありますね。今は時間がとれるようになったので、余裕のあるときは上京してから始めたYouTubeの編集をやったりしています。大阪に行く移動時間も利用してますね。

――関西と関東で、お客さんの反応が違うなと感じることは?

大東:お笑いファンの熱量は同じかなぁ、とも思うんですが、関東は少し郊外に営業にいくと、まだまだボクらのことを知らない人も多いので「腕まくって頑張らなあかん」って思います。

東:これは感覚に過ぎないんですが、どっちかというと関東の人の方が、お笑いを前向きに楽しんでくれているというか、「何をしてくれはんねやろ」って期待を感じるというか。
一方、関西の人は「今日は何してくれんの」って待ち構えてる、そんな文化の違いは、ちょっとだけ感じることがあります。大阪でまったく知られていない頃は、お客さん、ほんま背もたれにもたれかかって「え? 何すんの?」みたいな感じでしたから。

――今後は、どんな活動をしていきたいですか?

東:いろんなメディアに露出して、東京の人にもコンビを知ってもらえるようになりたいですね。あとM-1の決勝に出たい。それがコンプレックスになっているんです。M-1に向けて、こっちで色んな仕事をしながら漫才の力をつけていきたいと思っています。

大東:そうですね。まずはM-1に出ない限りは、こっちでもドカンとは跳ねんと思いますし。M-1で決勝に行って、全国的にも知名度のあるコンビになれるよう、頑張っていきます。

――お忙しいなか、ありがとうございました。

取材:葉山澪
構成/撮影:近藤謙太郎

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