「人生のすべてが嫌で放火しました」


 14世紀ごろの創建と伝えられる佐賀県伊万里市の古刹「円通寺」に火を放ち、本堂を全焼させた僧侶見習の男は、動機についてこう供述しているという。


 修行先の寺に火をつけたとして、県警伊万里署は6日、森永吉容疑者(28)を現住建造物等放火容疑で逮捕した。


「寺の2階が燃えています」


 消防に通報があったのは、先月30日午前3時40分ごろのこと。119番したのは森容疑者本人だった。火は瞬く間に燃え広がり、木造平屋建ての本堂と棟続きで居住用の木造2階建ての「庫裏」など1000平方メートル以上を焼き尽くし、約7時間後に消し止められた。


「庫裏の2階には物置部屋や複数の広間があり、1階が居住スペースになっていた。寺には3人の見習がいて、1人は通いで森ともう1人が住み込みだった。40代の住職は別棟で暮らし、出火当時は外出していて不在だった」(捜査事情通)


 森容疑者と一緒に庫裏で暮らしていた30代の僧侶見習は当時、1階で就寝中だったが、森容疑者から出火直後に「火事だ」と告げられ、避難し、無事だった。


 調べに対し、「人生のすべてが嫌になった。読経や生活指導で僧侶から叱られ、警策で背中を叩かれたり、頭を平手打ちにされた。修行に対する指導のあり方や自分に課される修行の量が、他の修行僧より多く感じて不満があった」と話しているという。


 円通寺は九州四大名刹のひとつで、僧侶見習が座禅修行を行う全国に4カ所しかない臨済宗南禅寺派の「専門道場」だ。全焼した本堂は1884年に建てられた。寺は伊万里城山の麓にあり、1871年、明治政府による廃藩置県で「佐賀県」になる前は、「伊万里県」の仮県庁舎が置かれていた。


「円通寺は本格的な禅の修行道場として厳しい修行が行われることで知られています。修行の内容はお経を読んだり、鐘を打ったり、寺院の掃除や事務作業です。森は自分に与えられた仕事量が他の修行僧より多く、その分、叱られたと不満を漏らしていた。ただ本当のところは分からず、本人が勝手にそう思い込んでいたのかもしれない。延焼を免れたのは禅堂など2カ所のみ。全焼した本堂には仏像をはじめ、かなりの文化財があり、相当な損失額になるはずです」(前出の捜査事情通)


 森容疑者は昨年4月から円通寺で修行を積んでいたが、元会社員で社会人経験もあるという。現住建造物等放火罪の法定刑は「死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑」で、放火罪の中で最も重い。何も火をつけなくても解決方法はいくらでもあったはずだ。


 ムショ暮らしとなれば24時間365日監視され、刑務作業を強いられ、これまで以上に厳しくツラい日々が待っている。


編集部おすすめ