年金の受給開始時期は自分で選ぶことができ、受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」を選択すると年金額は増えていきます。

ファイナンシャル・プランナーの服部貞昭さんは著書『知れば知るほど得する年金の本』(三笠書房)の中で、繰り下げ受給には複数のメリットがあると説明しています。


同書より一部抜粋・編集し、繰り下げ受給のメリットを紹介します。

■年金の受け取りを遅らせる3つのメリット
ここでは、繰り下げ受給のメリットをあげます。

1. 年金の受給額が増額され、一生続く
2. 繰り下げ年齢を最初に決めなくていい。いつでも受給開始できる
3. 繰り下げをやめたら、5年前までさかのぼって年金を一括でもらえる

■最大84%増額され、その効果は一生続く
繰り下げ受給の一番のメリットは、年金の受給額(もらえる金額)が増額されることです。そしてその状態が一生続きます。

増額率は、1カ月繰り下げるごとに0.7%です。

66歳まで1年繰り下げると8.4%増額され、75歳まで10年間繰り下げると、84%増額されます。

84%増額というのは、なかなか魅力的に映るかもしれません。ただし、年金収入が多くなると、そこから引かれる税金と社会保険料も増えますので、手取りでは、7~8割くらいの増加と見たほうがいいでしょう。

■受給開始のタイミングは後から決められる
年金の繰り下げは、いつから年金をもらうと明確に決めてやる必要はありません。

65歳近くになると、年金の案内が送付されてきますが、特に何も手続きをしなければ、自動的に繰り下げた状態となります。この状態を「繰り下げ待機中」と呼んだりします。
そして、年金をもらいたいタイミングになったら、その時点で年金をもらう手続きをすれば大丈夫です。

たとえば、65歳時点では会社勤務で働いていて給与収入があるので、とりあえず繰り下げ、68歳になったとき、体調が悪化して会社を辞めたので、その時点から年金をもらい始めるということが可能です。

1952年(昭和27年)4月2日以降生まれの人は、最長75歳まで繰り下げができます。

■必要になったら過去5年分を一括で受け取れる
繰り下げは途中でやめることができます。やめたら、最大で5年前までさかのぼって年金を一括でもらうことができます。繰り上げの場合は取り消しができませんが、繰り下げでは取り消しができるのが大きなメリットです。

たとえば、繰り下げをしていたが、68歳になったとき、大病を患って入院し大金が必要になったというときは、繰り下げをやめて、65歳からもらい始めたことにできます。すると、65歳から68歳になるまでの年金を一括でもらうことができます。

さらに、65歳未満の配偶者がいる場合は、繰り下げをしなければもらえていた3年分の加給年金も一括でもらえます。

さきほどあげたメリット「2. 繰り下げ年齢を最初に決めなくていい。いつでも受給開始できる」とからめていうと、68歳になって年金をもらい始める時点で、次のどちらかを選択することができます。

・68歳から増額された年金をもらう
・65歳から通常どおりの金額の年金をもらう。
過去の分は一括でもらう

ただし、注意点が2つあります。

1つ目の注意点は、さかのぼってもらえるのは最大で5年前までであることです。

年金の時効は5年ですので、5年より前の分はもらえません。たとえば、72歳になった時点で繰り下げをやめた場合、67歳からの5年分だけ一括でもらえます。65歳から67歳までの2年分は残念ながらもらえません。

2つ目の注意点は、過去の分を一括でもらうと、過去の各年の年金収入(所得)が増えることになり、原則、各年の修正申告が必要になることです。

修正申告をするとともに、足りなかった税金を追加で支払いますが、延滞税も発生します。また、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料等にも影響が生じる可能性があります。

過去分を一括でもらうより年金として毎年少しずつもらったほうが、税金と社会保険料は安いので、最初からさかのぼるつもりで繰り下げることはやめたほうがいいでしょう。

この書籍の著者:服部貞昭 プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFP〈R〉)、新宿・はっとりFP事務所代表、エファタ株式会社取締役。1977年、長野県須坂市生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了後、KDDIに入社。
EZwebシステム構築、法人向けモバイルSE業務等に従事し、2014年に独立。現在は、お金に困っている人の相談にのりながら、身近なお金に関する情報発信に携わる。
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