北朝鮮から中国へのタングステン輸出が急増していることが、中国税関総署の統計から明らかになった。今年1~4月の輸出量は約4690トンと前年同期比16%増だったが、輸出額は約1億2000万ドル(約170億円)に達し、前年同期の約1170万ドルから10倍以上に膨らんだ。

タングステンは、超硬工具や半導体製造装置に使われるほか、砲弾、ミサイル部品、航空宇宙機器など軍需産業にも欠かせない「戦略鉱物」だ。融点の高さと硬度の強さから「産業の歯」とも呼ばれ、近年は世界的な需要拡大が続いている。

北朝鮮の対中輸出総額に占めるタングステンの割合は、前年同期の5%から32%へと急上昇した。いまや北朝鮮の対中輸出の「3ドルに1ドル」がタングステン関連という計算になる。

背景には、中国国内の需給逼迫がある。中国は世界のタングステン生産の約8割を占めるが、環境規制や採掘枠の削減に加え、軍需需要の増大によって供給余力が縮小している。2025年には輸出管理を強化し、輸出業者への許可制も導入した。ロイター通信によれば、こうした措置により中国のタングステン輸出量は約4割減少し、価格は90年ぶりの高水準に達したという。

一方、中国にとって北朝鮮産タングステンは、地理的に近く安価な供給源でもある。ロイター通信によると、今年1~2月の北朝鮮からのタングステン輸入額は1540万ドルに達し、前年同期の329万ドルから約4.7倍に増加した。

北朝鮮側にも利点は大きい。ロシアとの軍事協力で一定の外貨を確保しているとはいえ、地方開発事業や軍需産業への投資を続ける金正恩政権にとって、中国からの機械設備や生活物資の輸入を支える外貨は不可欠だ。

タングステン価格の高騰は、同じ量の鉱石からより多くの収入を得られる「追い風」となっている。

ただ、この取引は国際社会に新たな疑問を投げかける。国連安全保障理事会の対北制裁決議は、北朝鮮による鉱物輸出を厳しく制限している。しかし、中国税関統計にはタングステン輸入が継続的に計上されており、その法的位置づけや制裁との整合性については明確な説明がなされていない。

米中対立の激化と軍需拡大の中で、「重要鉱物」をめぐる争奪戦は世界規模で進んでいる。皮肉なことに、その恩恵の一端を受けているのが制裁下の北朝鮮だ。中国は必要な資源を確保し、北朝鮮は貴重な外貨を手にする。タングステン貿易の急拡大は、制裁の網の目の隙間で中朝双方が利益を得る、新たな「相互依存」の姿を映し出している。

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