※本稿は、佐々木敦朗『3日で変わる からだが目覚める「食べない力」』(講談社)の一部を再編集したものです。
■無理なく実践できる新しい断食法
「ファスティング」とは、自分の意志で「一定期間食事を摂らないこと」を指す言葉です。ただ食べないというだけでなく、意識的に食べないことがポイントです。国際的な専門家パネルでは「自発的に食べ物や飲料の一部またはすべてを控えること」と定義されています(※1)。
日本語に訳すと「断食」ですが、断食と聞くと長時間の絶食や絶水、あるいは修行のようなイメージから、ハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。
ファスティングは身体に合わせて食べない時間をつくる実践です。水分摂取はもちろんのこと、途中で少量の食べ物を口にしたり、サプリメントで必要な栄養素を補給したりすることもできます。
これこれのペースでこれだけの期間続けなければいけない、といった制約もありません。始める際も自分で必要を感じたり、なんとなく「やろうかな」と思ったりしたタイミングで行えばいいのです。
1日に「1食抜く」だけでもOKですし、16時間でも24時間でも、2日間、3日間続けてもいい。要は自分の目的や体調、スケジュールなどに応じて、無理なく実践するのが大事なポイントです。
■「食べ過ぎ」や「糖依存」を脱却する
ファスティングには「心を整える」効果も非常に大きいので、カレンダーに合わせるのではなく、月の満ち欠けに合わせたサイクルで心と身体をリセットするようにしているのです。
習慣化してしまった「食べ過ぎ」や、甘いものがやめられないといった「糖依存」から脱却するには、時間と工夫がいります。ここに、ファスティングによって一定期間、自分が依存している食べ物から離れることは、食習慣の改善につながります。さらに自分自身の生活の中に「食べない」という選択肢を持つことは、「自分を変える」チャンスを大きく広げることにもつながると思います。
かくいう私自身、ファスティングに出会う前は本当に心も身体もボロボロでした。子供の頃からぽっちゃり気味の体型を気にはしていましたが、それでもご飯やおやつを食べるのは私にとって当たり前のことでした。当時は「たくさん食べる=健康」という考えで、両親も祖父母もせっせと食べさせてくれました。
中学・高校時代には昼食前に早弁をし、放課後にはラーメン(大盛り)を食べ、夕食でもご飯をおかわりしていました。こうした食習慣を大学入学後も続けた結果、私は過食状態に突入しました。学生時代はお金がなかったのでまだ食べる量を抑えられていました。
■好きなものを食べていたら60→90kgに…
結婚を機に食卓が豊かになり、好きなものを好きなだけ食べるようになると、60kgだった体重はあっという間に1.5倍に増え、90kgを超えました。
急激に身体が大きくなったため、妊娠線みたいな肉割れができてしまいました。高血圧を抑える薬の処方を受け始めたのは、カリフォルニア州サンディエゴで研究留学生活を送っていた32歳のときのこと。薬を処方してもらう条件として「食事に関する指導」を受けました。他の受講者は年配の方々ばかりで、私は恥ずかしさに身を縮めながらセッションに耳を傾けていました。
エコー検査では脂肪がたっぷりついた肝臓が白く浮かび上がっていて、心臓が時折不規則に拍動するたびに“死”が頭をよぎりました。脂肪と筋肉量をもとに算出される体年齢は40代で、外見も実年齢よりずっと老けていたと思います。一念発起し、サラダを中心にした食生活とジム通いで、ある程度の減量に一度は成功しました。
ところが大学の研究室を主宰するようになると、資金調達やメンバーの指導、授業、研究などで多忙を極め、過密スケジュールによる疲労と慢性的な睡眠不足(睡眠負債)が積み重なって、ストレスから食べる量もお酒の量も増えていく一方。出張先での会食の機会が多くなったことも暴飲暴食に拍車をかけ、再び肥満体に逆戻りしてしまいました。
■10kgの減量に成功したものの胃腸を壊す
連日の食べ過ぎと飲み過ぎのため胃腸はいつも疲れ気味で、朝は食欲がないことが多かったです。それでも当時の私は「疲れているからこそ、エネルギーを摂らなければ」と、せっせと食事やおやつを食べ続けました。
もちろん頭の片隅には「いつ心筋塞や脳卒中で倒れるかわからない」「痛風や糖尿病になるかもしれない」という不安や恐怖、そして自分の理想とはほど遠い“見た目”に対する悩みもありました。何とかせねばと、水泳などの運動やヨガにも励みました。
しかし、体重や体調は一時的に変化しても維持できず、満足できる状態にはなりませんでした。不安と悩みを抱える日々の中で、知人から教えてもらったのが「朝食抜きダイエット」と「バターコーヒー・ダイエット」でした。効果は抜群で、日中の糖質摂取を控えることもあわせて10カ月で10kgの減量に成功したのです。
ところが当時の私は「糖質を減らすだけで、あとは食べたいものを好きなだけ食べる」という、いま振り返るとかなり享楽的な食べ方でした。体重は70kg前後を維持していたものの胃腸の調子が悪く、お腹をこわすこともよくありました。
■肉類過多や油過多の食事は寿命が縮む
代謝に詳しい友人に「糖質制限をしても、肉類過多や油過多の食事を続けていれば寿命が縮む」と聞いたときには、さもありなんと納得したものです。
初めてファスティングの存在を知ったのは、低糖質ダイエットを始めてから4年がたち「このままでいいのか」と悩んでいた2020年5月のことでした。コロナ禍でオンラインミーティングをしていたときに、老化研究を専門とする仲間から「ファスティングは健康寿命を支える代謝を動かす」という研究の話を耳にしたのです(※2)。
紹介してもらった論文はいずれも世界最高峰といわれるジャーナルに掲載されたもので、そのエビデンスには強い説得力がありました。
しかし、科学的エビデンスが実際に自分に当てはまるかどうかは、やってみないとわからないところがあります。
■食事を抜くことで仕事がはかどる
初めて水と塩だけで過ごした4日間のことは、いまでも忘れられません。論文を読んで大きな危険がないことは理解していましたが、実際に自分で体験するのは初めてです。「大丈夫だろう」という気持ちと、「未知の領域に入る」ことへの緊張感が入り混じった状態での挑戦でした。
いざ始めてみると、お腹は空かないし、死ぬどころかすこぶる元気に生きている。いつも通りに食べないことからくる虚しさから「ああ、食べたいなぁ」という思いはありましたが、空腹感がないので我慢できないような辛さは感じませんでした。
