社運をかけたビッグプロジェクトだからこそ「人に任せずに…」

「僕はプロデューサー業務もしながら、プレイヤーとして現場の空気も感じるという選択をしました」

『ソードアート・オンライン』シリーズ、『アズールレーン』シリーズ、『にゃんこ大戦争』など、数々のパチンコヒット機種に関わってきた京楽産業.開発本部の菊池氏。彼は、チーフプロデューサーというマネジメントのポジションになっても、プレイヤーとして現場に立ち続ける。もちろん“パチンコの開発が好きだから”という思いはあるが、それは決して独りよがりなものではない。
むしろ、チームや会社への責任を感じているからこそ、彼は現場で開発に携わり続けている。

○決め手は好きという気持ち

パチンコと出会ったのは大学生の頃。特に何か理由があったわけでもなく、周りでやっている人が多かったことで自然と興味を引かれた。

「最初に打った機種は『CR羽根ぱちんこウルトラセブン』。当時は本当に何も知らず、液晶が小さいからあんまりお金がかからなそうという理由で、羽根モノとかもよく分からずに打っていました(笑)。ただ、その台が本当に楽しくて。学生時代は、『ウルトラセブン』ばかり打っていました」

その『CR羽根ぱちんこウルトラセブン』との出会いが、人生の転機となる。音や映像、そしてギミックが一体となって表現されるパチンコの魅力に引かれ、就職活動では遊技機業界を中心に面接を受けていく。数ある業界メーカーのなかでも、京楽産業.への就職の決め手となったのは、やはり『CR羽根ぱちんこウルトラセブン』だった。

「当時はどこのメーカーの機種だとは知らずに打っていましたが、最初に出会って本当に好きで打っていた機種というのが、大きな決め手となりました」
○検定申請室で学んだ基礎

入社後に配属されたのは、検定申請室。この部署では、新しい遊技機が規格に適合しているかの審査において、必要な書類の作成をメインで行う。そのなかでも大きな学びがあった。


「審査って、すごく厳しいんです。もちろん規格に合っているのかも細かく確認されますし、不正できない作りになっているのかなどセキュリティ面も含めて厳格な審査があります。ひとつのミスがあっただけでも、不適合となって世に出せなくなってしまう可能性があって。だから、開発メンバーと連携しながら、適合しうる遊技機を徹底して作っていくんです。そのなかで、開発の過程や基礎を学ぶことができました」

その後、パチンコ・パチスロの企画立案から液晶演出・出玉スペック・ゲームフローなどの構築までを担当するゲーム企画室へ異動。検定申請室で基礎を学び、審査の厳しさも知っていたことが、出玉スペックなどを考えるときに役に立った。

○ヒット機種開発の共通点は“みんなが楽しんでいて夢中”なこと

実績を積み重ねていくなかで、アシスタントプロデューサー、そして開発本部のチーフプロデューサーと、プロデュース業務がメインとなっていった菊池氏。『ソードアート・オンライン』シリーズをはじめ数々の機種をヒットさせ、社内では開発のエースとの呼び声も高い。なぜそんなにヒット機種を出せるのか。本人は「自分は特別なことはしていない」と強調する。

「あえて言うとすれば、どの機種でも一貫しているのは、みんなが全力でやっているということ。そして、本当にみんなが開発を楽しんでいて夢中ということ。
これ面白いよね、あれ面白いなって言いながら、日々ひたすら作っているんです。職場は和気あいあいとしていますよ(笑)。そういうモノづくりに真っすぐで最高なメンバー達と夢中になってやっていたことが運よく噛み合って、結果につながっているのかなと思います。プロジェクトに関わるいろんな人にとても感謝しています」

版権機種については、原作リスペクトや作品の理解度もやはり重要だと菊池氏は続ける。

「IPの許諾が取れた作品は実際にコンテンツに触れて勉強します。まだIPの許諾を得ていない作品でも、こう表現したら絶対に面白いと考えることもあって。ゲームIPならプレイするのは当たり前ですし、アニメなら何回も観ます。作りながら、どんどん作品に詳しくなっていきますね」
○大きなプロジェクトだからこそ自らが責任をもって開発する

先ほどの菊池氏の言葉の裏付けにもなっている機種が、2023年9月に市場に投入した『スマートぱちんこ ソードアート・オンライン』。作品ファンからも「原作愛を感じる」と、かなり好評な一台だ。菊池氏は『ソードアート・オンライン』のパチンコシリーズに、プロデューサーという立場だけでなく、開発のプロジェクトリーダーとして関わっている。

「『ソードアート・オンライン』は社運をかけるくらいの大きなプロジェクトでした。だったら人に任せずに、もしこけてしまっても自分が責任を取ろうと思って。
一定の評価をいただけてよかったです」

誰かのせいにするのではなく、大きなプロジェクトだからこそ自らが責任をもって開発する。その責任感は、働く上での“軸”となっている。

「プロデューサー業務だけをやっていたとき、ずっとモヤモヤしていたんです。プロデュース業務はしていても、結局確認だけで終わっていいのかと。自分もちゃんと打席に立って、良い・悪いを常に経験していないと、たぶんいつかは開発メンバーに説得力のある言葉で伝えられなくなる気がしたんです。成果が出たら、結果的に周りのメンバーもついてきてくれると思ったので、僕はプロデューサー業務もしながら、プレイヤーとして現場の空気も感じるという選択をしました」

さっきは冗談っぽく「和気あいあいとした職場」と言葉にしていたが、こういった姿勢のリーダーがいるチームは、本当にいい空気で仕事ができているのだろう。それが、ヒット機種を生み出すきっかけにもなっているのかもしれない。

