第97回アカデミー賞国際長編映画賞のイラク代表に選出された映画『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』より、緊迫の検問シーンを収めた本編映像、サヒム・オマール・カリファ監督のインタビュー&メッセージ動画、新場面写真4点が解禁された。

【動画】緊迫の検問・・『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』本編映像

 2009年、イラク戦争下のバグダッド。

メッシに憧れる11歳の少年ハムディは、仲間たちと泥だらけのサッカーボールを日々追いかけていた。しかし⼀瞬の爆撃に巻き込まれ、目覚めたときには、片足を失っていた。

 夢も自由も奪われ、さらにアメリカの警備会社で通訳をする父を憎む者に家を焼かれてしまった一家は辺境の村へ逃れる。片足を理由に地元のサッカーチームから拒絶され、何もかもが変わってしまった世界で居場所を見失うハムディ。それでも閉ざされた少年の心を両親の愛が動かし、もう一度夢を見るために一本の足でも立ち上がろうとする。しかし、戦争という無慈悲な現実はなおも容赦なく彼らに襲いかかる――。

 今回解禁された本編映像は、片足を失った少年ハムディが地元サッカーチームへの入団を目指し、チームメンバーにテレビを見せることを条件に交渉を進める中、その大切なテレビが壊れてしまい、修理のために戦争で危険なバグダッドへ向かう父子の姿を捉えた⼀幕だ。

 父・カディムは危険すぎる道中を懸念して反対していたが、紛争で片足を失った我が子の唯一の希望であるサッカーを奪いたくない一心で、バグダッド行きを決意する。しかし、車に乗った親子を待ち受けていたのは、一瞬の油断が死に直結する検問所だった。

 兵士から開口一番に問われたのは「宗派は?」という質問。カディムは自身の本当のアイデンティティであるシーア派であることを必死に隠し、命がけで「スンニ派だ」と偽る。さらに、理由もなく大切なテレビを取り上げて立ち去る兵士を追いかけ、返すよう懇願する。
しかし兵士はその願いを遮るように銃口を突きつけ、「バン!」と撃つふりをする。いつ命を奪われてもおかしくない緊迫した状況に、思わず息をのむ。

 この検問の裏には、イラクが抱える複雑で凄惨な宗教対立の歴史が存在する。当時のイラクは少数派のスンニ派と多数派のシーア派に分かれており、少数派に属するフセイン大統領はスンニ派を優遇し、シーア派住民を抑圧していた。宗派の違いによる内戦状態に突入したイラクでは、双方が幹線道路で独自の検問を実施。敵と判断されればその場で射殺されることも日常茶飯事だった。

 スンニ派が支配する検問所でシーア派であることが露見すれば、命の保証はない。我が子の夢を守るために命をかける父の深い愛と、過酷すぎるイラクの現実。小さな荷台で寄り添い合い、過酷な運命に立ち向かう親子の姿に、胸を揺さぶられるシーンとなっている。

 併せて到着したのは、サヒム・オマール・カリファ監督のインタビュー&メッセージ動画。

 カリファ監督は、インタビューで「イラクは、子どもたちが子どもでいられる時間が短く、ヨーロッパなどの諸国に比べても、あまりに早い段階で大人になることを強いられてしまう国です。本作をご覧になった後は、ぜひ彼らが置かれた現実や物語、登場人物の胸中に深く思いを巡らせてみてください。
それこそがこの映画の核心であり、そこからきっと新しい発見があるはずです」と力を込める。

 映画のタイトルにもなっているリオネル・メッシ選手を作品のモチーフにした理由については、「当時、世界で最も象徴的な選手のひとりだった彼をタイトルに据えれば、一目で『サッカーを巡る物語だ』と理解できると考えました」と明かし、「なんとバルセロナが公式にこの映画を取り上げて紹介してくれ、メッシ選手本人も本作の存在を知ってくれたのです。彼らが作品や、主演を務めたアフマド君のことを多くの人々へ発信し応援してくれたことには、心から深く敬意と感謝を抱いています」と喜びをにじませた。

