【今週グサッときた名言珍言】
「もう『無』です。生きるのに精いっぱいですよ」
(黒沢かずこ/テレビ東京系「あちこちオードリー」6月9日放送)
◇ ◇ ◇
森三中の黒沢かずこ(47)は最近、いわゆる「お笑い」の仕事が少ないという。
黒沢は自ら「お笑いファン上がり」(テレビ東京系「あちこちオードリー」2023年7月5日)と公言するほどの生粋のお笑いファン。そのきっかけは、幼少期の家庭環境にも原因があったという。「親ともそんなにしゃべったこともない」(日本テレビ系「大悟の芸人領収書」26年6月15日)と、にわかに信じられないことを回想している。「行ってきます」「ただいま」「いただきます」といった最低限のことすら言った記憶がないそう。
両親は飲食店を営んでおり、ひとりっ子の彼女はほとんどの時間を家でひとりで過ごした。だから食事もひとり。寝ながら食べていても、誰も注意する人はいなかった。
小学校の時にテストに自分の名前を書くのはおかしいと思うような子どもだった。なぜなら「私が選んだ名前じゃないから」(同前)。その頃書いていた名前が「内村光良・南原清隆」だったという。彼女のよりどころになっていたのが、テレビのお笑いだ。
「テレビばっかり見て、言葉とかも話す相手いないんで、テレビの中から全部教えていただいたんです」(日テレ系「チカラウタ」16年4月24日)
高校時代は、暗く「自分の命を絶ってでもいい」(同前)と思うほどだったが、ダウンタウンに会いたいという思いだけで10代を乗り越えたという。そんな黒沢を宮下草薙の草薙航基は「僕が芸能界で唯一、自分より気を使う人です」(テレビ朝日系「マツコ&有吉 かりそめ天国」25年7月25日)と評す。草薙も黒沢同様、ネガティブで人付き合いが苦手なタイプ。スーパーのバイトで店長に「仮面をつけて出勤していいですか?」と言おうとしたほど。もちろん、そんなのはダメに決まっている。けれど、同じことを相方やマネジャーに言うと、「1カ月だけなら」「ラジオの仕事なら」という答えが返ってきて、聞いておきながら「まともなヤツがいねえな」と思ったという(「大悟の芸人領収書」26年6月8日)。
今、芸人は学歴もお笑いのレベルも上がり、「まとも」になってきている。けれど、草薙は「他の社会では生きられない人間のようなヤツがいる居場所みたいなのも少し残ってほしい」(同前)と主張する。これに対し、黒沢が「すごく共感します。本当にこの世界に来てくれて、ありがとう!」と返した。「なんでもない私を認めてくれたんだっていうのが、この箱」(「大悟の芸人領収書」26年6月15日)とも語る黒沢。彼女にとってテレビは救いそのものなのだ。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)

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