レビュー

少し前と比べると、「政治」について語る言葉に触れる機会が増えたように感じられる。それはおそらく、SNSの普及で、誰もが気軽に自分の意見を発信することができるようになり、たくさんの人が発信した膨大な言葉の数々と出会えるからだろう。

以前は、大っぴらに政治を語ることを避けられていたのに、今では政治的な論点について賛否双方の観点から、熱心な議論が繰り広げられている。
民主主義の社会では、多くの人が政治に関心を持って意見を言い合うことは、政治に関心を持たず無関心であるよりも良いことであるのは間違いない。しかし、政治を議論する以前に、そもそも「政治とは何か」、そして「民主主義とは何か」という問いに答えられる人は、どれだけいるだろうか。その問いに対する答えも人それぞれで、理解が共有されていないのではないだろうか。
政治について議論をしようにも、共通理解がなければ、議論は成り立たないはずだ。だからこそ、「政治学」という学問で「政治とは何か」を学び、「政治思想史」で「政治」や「政党」、「民主主義」、「政治家」といった概念の成り立ちを理解することからスタートする。その本質を知れば、議論の土台を共有できるようになる。本書では、政治思想史や政治学の基本的な内容が、親しみやすい語り口でわかりやすく解説されている。これを一歩として踏み出すことで、ひとつの社会で共存するための技術である、政治の知識を学ぶことができるだろう。

本書の要点

・政治とは、多様な思い、利害、感情をもった人びとが、言葉を交わして、相手を否定せずに話を聞くことを通じて、共に社会を作っていくための技術(アート)である。
・相互の違いを認めた上で、多様な意見や利害の共存をはかり、関係を制度化していくことで、複数性を前提とした人間が共存をはかる知恵の技術こそが、政治である。
・他者との結びつきが稀薄化した個人主義への縮退を食い止め、人びとが自ら動き、仲間と協働するような、新しい政治の在り方が必要とされている。



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