 メッセージ動画では「こんにちは、日本の観客のみなさん。私の映画が日本で公開されることをとても嬉しく思っています。私たちはこの映画をたくさんの愛情と情熱、そして多くの困難を乗り越えながら作り上げました。そして今、ワールドカップが開催されていたこの素晴らしい時期に、私たちの映画が日本で公開されることをとても嬉しく思っています。みなさんに楽しんでいただけることを願っています」などとにこやかに語っている。

 映画『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』は、8月7日より全国公開。

※監督のインタビューコメント全文は以下の通り。

<インタビューコメント全文>

■サヒム・オマール・カリファ(監督)

――本作が制作された経緯を教えてください。

元々短編として制作された本作は、2015年にアカデミー賞短編実写部門の最終候補に選出されたほか、多くの国際映画祭で受賞するなど、大きな成功を収めることができました。
元から長編化を目指して立ち上がった企画ではありませんでしたが、この大きな反響を受けて、プロデューサーから「非常に力強い物語だから、ぜひ長編映画にしよう」と提案をいただいたのです。

それから10年近い歳月をかけて脚本や登場人物を深く練り直し、長編として制作することを決断しました。短編をご覧になった皆様にとっても、改めて観る価値が十分にある作品に仕上げることを何よりも重視しました。

――映画の題材として「サッカー」を選んだ理由は?

イラクにおいて、サッカーは最も人気のあるスポーツの一つです。特に当時のような戦争のさ中においては、スポーツという存在が人々の心を支える極めて重要な役割を果たしていました。私自身、24年前にベルギーへ移住した際、それまでイラクでずっと続けていたサッカーをやめてしまいました。家族と⼀緒に移住でき、幸せなはずなのに、なぜか心が満たされない感覚が続いていたのです。

「何かが足りない」と自問自答を重ねて気づいたのは、自分にとってその欠けていたピースがサッカーだったということでした。サッカーをやめてしまったから、幸せを感じられなくなっていたのだと気がつきました。だからこそ本作では、サッカーが持つ魔法や、人々を動かす力そのものを描きたかったのです。

――映画のタイトルにもなっている「リオネル・メッシ選手」をモチーフとして選んだのはなぜですか?

実は映画を制作する前、私自身はメッシ選手に特別な思いがあったわけではありませんでした。ではなぜメッシだったのかというと、2009年にUEFAチャンピオンズリーグ決勝(マンチェスター・ユナイテッド対バルセロナ)があり、そこでメッシ選手が大活躍をしたからです。
当時、世界で最も象徴的な選手のひとりだった彼をタイトルに据えれば、一目で「サッカーを巡る物語だ」と理解できると考えました。

ただし同時に意識していたのは、ストーリーがメッシ中心になりすぎないようにすることです。これはメッシの物語ではなく、あくまでイラクの物語であるということを常に念頭に置いて制作しました。

しかし何より嬉しい驚きだったのは、タイトルに名前を使わせていただいた後の周囲の反応でした。なんとバルセロナが公式にこの映画を取り上げて紹介してくれ、メッシ選手本人も本作の存在を知ってくれたのです。彼らが作品や、主演を務めたアフマド君のことを多くの人々へ発信し応援してくれたことには、心から深く敬意と感謝を抱いています。

――監督が考える「戦争がもたらすもの」とは何か教えてください。

イラクは常に戦争と隣り合わせの国でした。当然、戦争は即刻終結すべきものです。しかし戦争は破壊をもたらす一方で、人々や社会を大きく変革させる力も持っています。かつてヨーロッパや日本が悲惨な戦争を経て大きく発展したように、イラクにもまた、未来へ向けて変わっていく可能性があると信じています。

――日本の観客へメッセージをお願いします。


私の母国の物語を、日本の皆さんと共有できる機会をいただけたことを大変嬉しく思っています。私は常に、観客の方々が映画館を出て家に帰った後も、描かれた物語や登場人物たちに思いを馳せ、深く心に残り続けるような作品づくりを目指しています。

イラクは、子どもたちが子どもでいられる時間が短く、ヨーロッパなどの諸国に比べても、あまりに早い段階で大人になることを強いられてしまう国です。

本作をご覧になった後は、ぜひ彼らが置かれた現実や物語、登場人物の胸中に深く思いを巡らせてみてください。それこそがこの映画の核心であり、そこからきっと新しい発見があるはずです。

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