【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#297


 伍代夏子さん


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 確か、1990年「忍ぶ雨」でNHK紅白歌合戦に初出場された翌年だったと記憶しています。伍代さんをテレビで見て、こんな若い、奇麗な演歌歌手がいらっしゃるのだと驚いていた、そんな伍代さんが私の担当する番組のゲストに来ることになりました。


 伍代さんはいつもテレビで見ている着物姿ではなく、アクティブなパンツスーツ。「ありがとうございます。ほんとに近くて遠いところでした」。デビュー9年目、ようやくの紅白出場でした。お話を聞くと、実家が渋谷区でNHKに程近いところにある魚屋さんだったそう。「歩いて行ける所なんですけど、呼んでもらうのに9年もかかっちゃいました」と豪快に笑ったのでした。こちらがイメージとのギャップに「えっ?」という顔をしていたんだと思います。すぐさま「私、ちゃきちゃきの江戸っ子で実家が魚屋でしょ?だからウジウジするのダメなんですよ、ハッキリしないと。家族やご近所の方からは男みたい(な性格)だねって言われてるんです」と艶やかでおしとやかな着物姿とは全く違う素顔を見てファンになってしまいました。


 それから数年後、お笑い番組の特番で「かしまし娘」の再現舞台を歌手に演じてもらおうということになり、3姉妹の1人に伍代さんを提案しました。江戸っ子だけど、あの人なら必ず楽しんでやってくださると確信していました。うまくスケジュールも合い、伍代さんにお願いできることになり(あとの2人は確か、香西かおりさんと藤あや子さんだったと思います)ました。


 撮影にやってきた伍代さんは予想通り、完璧に仕上げてきてくださり、「ここの言い方を変えたんだけどいいかしら?」と自分のやりやすいように演出もされていました。稽古をしているうちに「前にお会いしてますよね!」と私のことを思い出してくださり、「楽しい企画に呼んでいただいてありがとうございます。私は江戸っ子なのに大阪の大師匠の再現なんてやらせていただいていいのかなと思ってたんだけど、あなたが呼んでくださったんだ!」と再会を喜んでくださいました。


 かしまし娘の照枝師匠に稽古を見ていただくと「うちらよりキレイし、オモロいし、歌がほんもん(の歌手)やから、かしまし娘より豪華やんか!」と大絶賛。伍代さんも「難しかったけど、楽しかった~! ありがとう!」と帰られました。


 3度目にお会いしたのは杉良太郎さんと結婚されてから。超大物と結婚されて、少しは変わられているかもしれないと思ったら、若いスタッフたちにも分け隔てなく丁寧に接し、初めてお会いしてから十数年、全く変わらない伍代さんにホッとしたのを覚えています。「変わられませんね」とお声がけすると「凄いのは杉さんで、私は私ですから」とニコッと笑われ「これからもよろしくお願いします」とちゃめっ気たっぷりに頭を下げられた伍代さんの姿が目に焼き付いています。


 人気が出ても置かれる立場が変わっても、より腰が低くなる、厳しい芸能界で生き残られる方はみなさん“初心を忘れず”の精神をお持ちです。


(本多正識/漫才作家)


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