【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#295


 やしきたかじんさん(前編)


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 オール阪神・巨人さんの30周年イベントのゲストで、やしきたかじんさんが出演することになりました。巨人さんからも「待たされんのん嫌いやから、ギリギリしか来いひんで」と言われていましたが、さすがに3分前を切るとこちらも心配になってきます。


 そして出演時間ピッタリに、白いスーツにサングラス姿で袖に現れ「遅れてへんな。おはようさん、おはようさん」とスタッフに声をかけると颯爽と舞台へ向かいました。シークレットゲストだったので人気者の登場に会場は大歓声と大拍手。30分近いトークが終わると舞台袖のスタッフに「お疲れ、お疲れ、ほな帰るわな。2人(阪神巨人さん)によろしゅう(言うといて)ね」とそのまま帰ってしまいました。今思い出しても鳥肌が立つようなのような時間でした。阪神巨人さんをはじめ、たかじんさんを知る誰もが時間が迫っても全く心配していないほど、信頼されていたのでした。


 コンサートではしゃべっている時のダミ声からは想像もできない甘い歌声と練りに練られた爆笑トークで魅了するたかじんさん。「サングラスせな、緊張して歌われへんねん」と本気とも冗談ともつかないことを言われていましたが、とても繊細だったそうです。


 たかじんさんをよく知る方の話では、コンサートが近づくと生タマゴをキッチンにぶつけて気持ちを落ち着かせていたそうで、コンサートの日が近づくにつれ、緊張のあまりタマゴの数が増え、キッチンが大変なことになっていたそうです。歌もトークも抜群にうまいたかじんさんの人間的な面が垣間見られて余計に好きになっていました。


 タクシーに乗ると金額に関係なくポチ袋に入れた1万円札を渡されるので、番組終わりにはたかじんさん待ちのタクシーが列を連ねたとか、ある芸人さんの結婚のご祝儀に100万円の帯封が入っていたとか、番組スタッフがダメージジーンズをはいているのを見て「アホんだら、ゲストも来んのに、こんなかっこうで仕事すな!」と次の収録からスタッフ全員をタキシード姿にさせたとか、天衣無縫、豪放磊落な話には事欠きませんが、言いたい放題の毒舌の裏には緻密な計算が隠されていたそうです。


 次回はたかじんさんの緻密な一面について話をしたいと思います。


(本多正識/漫才作家)


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