身体に力が入らなかったり、意識が朦朧としたりするかもしれないとも予想していました。ところが、恐れていたような不調は拍子抜けするほど感じませんでした。内観・内省的になって神経が研ぎ澄まされた感覚があり、集中力が増して仕事がやたらとはかどりました。食事に費やす時間や調理や片づけの時間を加えると、1日にゆうに2時間も余裕ができることにも新鮮な驚きがありました。
■53歳で肌ツヤ良く、58~62kgをキープ
スーパーパワーが出てくるというよりは、いつもの8割程度のパワーで物事がスムーズに運ぶというイメージでしょうか。
1回のファスティングで急激に痩せるよりも毎月0.5kgから1kgずつゆっくり減量していくほうが調子が良く、体重管理もできていると実践を繰り返す中、考えるようになりました。
初めてのファスティングから5年あまり。53歳になった私は体重58~62kg、体脂肪率15%前後。20歳だった頃とほぼ同じ体型になりました。以前は血圧降下剤を服用していました。現在は薬に頼ることなく、血圧は上が100~110mmHg、下が70~80mmHg台といたって良好です。
人に会うたびに驚かれるほど肌のハリや色つやが良く、実年齢よりもずっと若く見られるようになりました。体組成計で測ると、実年齢より10歳から15歳ほど下の数値が表示され、身体が若返っている感覚があります。いまの姿は、肥満で高血圧と診断された20年前の自分には想像もつかないものです。
※糖尿病を含む基礎疾患がある方、治療中・服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、成長期の方、摂食障害のある方またはその既往がある方、その他健康状態に不安のある方は、本書の方法を自己判断で行わず、必ず医師に相談してください。
参考文献一覧
※1:Daniela A Koppold, et al. International consensus on fasting terminology. Cell Metab. 2024 Aug 6;36(8):1779-1794.e4. doi: 10.1016/j.cmet.2024.06.013. Epub 2024 Jul 25.
※2:Min Wei, et al. Fasting-mimicking diet and markers/risk factors for aging, diabetes, cancer, and cardiovascular disease. Sci Transl Med. 2017 Feb 15;9(377):eaai8700. doi: 10.1126/scitranslmed.aai8700.
Sebastian Brandhorst, et al. A Periodic Diet that Mimics Fasting Promotes MultiSystem Regeneration, Enhanced Cognitive Performance, and Healthspan. Cell Metab. 2015 Jul 7;22(1):86-99. doi: 10.1016/j.cmet.2015.05.012. Epub 2015 Jun 18.
Chia-Wei Cheng, et al. Prolonged fasting reduces IGF-1/PKA to promote hematopoietic-stem-cell-based regeneration and reverse immunosuppression. Cell Stem Cell. 2014 Jun 5;14(6):810-823. doi: 10.1016/j.stem.2014.04.014.
Slaven Stekovic, et al. Alternate Day Fasting Improves Physiological and Molecular Markers of Aging in Healthy, Non-obese Humans. Cell Metab. 2019 Sep 3;30(3):462-476.e6. doi: 10.1016/j.cmet.2019.07.016. Epub 2019 Aug 27.
Elizabeth F Sutton, et al. Early Time-Restricted Feeding Improves Insulin Sensitivity, Blood Pressure, and Oxidative Stress Even without Weight Loss in Men with Prediabetes. Cell Metab. 2018 Jun 5;27(6):1212-1221.e3. doi: 10.1016/j.cmet.2018.04.010. Epub 2018 May 10.
Megumi Hatori, et al. Time-restricted feeding without reducing caloric intake prevents metabolic diseases in mice fed a high-fat diet. Cell Metab. 2012 Jun 6;15(6):848-860. doi: 10.1016/j.cmet.2012.04.019. Epub 2012 May 17.
----------
佐々木 敦朗(ささき・あつお)
米国シンシナティ大学医学部教授、慶應義塾大学特任教授、広島大学医学部連携教授、東京理科大学客員教授
1972年、広島県呉市生まれ。生命科学者。博士(医学)。現在、米国シンシナティ大学医学部教授、慶應義塾大学特任教授。広島大学医学部連携教授、東京理科大学客員教授としても研究と教育に携わる。2002年に渡米、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ハーバード大学メディカルスクールで研鑽を重ね、細胞のエネルギー代謝を軸に、がん、老化、代謝疾患に関わる生命現象を分子から個体までつないで探究する。プライベートでは20代で体重が急増、30代で高血圧治療を受ける。自らの身体で食と生活を立て直す試行錯誤の末、ファスティングにたどり着き、今も継続して実践する。
----------
(米国シンシナティ大学医学部教授、慶應義塾大学特任教授、広島大学医学部連携教授、東京理科大学客員教授 佐々木 敦朗)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
