内田理央が主演する『夫を殺したはずなのに』(テレビ東京系)が、毎週月曜の深夜をかっ飛ばしている。

【写真】内田理央主演ドラマ『夫を殺したはずなのに』場面カット【7点】

◆深夜のホラー作(?)が始まった!

本作はいわゆる深夜の人間関係ドロ沼サスペンスだ。
家庭に恵まれず児童養護施設で育った本庄莉乃(内田)は、エリートサラリーマンの慶太(渡邊圭祐)と、5年目の結婚記念日を迎えようとしていた。迎えようとしていた。優しくてイケメンで高収入。なんの申し分もなかったはずの夫なのに、誰かから送られてきたアダルト動画サイトの生配信で不貞関係を持っていたと知ってしまう莉乃。しかもその相手は莉乃が働く養護施設の清掃員・菊池エレナ(箭内夢菜)だった。これはその辺に転がっているような不倫ではなくて、人に性行為を見られることで快感を得られる「露出症」だろう。このシーンで「うわ~……気持ち悪……」とつぶやいてしまった。

親に捨てられた経験から、自分が子どもを持つことに抵抗があった莉乃。慶太との愛し愛される生活があればいいと思っていたのに、理想は簡単に崩されてしまった。そして慶太を自らの手で殺めることを決意して、配信中のラブホテルに包丁を持って乗り込む。この世の者とは思えない形相で、妻は夫を滅多刺しにしてしまう。が、本作がふつうの深夜ドラマではないのが終盤。
エレナの返り討ちに遭い死んで意識を失ったはずなのに、いつのまにか莉乃は慶太と迎えた結婚記念日にタイムリープしているのだ。状況が掴めないまま、莉乃はまた殺害計画を考え始める。つまり何度も何度も繰り返して、夫を殺す。

「私、何度夫を殺していいんでしょうか」

思考回路がゆがんでいく莉乃。内田のサイコパス演技が、光り輝いていた。最高だった。今まで経験はないけれど、もし誰かを殺すとしたらこんな狂気に満ちた表情なのかもしれない。ああ、恐ろしい。

◆内田理央とテレ東の好相性

内田はここ数年、(敬愛を込めて)自由な発想の泉のテレビ局・テレビ東京と相性が良さそうだ。気がついたのは2020年のコロナ禍に放送が始まった『来世ではちゃんとします』の大森桃江役。複数人のセフレを持つ、承認欲求にまみれただらしない女性を演じるとは、俳優としてかなりの勝負に出たはずだ。作品は高評価を得て、スペシャルドラマ化と2023年の第3シリーズまで続いている。
それまでは女性雑誌の専属モデルで人気を得ていたはずなのに、思い切った転換だった。

そして今年の冬ドラマで放送された『略奪奪婚』の佐久間千春役。『夫を殺したはずなのに』の莉乃役とオーバーラップする箇所ある役で、母親の愛に恵まれず育った千春が、幼なじみで医師の司(伊藤健太郎)と結婚したものの、子どもを授かれず、ついには司が浮気して不倫相手の桐嶋えみる(中村ゆりか)が妊娠してしまう。裕福な家庭に生まれたえみるのおかげもあって、慰謝料や財産分与で大金を受け取るが、すべてホストに貢いでしまい、人生の階段を転がり落ちていく千春は元夫とその妻への復讐を実行していく、人間関係がドロ沼化した、ラブシーンの多い深夜ドラマだった。

冬ドラマで『略奪奪婚』で落ちぶれた人生を送る女性に続けて、春ドラマで殺人鬼。先述したように自由なテレ東と、内田とのタッグには気勢を感じる。加えて慶太役の渡邊とエレナ役の箭内も、今まで地上波で見ていたイメージを覆すような、セクシャルなシーンを振る舞っているので、これも大きなトライアル。多岐にわたる要素が詰まった『夫を殺したはずなのに』は、今年の夏を冷やしてくれるホラー作(?)になるのかもしれない。

(文/コラムニスト・小林久乃)

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