【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#296


 やしきたかじんさん(後編)


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 どんな相手にも舌鋒鋭く迫る発言で絶大な支持を集めていましたが、30年ほど前、実は綿密な準備をされている方だということを知りました。


 オール阪神巨人さんの共通の知り合いでテレビの制作とは全く関係のない方が「これからたかじんの部屋行って、ビデオセットせなあかんねん」と言われるので理由を聞くと、部屋にあるビデオデッキ6台に関西で放送されている番組を局別に毎日全部録画していて、彼はその録画を任されていたのです。

たかじんさんは各局の放送を全部チェックして頭に入れてから収録に臨んでいたのでした。


「ようたかじんが『○○がこう言うとった』とか言うてるやろ? あれはみなホンマやねん。せやからたかじんはすごい準備してテレビでしゃべっとんねん。あれには恐れ入るわ。毎晩飲んで、いつ寝とんねやろ?」と驚かれていました。そこまでしてテレビに出演している人がいることに驚きました。


 また、たかじんさん主催のゴルフコンペは、景品がいつも凄いという話も聞きました。優勝はペアで海外旅行、2位は大型テレビ等々……まるで全国ネットのクイズ番組のような、個人主催のコンペとは思えないような豪華な賞品だというのです。


「吉本みたいに黙ってても仕事が来るような会社ならええけど、俺みたいな個人事務所は、機会あるごとにインパクトを残して、個人的に知り合いになっとかな忘れられてまうがな。毎回、(コンペの景品)集めんの大変やねんで、ナンボ金かかるか!」と笑っておられたそうです。


 自由奔放、豪放磊落に自分のやりたいことをやり、言いたいことを言っているという、たかじんさんへの見方が変わった2つのエピソードでした。あの豪快な笑いや、しゃべりの裏にはたかじんさんなりの策が練られていたのだなと思うと、早逝されたことが、ますます残念でなりません。


 歌手としてもタレントとしても一流でしたが、それ以上に世相を斬ることに長けていたたかじんさんが、今の世相をどのように斬られるのか見てみたかったなと思います。


(本多正識/漫才作家)


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