【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 6月8日の「ファミリーヒストリー」(NHK)は生瀬勝久のルーツをたどるものだった。


 生瀬は兵庫県西宮市出身。

父方は酒樽作り、母方も酒造りに欠かせない「宮水」を扱う水屋を営み、灘の酒造文化を支えてきた家系という。父方の祖父は肺結核で長く療養所で暮らすことに。そのため父は新聞配達などをして家計を支えた。


 今回、祖父が亡くなる直前まで書き続けた日記も登場。その数47冊にも及び、最後のページには「新婚の二人へ 仲よく暮らしなさい」と、最後の力を振り絞って書かれていた。生瀬の父は93歳、母は95歳でご健在。趣味の社交ダンスを楽しむ父の姿も映った。一方、母は長年、小学校教師を務め、のちに西宮市議会議員を4期務めたという。


 見ているうちに話に引きずり込まれ感動秘話に涙腺もゆるくなった。


 しかし、放送後はどうかというと、SNSの話題は生瀬の旧芸名・槍魔栗三助のことばかり。よっぽどインパクトが強かったのだろう。関西人にとっては「探偵!ナイトスクープ」の初代探偵として出演していた頃の名前だし、なんとも思わないが、初見の人にはインパクトがあったらしい。



鈴木崇裕なのら村上とかふんころがしとか意外過ぎる芸名も

 そこで他にもユニークな芸名を持つ俳優やタレントを思いつくままに挙げてみたい。


 佐々木蔵之介は実家が京都の蔵元・佐々木酒造だから蔵之介。家業つながりでは明石家さんまも実家がさんまの加工業だったことから師匠の笑福亭松之助が命名。個性派俳優・古田新太は古いと新しいをかけたのかと思ったら父の本名をもとにしたものとか。


 初めて聞いた時に驚いたのはマヂカルラブリーの村上。相方・野田クリスタルが芸名なのはわかるが、村上まで芸名だったとは。本名は鈴木崇裕でわけがわからない。メイプル超合金カズレーザーは金子和令。新元号「令和」が発表された際も話題になった。相方の安藤なつは、あんドーナツから。


 平野ノラは「ノラ猫のように芸能界を強く生き抜く」との思いを込めてつけた。納言の薄幸(すすきみゆき)はビートたけしが名付け親。

「幸が薄そう」だからと番組企画命名。また、たけし軍団はユニークな芸名の宝庫。つまみ枝豆は顔の形が枝豆似、ラッシャー板前は板前修業をしていたから。ダンカンの旧芸名ふんころがしと覚えている人がどれだけいるか。


 役所広司は橋本広司で千代田区役所に勤務していたことから仲代達矢がつけたのは有名だ。へえと思ったのは昨年亡くなった浅香光代のパートナー、世志凡太でフランス語の「C'estsiBon.」から。


 芸名はその人の来歴であり願掛けであり、時には一発ギャグも。それにしても「槍魔栗三助」の破壊力たるや。祖父の47冊の日記も家族の感動秘話もかすんでしまった。


(桧山珠美/コラムニスト)


編集部おすすめ