「原作愛がある」と絶賛の声 150万再生超えで話題のPV制作秘話

○今までのパチンコにはない規模感の表現に

菊池氏は、2026年8月に導入予定の『eソードアート・オンライン アリシゼーション 夜空』でもプロジェクトリーダーを務めている。

「『アリシゼーション』は、全47話とかなり長期的なアニメなんですよね。それでも、今回はゲームフロー自体がストーリーを進行させるという作りになっていて、47話分フルで入れています。恐らく今までのパチンコにはない規模感の表現になっているのではないかと」

2026年5月11日にYouTubeで公開された『eソードアート・オンライン アリシゼーション 夜空』のPVは、再生数が150万を超える(2026年7月上旬時点)。コメントでも『SAO(ソードアート・オンライン)が好きな人がつくったんだ』「ここまで原作愛があるPVを作れるメーカーが他にあるだろうか」と絶賛されている。


「PVの構成や台本、プロットは自分で作ります。どの機種でもそうですが、数年向き合って作ってきたプロジェクトでもあるので、世の中に届けるまで自分で携わりたいという思いが強くあります。機械の魅力を自分の言葉で伝えたい。加えて、今回ももちろんそこは意識しましたが、メッセージとしては“パチンコ業界全体がよくなってほしい”という思いも込めたPVになっていて。世界観がおかしくならない範囲で伝えたいことを盛り込みました。結果的に原作ファンの方からも好評の声をいただけて、ありがたい限りです」
○パチンコを誰もが公平に楽しめるレベル感まで持っていければ

今回の機種は、「フェアぱちんこプロジェクト」第1弾としても注目を集めている。すべてのプレイヤーに公平なチャンスを与える新機能「FAIR START(フェアスタート)」を搭載しており、スタートの安定性を実現しつつ、パチンコ本来の楽しさである玉の動きも徹底的に追求しているという。“パチンコ業界全体が良くなってほしい”というメッセージをPVに込めたのも、この「フェアぱちんこプロジェクト」の理念に則ってのことだ。

「いまパチンコ業界はあまり元気がありません。正直、回らなかったり、打ったら負けるというイメージが付いてしまっているところもあるかなと。誰もが公平にエンタメとして楽しめるレベル感まで持っていければという思いから、このプロジェクトが始動しました」

「フェアぱちんこプロジェクト」は、これからも様々な施策を行っていくという。

「この第1弾を皮切りに、お客さんがちょっとでも楽しく遊べる時間を増やしていきたいと思っています。
勝率なども含めて。お客さんに優しい作りにしていきたいですね」
○“コンテンツを大事にしたい”という思いの先に

さらなる画期的な動きとして、大都技研と京楽産業.がメーカーの枠を超えて初タッグを組んだ「スマパチ&スマスロ 2026 SAO YEAR」プロジェクトも始動。本プロジェクトは、『ソードアート・オンライン』『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の新機種導入を機に、パチンコ・スロット両機種を盛り上げる共同プロモーション企画だ。

「この夏、一気に『ソードアート・オンライン』関係で4機種が出るということもあり、業界を盛り上げるタイミングとしてはいいのでは、ということでプロジェクトが進みました。実施まで至ったのは、やはり『ソードアート・オンライン』のコンテンツを大事にしたいという思いがお互いのメーカーにあったからかなと。ライバル社と言えるかもしれませんが、お互いが成功することが結果的にプラスになると思うんですよ。だから、大都技研さんの台もヒットして欲しいと思っています」

プロジェクトでは、2社共通で使用できるホール装飾(4機種分)、SNSでのコラボ、スペシャルキャンペーン、その他にもさまざまなイベントやプロモーションでのコラボを予定している。
○“好き”という気持ちはあったほうがいい

パチンコ業界に熱い思いを馳せる菊池氏。そんな彼が、ともに働く同志として、どんな人材を求めているのか。

「やはり“好き”という気持ちはあったほうがいいかなと思っています。能力や学歴どうこうよりも、モノづくりや、パチンコ・パチスロが好きで開発に夢中になれる人は活躍しやすいと思います。個人的にはいい職種だと感じていますね」

そういう熱意や好きという気持ちが仕事につながる土壌が、京楽産業.にはある。


「パチンコにしたいIPは、ライツ側から提案をもらいながら開発チームで検討していくこともありますし、開発側から逆提案して許諾の可能性があるのか模索していくこともあります。つまりは、好きという気持ちや熱意が形になるかもしれないんですよ。実際に、いま若手社員が企画書を作って、版元さんへ提案に行くこともあります。やりたいことを体現できる環境で、やりがいを実感しやすいと感じています」

ヒットメーカー・菊池氏は、「自分は特別なことは何もしていない」と何度も口にしていた。しかし、その言葉とは裏腹に、プロデューサーという立場になっても現場に立ち続け、大きなプロジェクトでは自ら責任を背負い、作品や業界全体の未来まで見据えて開発に向き合う姿勢からは、揺るぎない信念が浮かび上がる。

菊池氏の足跡を振り返ると、一貫していたことがひとつある。それは、「好き」という気持ちが、ものづくりの原動力になっていることだ。そして、その「好き」は、自分のためだけでなく、同志や作品、そしてユーザーのために徹底して向き合い、最前線に立ち続ける責任感へと昇華していく。

エンターテインメント業界では、提供する側が夢中になり、心から楽しめていることが、何よりも大切なのかもしれない。菊池氏が語る「好き」という言葉には、自然とそう思わせる重みと説得力があった。菊池氏は、これからも一台一台の遊技機に情熱を注ぎ込み、多くのプレイヤーに「好き」を届けていく――。
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