レビュー

「いつかFIREしたい」「結婚はしないつもり」――大人になってから、友人・知人の口から何度も聞いてきた言葉である。これまでは単なる個人の希望として受け止めていたが、本書は、その背後に日本社会全体へつながる大きな問題が潜んでいると指摘する。


著者の河田皓史氏は、日本銀行で金融政策立案や経済調査に携わったのち、みずほ銀行に転じ、みずほ総合研究所調査部でチーフグローバルエコノミストとして活躍する人物である。
2024年夏、自身も「できればFIREしたい」と語る河田氏が、「非婚化」と「FIRE」が結び付くことで人手不足がさらに深刻化する可能性を指摘したレポートを発表し、SNSを中心に大きな話題となった。本書は、その問題提起をベースにしながら、「わかりやすさ」と「読みやすさ」を重視してまとめられている。
本書の核となるテーマは、「FIRE増加」と「非婚化」が同時進行することで、日本社会の労働力人口が急速に縮小していくということだ。つまり、働く人が減るだけでなく、次世代の働き手も減っていくという「二重の減少」が起きているのである。
さらに本書は、「FIREを抑止する方法」と「非婚化を抑止する方法」を検討したうえで、それでも人口減少が止まらなかった場合、どのように社会機能を維持していくべきかまで踏み込んで論じている。将来の日本に漠然とした不安を抱えている人ほど、本書は響くはずだ。

本書の要点

・FIRE願望の高まりと非婚化・少子化が同時進行することで、日本社会では「働く人」と「次世代の働き手」が二重に減少し、人手不足がさらに深刻化していく。
・FIRE願望と非婚化の背景には、日本企業に残る非効率な企業文化や年功序列制、教育費の高騰、価値観の変化など、複数の要因がある。
・今後の日本においては、人口減少を前提とした社会設計が必要だ。生産性向上や「毎月10分の無駄削減」の積み重ねが、日本社会維持の鍵になる。



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