「侍タイ」と聞いても、「なんじゃ? それ」という読者に、まず説明しなければなるまい。映画「侍タイムスリッパー」の略。

スリッパじゃない、スリッパー!


 時は江戸幕末、家老から倒幕派の暗殺を命じられた会津藩士は、目指す相手に斬りかかった瞬間、雷に打たれる。気が付くと、そこは2009年の京都・太秦の映画村。風体も言葉遣いもピッタリと、たちまち時代劇の斬られ役に採用され、人気者となるうちに、なんと暗殺するはずだった倒幕派の侍も現代にタイムスリップしていて、主役として登場……というコメディーだ。


 自主制作なのだが、「時代劇愛が素晴らしい」と東映京都撮影所が全面協力し、公開から1カ月で上映館は全国140館以上に拡大、異例の大ヒットとなり、昨年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞に選ばれた。


 その劇中劇の「心配無用ノ介」が、BS-TBSでスピンオフドラマとして始まったのだ。


 無用ノ介は貧乏御家人の三男坊と称しているが、実は先代将軍の落胤で、着流しで江戸市中を見回り、悪事を見つけると成敗し、町人たちを助ける。強欲な商人と腹黒役人が密談して、「おぬしもワルよのう」「お殿様こそ、イッヒヒ」もお約束。そして、一件落着すると、「以後、心配ご無用」の決めゼリフとともに見えを切る。


「勧善懲悪、笑いと涙、型をきちっと押さえた殺陣、江戸下町の風情と、もうコテコテのチャンバラ劇です。ストーリーはご都合主義だし、そんなに簡単に人を斬っていいのか(時に峰打ち)とツッコミどころいっぱいですが、それが逆に昭和の時代劇そのものと、ファンは歓喜してます」(テレビ情報誌編集デスク)


 それにしても、AI時代にアナクロな時代劇が人気とはどういうことか。気鋭の社会学者はこう分析した。


「高市首相なんかは平気でウソをつきまくり、ネットで大声を出している連中ほど世の中でのさばっている。

正義とか矜持とかが、これほど軽い時代もないでしょう。そんなイライラを『邪は許さん』とバッサリ斬るチャンバラは、やっぱり痛快ですよ」


 無用ノ介が登場するときの名乗りは、「町にうごめくワルを切って捨てよと遣わすは、神か仏か閻魔か鬼か。世直し侍たあ、この俺様のことよ」。よお~待ってました。業腹な連中をバッサリ袈裟懸けにして、直してよ、このひでえ世の中。


(コラムニスト・海原かみな)


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